いきなり借金
「きょーやっ……! きょーや! 起きて!」
アークのその声で、俺は目覚めた。
……。
どうやら、ここは城の部屋らしい。
多分、皆が心配して俺を運んでくれたんだろう。
俺はベッドの上で、寝ている。気持ちいい。
ぼーっと俺が天井を眺めていると、皆が肩を震わせ―――――――
「「「「「「わああああああああああああああああああああああああああっ!!」」」」」」
「……!?」
皆が、抱き着いてきた。
いや、正確には締め上げられた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」
ミシミシと骨が軋む音。
なんだなんだ。どうしたんだよ。
悪い気分ではない。ただ、このままだとまた地獄に行ってしまいそうなのでホントに勘弁してほしい。
俺が必死に耐えていると、やっと終わったのか、皆は俺から離れる。
すると、コハクが一言。
「京夜。なんであんな無茶したんだ?」
「? ああ。……うーん……倒して、カッコつけたかったからかな」
嘘ではない。むしろ実を言えばこっちの方が大きい。
するとシオンが、呆れた様な表情で。
「全く……。でも、ありがとうございました。京夜お兄ちゃんのおかげでハンター達も逃げてくれたみたいですし」
「ええ。街が殆ど崩壊しちゃったらしいんですけどね」
「ああ、そういえばそうだったわね。……京夜」
「何?」
アルゼルトの言葉に、俺は首を傾げる。
おい、なんだその悲しそうな表情は。絶対悪いお知らせの沙汰だろ、コレは。
案の条、アルゼルとはゆっくりと口を開き。
「……さっき、街の殆どが崩壊しちゃったって言ったじゃない?」
「ああ、言ったな」
「それで、ね……。その崩壊しちゃった街の建物の修理費を、私たちが出すことに」
「ざけんな」
俺は傍にあった枕を地面に叩き付けた。
何でだよ。他の奴らが出せばいいじゃねえか。
俺の心境を察したのか、ライアが。
「それがですね……。本当は他のハンター達も出すらしかったんですけど、その……。イデア聖街って、あまり上級者のハンターがいないらしいんです。初心者のハンター達ばかりで。初心者のハンターに修理費を出させるのは可哀想だからという事で、数少ない上級者ハンターの私たちが出すことになりました」
「……」
待てよ。ちょっと待て。
「なあ、上級者のハンターの定義ってなんだ? どのレベルからが、上級者のハンターになるんだ?」
「えっとですね。私も詳しくは分からないんですけど、多分50を超えたあたりからだと思います。一応私たちもなんやかんやでレベル50超えてますし。……でもまあ、ゆっくりでいいらしいので、少しずつ修理費を出してほしいと……」
俺は無言で自分のハンターカードを確認する。
記されているレベルは、68。どうやらレベルも増えていくにつれ上がりにくくなるらしい。
……。
「ビリビリビリビリ」
「「「「「「あああああああああああああああああああああああああああっ!?」」」」」」
俺はハンターカードを迷うことなく引き裂いていた。




