ゾンビゾンビゾンビゾンビ。
「ふあ……あー。トイレ行きたい」
なんやかんやで眠りに就いて、今の時刻は深夜1時。
この時間帯なら前世の俺は、きっと深夜アニメを見てグヒヒグヒヒと笑っていた事だろう。
だが今はそれどころではない。膀胱がかなりの限界状態である。
「……トイレどこ……?」
俺は薄暗い廊下まで出た所で、そう呟いた。
いやマジでヤバいから。このまま漏らすとか最悪の事態だけは避けたい。
「てか見えねえわ……。……『プチ・サンダー』」
暗くてよく辺りが見えなかったので、俺は人差し指にプチ・サンダーを発生させ、辺りを照らす。
はあ、広すぎてどこがトイレなのかも分からん。レーディルに詳しく場所を訊いておくんだった。
尿意を必死に我慢しながら、俺は廊下をさまよい続ける。
と、俺が歩いていると、背後から足音が聞こえてきたのが分かった。
「……ぬおおっ!? あああああ……? なんだ、アークか」
「悲鳴上げるのとかやめてね、きょーや頼むから……」
俺は悲鳴を出しかけて、そして止めた。
光に照らされて現れたのは、アーク。当然寝るときの格好なので、パジャマである。
ちなみに今回は猫耳パジャマではない。あんなのこんな城で着られたらたまったもんじゃないもんなあ。
「ああ……ビビった……。んで、なんでお前ここいんの?」
「いや、私トイレ捜してるんだけど……きょーや知らない?」
「奇遇だな。ちょうど俺も今探してたところだ」
そう言って俺は、再び辺りを見回した。
やっぱり広すぎてどこにあるのか分かんねえ。そろそろマジで限界なんだけど。
「うっ……。きょーや、私もう漏れそうなんだけど……」
「よくそんなセリフ堂々と言えるもんだな。……仕方ない、1部屋ずつ回っていくしか……」
「あ……やめた方がいいよ」
体をもじつかせながら、アークが言った。
何でだよ。今はそれどころじゃないというのに。
「なんかレーディルが、『我の部屋含め、他の人達の部屋に深夜入らない方がいい』って」
「なんだそりゃ。意味深だな」
言って、俺はすぐ近くにあった部屋のドアノブを掴もうとした。
しかしその手を、アークに掴まれる。
「おい、今は本当にそれどころじゃないだろ? このまま漏らすワケにもいかないし。そうだろ?」
「うう……そうだけど……」
「分かったな? じゃあ行くぞ?」
俺は、ふう、と息を吐きながら、ドアへと近づく。
開けようとするのを嫌がるアークを無視し、俺がドアノブを引くと―――――
―――――そこには、大量のゾンビたちが、俺たちをお出迎えしていた。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「ぴゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
全速力で、俺たちは真夜中の廊下を走り出した―――――!!




