仲間
何故かは知らないが、レインが去っていった部屋で一人取り残された俺は。
痛みで蝕まれる精神力と戦いながら、必死に意識を保っていた。
さっきから鎖が身体を絞めつけてきて、かなり痛い。もう夜も遅くなるというのに、これでは眠れることもできない。
ちなみに、「なんでこんな事に」と考えるのはもうやめた。言ったところで、何も変わらないということが分かったからだ。
言ってても大した気休めにはならないし、黙ってた方がまだ楽である。
「佐々木・京夜。いや……魔力吸収機。今から働いてもらうぞ」
朦朧とする意識の中、突如部屋にラファエルの声が響いた。
案の条、部屋の入口付近にはラファエルが立っている。
「魔力は重要なエネルギーとなるからな。どうやらお前の魔力は吸っても吸ってもすぐに回復するらしく、終わりが見えそうにない。……まあさすがは、悪魔といったところか」
そこまで言ったところで、ラファエルが両手を前にかざした。
それと同時に、俺の体中もとんでもない痛みに襲われる。
「がっ……!? はっ、ぎっ……!?」
「はっはっは。しばらくそうしているがいい」
ラファエルの笑い声が部屋中へと響き、俺は痛みと怒りに襲われる。
やめろ、怒るな。これ以上俺がそう思ったところで、何も変わらない。
今は取りあえず、痛みに耐えるしか、ない。
「ほほう! やはり尋常ではない魔力の量だ! これならすぐに必要量に達するな!」
「ぐっ……あっ……」
ラファエルがそう叫ぶ度に、俺の体の痛みも強くなる。
……痛い。その一言しか、今の俺の状況は表せそうになかった。
一体どれだけの魔力を吸っているんだろうか。天使は聖力とやらを使うんじゃなかったのか?
そんな疑問を抱きながら俺が意識を失いかけた、その時だった。
「もうやめてくださいッ! ラファエルさんッ!」
「……レインか」
聞きなれた声が聞こえ、俺がゆっくりと目を開けると――――――そこには、他の天使達に取り押さえながら現れる、レインの姿があった。
大方、俺が何をされているのかを知ったんだろう。レインは目尻に涙を浮かべ、ラファエルの方を睨んでいた。
……まいったな。俺が魔力吸収機にされてるってことは、できれば知られたくなかったんだけど。
そうしたら多分レインは俺のことを心配してくるし、助けにも来ると思う。でも、そんな事をしたら絶対危害が及ぶに決まっている。
だから俺は、あえて話さなかったのだ。
俺の苦痛がレインの命の代償となるなら―――――嫌な話だが、その方が断然マシだろう。
「レイン、邪魔をするな。でなければ、殺す」
「ふざけないでくださいっ! 何で……何でこんなこと……」
「決まってるだろう? コイツは魔力吸収機。何でもクソもない」
「だからってッ……」
「……仕方ない。まずはお前から始末するか」
それでやっと俺は、レインが危険な状況になっているという事が呑み込めた。
アイツは、魔法を使えない魔法使い。ラファエルに、勝てるわけがない。
そう考えると、俺の身体は勝手に動き出していた。
「『サンダー・レイン』ッ……!!」
「!?」
レイン、お前の作った魔法、全力で撃たせてもらったぜ。
そんな事を思いながら、俺はラファエルに向かって飛んでいった魔法の方を見た。
流石にあの速さではラファエルも避けられるワケがなく、俺の放った電気魔法は見事にラファエルへと炸裂する。
痛みの中魔法を放ったせいか、俺の身体はもう限界状態へと達していた。
それでも、なんとか俺はレインに叫ぶ。
「ッ……おい! 逃げろ! 早く!」
「で、できません! だって京夜さん……」
「俺はいいから! 早くしろ!」
「っ……」
レインは戸惑いながらも、素直に部屋から出ていってくれた。
……多分、これから俺はラファエルにボコボコにされるんだろう。
――――俺はあのバカばっかりのメンバー達が、どうやら気に入っていたらしい。




