京夜の居ないチーム(ライア視点)
ここから、ライア視点、アーク視点、コハク視点の3人の視点で一作品ずつ書いていきます。
アークとコハク視点は初めて書くので変な部分があるかもしれませんが、どうか温かい目で見ていただけると嬉しいです。
大変な事になってしまった。
京夜さんが、消えて行った。私たちのチームから、消えて行った。
信じたくはないが、今私たちに押し付けられたのは紛れもない「現実」である。
「なに、京夜ならきっとまた戻ってくるって! あのバカは、そう簡単にはやられないよ!」
アルゼルトさんが朗らかに笑いかけてくるが、その笑顔はやはりぎこちないものだった。
きっと皆心配なんだろう。私だってそうだ。仲間が2人も消えて、心配じゃないワケがない。
それにしても、レインさんは分かるが、なぜ京夜さんは天界の人達から色々と言われてしまっているんだろう。何か関係があるのだろうか。
思えば京夜さんのことは、よく分かっていないことばかりだ。今度、何か訊けたらいいのだが。
……もっとも、その「今度」が来るかどうかは分からないままなのだが。
「ま、まあ! こんな所にずっと立ってるのもなんだからさ! どっか、クエストでも行こうよ! きっときょーやだって、元気にやってるハズだよ!」
その雰囲気を振り払うように、アークが明るく言った。
確かに、ここは一度嫌なことは忘れてしまった方がいいかもしれない。クエストに行けば、多少気も紛れるだろう。
私はアークの言葉に同意するかの様に頷くと、皆に向かって笑いかけた。
……ちゃんとした笑顔に、なっていただろうか。
■
「ふっふっふ……。京夜が帰って来たら、この虫を顔面にぶちまけてやろう」
クエスト内で私たちは、色んなアイテムを採集していた。
ちなみにこのクエストは、何をやっても自由なクエスト。モンスターを狩っても、アイテムを採集してもいい。
私は使えそうなアイテムを集めながら、コハクさんの方を見る。
それを見て、私のテンションは一気に上昇した。
「おおっ!! いいですね! 私も集めます!」
「このブルータランチュラなんてどうだ? 見た目がかなり気持ち悪いから、ビビると思うんだが」
「うわっ! ……それは多分、誰でもビビりますよ」
コハクさんは嬉々とした表情を見せながら、ブルータランチュラを差し出してきた。
私はソイツの足を持ちながら、採集箱へと入れる。
京夜さんの驚く顔は面白いのだ。あの人はなぜかモンスターに狙われやすいドⅯ体質を持っているみたいだし、きっと喜ぶだろう。
その後京夜さんが怒る時の顔も、これまた面白い。
そんな事を考えながら、私は黙々と虫を集めていた。
「ライアさん! グリーンハーブ見つけましたよ!」
「ああっ! ありがとう!」
声のした方を見ると、シオンちゃんが大量のグリーンハーブ(回復草)を持って、私に差し出して来ていた。
私はお礼を言いながらそれを受け取ると、採集箱の方を見る。
「結構いっぱい集まりましたねー。虫もアイテムも取れましたし」
「ああ、そうだな。……あ、それと、また雑貨屋でゴリラマスク買った方がいいんじゃないか? その方が京夜も驚くだろう」
「おお! ……面白くなってきました」
こういう時だけ頭を使う私たちは、きっと退屈が嫌いなんだろう。
私はシオンちゃんの持って来たグリーンハーブを採集箱に詰めると、ぐーっと身体を伸ばしながら皆に言った。
「そろそろいいんじゃないですか? 大分取れましたし」
「そうだね。……いやあ、私泥だらけ」
「私も」
その声に驚いて振り返ると、やたらとバイオレンスな姿をしたアルゼルトさんとアークが立っていた。
泥どころじゃない。草が体に張り付いていて、もう人間かどうか分からないくらいになってしまっている。
「ちょっとアーク、汚いです! 水魔法で洗ってください!」
「えー? 結構気持ちいいのに」
意味の分からないことを呟きながら、アークはしぶしぶ自分とアルゼルトさんの体に水をかけた。
気持ちいい……? 一体何が気持ちいいんだろう。
私は採集箱を右手に持つと、クエスト内から出るべく歩き出した――――――




