男料理人
「おお、似合ってんじゃねえか」
「うう……。これ恥ずかしいんだけど……」
メイド服の裾を持つアークに、俺はそう呟いた。
皆似合ってるなあ。もしかして俺が喜ぶようなイベントって、これの事だったんだろうか。
「ふはははは!! 似合ってるではないか! さあ、では『ご主人』ぐっ!?」
「やめろ。そんなにお前はドⅯなのか?」
俺は背に持っていた魔法杖でレーディルの頭を引っ叩くと、俺は改めて皆のメイド姿を見る。
そんな中、俺はふとシオンに目がいった。
「うおお……ロリータ……」
「誰がロリータですか! 怒りますよ!?」
「うおお……ロリ体形……」
「きょーや、コンプレックスについての発言は慎みを持とうね?」
「……はい。すんませんでした」
そう言いながらも、俺はシオンとアークの姿を見て、思わず鼻で笑ってしまった。
……ああ、面白い。
「ちょっと! なんで笑ってるんですか!?」
「……え? いやあ、年齢は違っても、大して成長しないんだなあって思って」
「きょーや!? それは体系的な意味で!?」
「まあそれもあるが。性格も関与してるかな」
「ああああああああああああああああああああ!!」
泣き喚くアークを見ながら、俺はレーディルと鼻で笑い合った。
■
「……んで、俺は何をすればいいんだ?」
城の調理室にて、俺はそうレーディルに問い掛けていた。
ちなみにメイドたちは城内のお掃除のお仕事なんだとか。その様子を見てると実に滑稽だったので、俺は思わず吹き出してしまったよ。
しかしアークに魔法で水をぶっかけられてしまったので、しぶしぶ俺は撤退。面白かったのになあ。
で、何故かこの調理室へ来ていたワケだが……。
「今から京夜には、料理の手伝いをしてもらうとしよう。今日の昼食の準備だ」
「……それこそメイドたちがやる仕事なんじゃないのか? ……あ、そうか」
「いやだって我が見る限り、京夜の仲間達はどうも不器用に見えてな。アイツらに料理は任せられん。バゼル殿に怒られるだろう。我らが作った昼食は城内の人達全員に食べてもらう事になるんだから、粗食な物は出せられん」
「……お前、よく分かってるじゃねえか」
大正解。アイツらに料理を任せたらどうなることか。
俺も言った後気付いたよ。余計な調味料をアイツらは入れてくるから、危険なのである。
よって、まともに料理をできるのは俺一人。
まあ料理は苦手なワケではない。前まで家事全般をこなしていた俺にとっては、料理なんて楽なモンである。
でも、貴族の方々に食べてもらうとなれば、やはり緊張する。俺にできるのだろうか。
「我はバイトをしていたから、料理はある程度得意なのだ。京夜は、料理できるのか?」
「……まあ、一応はな。でも家ではアイツらがタバスコだのポン酢だの入れてくるし、まともに料理できたもんじゃねえよ」
「ほう、やはり我の推理は当たっていたか。……よし、そうとなれば、男二人で、作るしかないな! 気合い入れなければ!」
「おうよ!」
俺たちはエプロンの紐をキュッと絞めると、昼食の材料を取り出すのだった。




