レーディルさん、再び登場
「なんかイデア聖街まで来てみたまではいいけど……暇だよな」
「ですねー」
「特にやる事もないし」
「じゃあなんで来たんだ……」
俺たちが天界から帰って来てから、1週間程経った頃。
俺たちは街をうろつきながら、今後どうするかを話し合っていた。
いや、うん。本当にやる事がないのである。
じゃあクエスト行けよ、との意見は承るが、めんどくさいのである。楽して金を稼ぎたい。
「……京夜お兄ちゃん。さすがにそろそろクエスト行かないとマズいんじゃないですか?」
「えー……」
俺はシオンの言葉に気怠そうに返事した。
いや、確かに俺は強くなった。悪魔化すれば多分チート並みの戦闘能力となるだろう。
ただ、人間状態の俺は大して強くない。それにドⅯ効果のせいで色んなモンスターから追いかけられるから危険なのだ。
……うん、よし決めた。
「お前ら。クエストでも行って金稼いで来い」
「嫌よ、面倒くさい。京夜が行ってきなさいよ」
「ふっ、断る」
俺がキッパリとアルゼルトに向かって断ると、なんか痛い視線が俺の方に集まって来たので、俺はしぶしぶクエスト受付窓口の方へ足を向けた。
なんかこういう時大抵俺が酷い目に遭っている。
「ああもう、しゃあねえ。じゃあ皆で行くか――――――――」
『佐々木・京夜あ!』
「……」
どこからか聞き覚えのある声が響いた気がした。
俺がゆっくりと、そちらを振り返ると。
「また会ったな、佐々木・京夜。……おや? そちらの可愛らしい娘達は?」
そこには、いつかの奇妙な男、レーディルが一礼しながらこちらにやって来た。
「なあ、見たか今の登場の仕方?」
突っ込みたい所は色々あるが、俺はそれよりもレーディルの登場の仕方の丁寧さに驚いた。
「一礼してやって来たぜ? なあ。お前らも少しはコイツの丁寧さを見習えよ」
「いや、ていうかこの人誰ですか」
「いいだろう! 我が説明してやる!」
俺がレーディルの登場の丁寧さについて自分の仲間達に言っていると、レーディルはビシッとポーズを決め、こちらに説明してきた。
「我が名はレーディル! 前にライト・ブランの城に住み着いていた者だ! ちなみに我の正体は、ダンス好きのスーパー幽霊!」
「幽霊なのに何で私たちに見えるんですか」
「我の力は特殊なのだ! 幽霊だとしても、姿を消さずにいることぐらいできる!」
そう言ってレーディルは、はっはっはと大きな笑い声を上げた。
あ、そうなんだ。なんかこの人特殊な能力持ってるんだね、初めて知ったわ。
「んで、何で俺たちの所に来たんだよ。まあ暇だったからいいけど」
「はっはっは! 聞いて驚くなよ?」
なんだか前置きをした後、レーディルは街の奥に見える、大きな豪邸みたいな建物を指さした。
……? あの豪邸が、どうかしたのだろうか。
俺がそう思っていると、レーディルは嬉々とした表情で。
「なんとあの家が、我の住処となったのだ!」
「「「「「「「……!?」」」」」」」
な、何だと……!?




