問題児
「ほう、これは絶品であるな! 二人共、ありがとう!」
オムライスをテーブルへと運び終わった俺たちは、席について一息ついていた。
良かった、バレてない。まあどうせ卵の味なんて分かんないだろうしな。
俺が運び出されて来た紅茶を啜っていると、アークが言った。
「そういえばさっき、変質者が現れたんだよ。なんか部屋にいたと思ったら、すぐ悲鳴上げて消えて行っちゃった。何だったんだろ」
―――――俺は飲んでいた紅茶を吹き出した。
俺らじゃん。それ、俺たちの事じゃん。
「ひゃあっ! ちょっと京夜、どうしたのよ!? 狂ったの!?」
「違うわ! ……ああもう、そんな哀れみの目で見るんじゃねえよ!」
俺はそう言い放ちながら、再び紅茶を啜った。
全く、散々だぜ。なぜ俺がこんな目に遭わなくてはならないのか。
心の中でブツブツと文句を言っていると、バゼル殿が。
「では皆、知っているとは思うが、私は午後城にはいない。よろしく頼んだぞ」
「ああ、そういやそうだったっけ」
そうだったそうだった。このおじさん午後にはいないんだった。
……それよりも今は、バゼル殿の表情の方が気になる。
さっきからメイドの方を見てはニヤついてるし、非常に気持ち悪い。レーディルに劣らないといっても過言じゃないね。
全く、この城にはニヤニヤしなくてはならないというルールか何かがあるのだろうか。
そう俺が思っていると、隣にいたライアが、コソコソと耳打ちして来た。
「ねえ、あのおじさんキモイんですけど。ぶん殴りたいんですけど」
「気持ちは分かるが、まあ落ち着け。こういう時こそ大人の優しさと余裕を見せつける時だ」
「私15なんですけど」
「……そういうリアルな話を言ってるんじゃなくて。とにかく、殴っちゃだめだ」
「京夜。殴っていいよな? いいよな?」
「だああああああああ! お前ら子どもか!?」
殴りたいという訴えに俺は叫びながら拒否していた。
コハクは俺と同い年だというのに、まったく大人っぽいところが見当たらない。もう17だというのに。
……なるほど、道理で俺が苦労するワケだ。
「ふう。中々美味しかったぞ。……では、私はそろそろ席を離れるとしよう。時間も時間なのでな」
そう言ってバゼル殿は、こちらに向かって一礼した。
俺も一礼……しようとしてやめた。
親指を下に向け死ねサインしているアークの頭を引っ叩くと、俺はやっとの事で一礼する。
はあ、問題児しかいねえ。なんだこのチームは。
「……おい」
バゼル殿の後ろ姿に向けて、中指を立て消えろサインをしているライアの頭を引っ叩きながら、俺は深くため息をついた。
……はあ。
「なんでこう、問題児しかいないんだか」
そう言った直後、仲間のメイド達が俺に襲い掛かって来た!




