メイドのお仕事
「なあ、結局仕事って何するんだ?」」
今の時刻は、朝の6時。
俺は朝食の魚を箸でつつきながら、レーディルにそう訊ねた。
すると、レーディルはああ、と思い出したような表情で。
「そういえば説明していなかったな。いいだろう、今説明してやる。……仕事というのは――――――メイドになって働いてもらうという仕事だ」
「「「「「「「メイド?」」」」」」」
俺たちの声が見事にハモる。
……。
「まあまあ、そんなに驚くでない。京夜には勿論、別の仕事Vをやってもらうからな」
「ああ、そうだよな……。良かった……」
俺がホッと胸を撫で下ろすと、シオンが「全然良くないです!」と言いながらテーブルから立ち上がった。
「なんですかメイドって!? 私たちがやるんですか!? 一体誰がそんな提案を!?」
「いや、決めたのは我ではない。決めたのはバゼル殿だ。なんでも、ずっと前からメイドを雇いたいと思っていたらしくてな」
「「「「「「…………」」」」」」
俺とレーディル以外の全員が静まり返った。
こんな状況でもニマニマしてるレーディルは死にたいのか何なのか。命知らずも大概にしろ。
焦りながら俺がレーディルを殴りたい衝動に駆られていると、レーディルはフードをクイッと持ち上げ。
「まあ、我も一度見て見たかったものでな。貴様らが顔を羞恥に染め『ご主人様あ!』とか言われたらもうどうなるものかごぎゃああああああああああああああああああああ!!」
言ってる途中にレーディルはアルゼルトに顔面を殴られ、バタリと床に倒れていった。
しかし幽霊だから大したダメージではないのか、すぐに起き上がりニマニマした表情を再び見せてくる。
……殴りたいわあ。
「おい、皆。取りあえずここは、受け入れてくれよ。こんな豪邸に住まわせてもらってるんだから、メイドの仕事ぐらいしてやらないと」
「……。じゃあ京夜さんもメイド姿になってくださいよ」
「いいぜ? いいけどお前ら、後悔するなよ? 泣くなよ?」
「すみませんでした、分かりましたからやめてくださいお願いします」
俺がいそいそとレーディルにメイド服がある場所を訊こうとしていた所をライアに止められ、俺は大人しく椅子に座る。
俺がやったらどうなるよ? 髪紫で瞳紫の男がメイド服来たら、どうよ?
どこのチンピラメイドだ。やってたまるか、んなもん。
「では、バゼル殿からメイド服を受け取ったら、1階のリビングへと来てくれ。楽しみにしているぞ、貴様らが『ご主人』ごぎゃああああああああああああああああああああああ!!」
今度はコハクに目つぶしをされ、レーディルは椅子ごと地面に倒れていった。
……コイツは本当に、変態なのかもしれない。




