ちょっと寂しいお風呂(コハク視点)
「さっむ……。皆、早く入ろう」
「ええ……。―――――へくちっ!!」
シオンちゃんのくしゃみの声を聞きながら、私はゆっくりと湯船に浸かった。
全く、アークもぶっとんだ事をするものだ。風邪でも引いたらどうするつもりなんだろう。
まあおかげで、風呂に行く気にはなれたワケだが。
「はふ……。温まりますねー……」
「ねー……」
そんな会話を聞きながら、私はぼーっと夜空を見つめる。
そういえば前に、京夜と一緒に風呂に入ってしまったハプニングがあったな。あの時は本当に、恥ずかしくて死にそうだった。
いきなり知った顔の男が現れたら、恥ずかしいに決まっている。なのにアイツはといえば、恥ずかしい素振りも一切見せないではないか。
……まあ、悪い気分ではなかったが。
「京夜とレインは、大丈夫だろうか。酷い目にでもあってるんじゃ……」
「……。まあ、気にしてても仕方ないわよ。私たちに、何かできるワケでもないし。……とにかく今は、無事であることを願いましょう?」
「……そう、だな」
全く、モンスターのくせに、良くできた奴だ。
思えばアルゼルトもシオンちゃんも、一見見れば普通の人間にしか見えない。普通に街中を歩いても、気付かれたようなこともないし。
もしかすると、色んな場所に、気付かないだけでモンスターは潜んでいるのかもしれないな。
私がぼーっとそんな事を考えていると、アークが。
「でも、やっぱり心配だよね。レインも、何してんのか分かんないし。神様からお説教でも受けてるのかな」
「ああ、大いにあり得るな。きっとアイツらのことだから、何かやらかしたんだろう」
「だよね。でも、なんできょーやまで?」
「さあな。天使3人を苛めた罰が当たったんじゃないのか?」
「あー……」
私がそう言うと、アークは納得した様に頷いた。
むしろそれ以外考えられないだろう。天使3人はまあ、確かに腹が立つが。
今度もしアイツらに会ったら、睡眠弾(かなり強力)を撃ち込んで、即行牢屋に入れてやろう。うん、それがいい。
京夜も前牢屋に入れられていたな。
……。
……一体どれだけ問題を犯しているというのだ、アイツは。
思えば街から逃げることになったのも、主に京夜のロリコン疑惑なんかが広まったからである。流石にあそこまで言われてしまえば、居づらくなってくるだろう。
本当にロリコンなのかは知らんが、まあ問題を犯しているということは確かである。何をやらかしているのか。
―――――でもアイツはロリコン変態なんかの疑惑が掛けられている割には、ずっといい奴だとは思うけどな。
私はそんな事を考えながら、いつかのように頭までお湯に浸かる。
……早く、戻って来てくれればいいのだが。
これにて3人の視点は終了となります。
次回からは再び、京夜視点が始まりますので、よろしければ読んでみてください。




