ラグナロクvs……いえ、聖獣vs京夜
「貴様あああああ!! 天界にゾンビの魂ばかり送ってきやがってえええええええええええええ!!」
ふとそんな声が、俺の後ろから聞こえてきた。
……天界?
「貴様がゾンビばかり送ってくるので、もう天界は魔界へと変貌し始めている! どうしてくれるのだ!」
「…………」
このまま走っていても埒が明かなさそうなので、俺は立ち止まると、取りあえずピピを避難させた。
状況を把握してくれたのかピピは、少し離れた場所でパタパタと浮いている。
「……ああ、アンタやっぱり、天界の方?」
「その通りだ! 貴様、今すぐ天界に――――――ごぎゃべっ!?」
俺はまず最初に目つぶしを喰らわせると、そのまま手だけを悪魔化させ、顔面に渾身の一撃を叩き込んだ。
ラグナロクも流石に驚いたのか、抵抗できない様である。
「ぐっ――――――!?」
「悪いけど天界の奴らなら――――――」
そこで言葉を切り、俺はラグナロクの腹部を蹴る。
「容赦しないよ?」
その後も俺が攻撃していると、ラグナロクは意識を失ったのか、白目を剥いて地面へと崩れ落ちていった。
天界だのなんだのうぜーんだよ。邪魔臭い奴らが多い。
「さて、帰るか!」
俺が警察に突き出そうと思いラグナロクを抱えながら、ピピを連れ森を出ようとすると―――――
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「っ……!?」
突如響いたバカでかい咆哮に、俺は思わず耳を塞いだ。
なんだ、何が起きた。
『貴様ァ……殺す』
振り返るとそこには、いつの日か戦ったゼルドギアの親分みたいなのが3匹程、こちらを睨んでいた。うわー、激おこじゃん、やだなあ。
他にもよく分からないけどとにかく強そうなモンスター達が、こちらを睨んでいる。
……。
「あ、そっか。ラグナロクが聖獣連れてるって言ってたっけ」
忘れてた。そういえばそうだった。
それにしても、ゼルドギアって聖獣なんだなあ。初めて知ったよ。
……流石にこの数だと、俺もきついかもなあ。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「……かかってこいやあああああああああああああああああああああああああ!!」
しかしそれでも、俺は諦めない。
気が生い茂る森の中、俺は少年漫画の主人公のごとく、熱く叫んでいた。




