二度目の死
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
アルゼルトが放ったグラビティは、どうやら全然効いていない様だった。
そしてドⅯの効果で、当然モンスター達は俺を追いかけてくる。
「お前、どうしてくれんだよ! 何とかしろ!」
「し、知らないわよ! ……ぴゃあああああああああああああああああ!?」
俺がアルゼルトに叫んでいると、突如俺の横を巨大な電気のブレスが通っていき、アルゼルトの身体を包んでいった。
何やってんだよ……もう。
「『ライフ・エナジー』」
俺はそう唱え、再び走り出す。
スキルポイントを使うんだから、もう少し気を付けてほしいものだ。
「おい、コハク! 睡眠弾撃て!」
「了解した! 『睡眠d』ああああああああああああああああああっ!?」
今度は俺の横を闇のブレスが通っていき、コハクの身体を包み込んだ。
コハクはそのままぱたりと地面に倒れ、動かなくなる。
「はあっ……はあっ……『ライフ・エナジー』!!」
俺は再び魔法を叫ぶと、走り出す。
もう何なんだよ。避けてくれよ。
――――――しかし、そんな事を繰り返している内に。
「おい! スキルポイントがもうねえんだけど! スキルドリンク誰か持ってねえか!」
「持ってねえよ! あいにくさっき使い切っちまった!」
一人のハンターがそう叫ぶ。
あの後続々と攻撃を受けていく者が現れ、俺は回復魔法を使っている内にスキルポイントを使い果してしまった。
精神力もそれなりに使うので、俺は今かなりボロボロである。なんてこった。
「おいお前ら! 逃げろ! あと一回攻撃喰らったら終わるぞ!」
「で、でも」
「っ……! 早くしろ!」
俺はメイド仲間達へと飛んでいったブレスをスパエメちゃんソードではじき返しながら、必死に叫んだ。
あんな奴らでも、俺の仲間なのだ。絶対に殺させない。
「がっ……!?」
そんなカッコつけじみたことを考えてる内に、とうとう俺の体に光のブレスが命中した。
俺は成す術なく地面を転がり、近くにあった木へとぶつかる。
視界がぼやけていき、段々と意識も遠のいていく。
「ぐっ……そっ……」
俺の頭から、血がにじみ出てきたのが分かった。
悪魔化は、もうできない。精神力的なものがもうないし、誰かに見つかる可能性だってある。
「……」
――――――……こんな所で俺、死ぬのかよ。
俺が甘かった。コイツらはモンスター、それも聖獣だ。神様や天使なんかよりもずっと強かったのかもしれない。
素直に飛んだりして逃げてれば、危険を回避できたかもしれない。
他のハンター達に助けを求めていれば、助かっていただろうか?
俺が諦めずに逃げ回っていたら、何か変わっただろうか?
……どうやら皆、逃げてくれた様である。
「……ま、仕方ねーかあ……」
でも皆が助かってくれれば、それでいいと思う。
ニートでも、出来る事はあるんだ。こんなニートでも最後に言えたじゃないか、「逃げろ」って。
あの選択は、きっと間違ってなかったハズだ。
――――――そして何よりも。
あのバカな仲間達に、生きてもらいたい。アイツらが幸せなら、俺はどうなったって構わない。
……俺はあの仲間達が、いつの間にか気に入っていたらしいしな。
「……っぐう……」
ゼルドギアに身体を引き裂かれ、俺の意識はそこで途絶えていった。




