京夜の願い
「では、元気でな~。天界でも元気に暮らせよ~」
レーディルがそう言うと、ゾンビ達は嬉しそうにふわりと空中へ浮かび上がり、やがて消えて行った。
はあ、何故トイレに行っただけでこんなに疲れなくてはならないのか。
アークとどちらが先にトイレ行くかで争いにもなったしなあ。ダメだと言ったら泣き喚くもんだから、しぶしぶ俺が先を譲ってやったのである。
思うんだけどこれ、男女差別に等しいよね。なんで女が優先的になっちゃってんの?
いや、しぶしぶ譲る俺も悪かったのかもしれないけどさ。でもここで譲らなかったらクズだの女の子を失禁させようとした変態とかあだ名がどうせ付くんだろ? やってらんねーよもう。
ま、結果的には2人無事トイレに行けたから良かったワケだが。
「ふう……。では、我は睡眠に戻るとしよう。貴様ら、明日は朝早いから、気を付けろよ」
「ええ? 何なんだよ……」
「はっはっは! 明日を楽しみにしているがよい。きっと京夜が喜びそうなイベントだぞ。では、おやすみ~」
「……」
やたら軽いノリで、レーディルは自分の部屋へと戻っていった。
全く、秘密だというもんだから、分からないことだらけである。おれが喜びそうなイベントって、一体なんなんだろう。
俺としては、一刻も早く前世に帰りニートを再び再開したいところだが……
「……ってああああああああああああああああああ!?」
「う、うわあああああ!? な、何なんですかいきなり!? 発狂でもしましたか!?」
「ど、どうしよう……」
俺はある重大な事に気付き、その場にへにゃりと座り込んだ。
ど、どうしよう。
「よく考えたらさ。ゼウスっていうゴミが神様なんだろ?」
「……? ええ、そうですね」
「……。じゃあ俺帰れないじゃん……」
ああ~と項垂れながら、俺は頭を抱え込んだ。
な、なんてこった。俺前散々ゼウスに攻撃したし、もう絶対帰れないやつだわ。
悪魔のオッサンはこんな感じの事を言っていたハズだ。「頑張っていれば神様が、お前を前世に戻してくれるかもな」、と。
頑張るどころではない、攻撃しちゃいましたけど。どうすればいいの? ねえ、どうすればいいの?
「帰る? ああ、京夜さんの前世にってことですか? ……嫌ですよ、帰らないでくださいよ」
「何でだよ」
「いや、寂しくなるじゃないですか。……まあ、魔王グループの魔王を倒せば願いが叶うらしいですけど」
「おい、なんつった?」
「……え? いえ、だから魔王グループの魔王を倒せば願いが叶うと……」
「魔王グループって、あの魔物モンスターの集団だよな? そうだよな?」
「え、ええ」
「……よし」
俺はこっそりと、魔王の討伐を決意した。




