創造魔法のレーディルさん
「京夜、落とすでないぞ? 大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だ。急がなきゃな」
俺は食堂から這い上がってくるアレを堪えながら、卵を持って調理室へと向かっていた。
エリマキ鶏だから卵もキモイのかななんて思っていたのだが、卵は案外フツーだった。もう、意味分かんないよね。
まあ、味が問題なければそれでいいのだが。
「……よし、時間がないので再び窓から侵入する。卵を落とすでないぞ」
「ええ? いや、無理じゃね? 窓から侵入したら卵落としちゃうんじゃ……」
「そんな事言ってももう時間が無いのでな。何とかするしかないであろう。……大丈夫だ、調理室からなるべく遠くない部屋の窓から侵入するから」
「……また見つからないければいいんだがなあ……」
俺はそう言いながら、レーディルに案内された部屋の窓の縁へと足を掛ける。
幸い、カギは開いていた。これならすぐに侵入できそうである。
俺が窓を開け、よっこらせと部屋の中に入ろうとした—―――――その時だった。
「貴様ら、何をやっている! 泥棒か!?」
「「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!?」」
警察官たちが、俺たちを見つけて怒鳴りつけていた。
……もういい事無いよ、ホント。
■
「……よし。こんな感じではないか?」
「おお。結構いい出来になったじゃねえか」
調理室内にて。
何とか卵を運び終えた俺たちは、完成したオムライスを見て小さく手を叩いた。
本当に大変だった。警察官達には何とか事情を説明して事なきを得たのだが、説明するのにかなりの時間が掛かってしまったのである。
当然調理時間も短くなってしまうのだが、俺たち二人の料理人の協力により、案外早く終わらせることができた。
とは言っても、今の時刻は11時55分。
急いで、料理を運ばなくては。
「この量一遍に運びたいところではあるが……どうする? やっぱ一皿ずつ運ぶか?」
「うーむ……。ではここは我が。『バースト』!」
「おおっ!?」
レーディルがそう叫ぶと、結構な大きさのある台が現れた。
……え? 何それ?
「おい待て、なんだそれ。……チートか?」
「む? 違うわ。これは創造魔法である。……とは言っても、創造できる物には限りがあるし、まあこの程度で限界になってくると思うがな」
そう言ってレーディルは、はっはっはとデカい声で笑いだした。
……。
「……なあ、前から思ってたんだけど。お前って何なの? 幽霊なの? なんでこんな魔法まで使えちゃったりしてんの?」
「我は特別な幽霊だからな。たとえダンスが好きな幽霊だとしても、それなりの戦闘能力はあるのだ。伊達に天界で暮らしていたワケではない」
「レインなんかよりよっぽどスゲエじゃん、お前」
「む、貴様はもう少しアイツを大切にしてやれ。レインはああ見えて繊細な部分があるのだ。……そうだ、京夜。貴様、レインに魔法でも教えてもらったらどうだ? アイツは魔法は使えないが、教えるのは得意だぞ」
「あ、そうなの? まあ、魔法の創造者らしいしな。……今度、教えてもらうとするか」
俺はそう言いながら、ぐーっと身体を伸ばす。
「よし、じゃあ行くか」
「承知」
俺たちはオムライスを台に乗せ、廊下でガラガラと引きずり出した――――――




