脱出
「おい京夜、物音を立てるな。見つかってしまう」
「いや、大丈夫だろ……ってうわおお!?」
前方から迫っていた城の人達に俺たちは慌てて隠れながら、ハアハアと息を荒げる。
あ、危ねえ。あと1秒でも遅かったら見つかってた。
「……よし、我たちはあそこの部屋の窓から出るぞ。あの部屋は基本人が来ないから、大丈夫だろう」
そう言ってレーディルが指さしたのは、他の部屋より比較的小さな部屋だった。
俺たちはその部屋の扉を開けると、音を立てないようにして中に侵入する。
「……なあ、ホントにあの窓から外の出るのか? 無理じゃね?」
「大丈夫だ。きっと出来る」
俺は部屋にあった小さな窓を見て、そう呟いた。
いや、無理だろ。人通れんのか、アレ?
俺が困惑していると、レーディルは大丈夫だといいながら。
「この窓の大きさなら、何とか身体を捻れば抜け出せるであろう。あまりグズグズしていてもダメだ、ここは我から行くぞ」
「……マジで行くのかよ……」
呆れながら呟く俺を無視し、レーディルは窓の縁へと足をかけた。
コイツの行動力を称えてやろう。こんな泥棒じみた事やるのが凄いよね。
――――――俺が少し感心していた、その時だった。
『この部屋汚そうですねー。掃除します?』
『うむ、ここで最後みたいだな』
「「!?」」
部屋の外で聞こえてきた声に、俺たちはビビって肩を震わせた。
「おいレーディル! はよ出ろ! ヤバイ!」
「くっ……! ……よし、出れたぞ! 京夜、急げ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺はジャンプで窓の縁に飛び乗ると、すぐさま身体を捻って外へと脱出した。
ほぼそれと同時に、メイド達の声も聞こえてくる。
俺たちは息を荒げながら地面へへたりと座り込んだ。
「……なあレーディル。外って、こんなに気持ちよかったんだな」
「……ああ、そうであるな」
……人間って、なんか凄いね。




