魔力吸収機
「……で、なんでこうなるんだよ」
俺は目覚めると、まず自分の今の状況に疑問を抱いた。
ホント、意味分かんねえ。
なんで俺―――――拘束なんかされてんだ?
俺の身体は壁にしっかりと鎖で繋がれ、身動き一つ取れない状況となっている。……なんてこった。
鎖だけが周りの色に似合わず鋼色をしているので、余計に気味が悪い。
俺が何とか抜け出そうと必死にもがいていると、どこからかさっきのクソ神様が現れた。
「おい、どういうことだ……ですか? 苦しいんですけど……」
「貴様の正体は分かった。―――――まあ、まずはやってみるか」
「……?」
正体? ああ、悪魔のことね。
今の俺には正直言ってそんなことどうでもいい。取りあえず、ここから脱出したい。
繋がれてるだけでもかなり苦しいし、呼吸もしづらい。早くここから出たい。
今すぐにでもここから出て、神様をぶん殴りに行きたい気分だ。
「ラファエル、ミカエル。後は任せたぞ」
「「了解いたしました」」
そして神様の背後からラファエルとミカエルが現れ、俺の前に歩み寄ってくる。
くっそ、出られねえ。俺の力じゃ無理だ。
俺がもがいていると、振り返りざまに神様が。
「ははっ! 実に滑稽だ! それは人間の力では当然、悪魔の力でも壊せない程の代物だ。抜け出すなんて事は、まず諦めろ。しばらく、そこで泣き喚いているんだな!」
高笑いしながら、ゼウスはスタスタと何処かに行ってしまった。
嘘、マジかよ。ホントに抜け出せねえ。
てかさ、これから一体何を始めるつもりなんだ? このままお話してハイ終了みたいな感じで終わってくれたらいいんだけど、まあそんなワケもないか。無念。
俺のそんな様子を眺めながら、ミカエルは。
「これからお前には、魔力吸収機となってもらうぞ。お前も気付いているとは思うが、お前の体内には計り知れない程の魔力が潜んでいる。ハンターカードに記された、『魔力ポイント』の時もそうだっただろう? カードには記しきれないくらい、お前の体には魔力が潜んでいる。――――なので、今からお前の魔力を吸収させてもらうぞ」
「お、おい! ちょっと待て――――――……ぎっ!?」
突如、先ほど経験した時とは比べものにならないくらいの頭痛が俺を襲う。
それどころじゃない。体中全体が、締め上げられているような感覚だ。
……これは本当に、いつか死んでしまうんじゃないかって程の痛みだった。
「はっはっは! これも、天使を冒涜した罰といえよう。……なぜ、こんなことをするか。今のお前は、そう思っているな?」
ミカエルが、俺を見てそう言ってくる。
……正解だ。今俺はそれをめちゃくちゃ知りたい。
考えたいところではあるんだが、無理である。痛みが思考を上回っているからだ。
俺が痛みでもがきながらも、ミカエルは答えを待たずに。
「……それは、摩界軍どもを倒すためにある。お前も一度行ったことがあるだろう? ――――死後の世界・地獄に。あそこには本来なら過ちを犯した者が行く場所だったんだが……お前はなぜか地獄に行ったらしいな」
そうだよ。ホント意味分かんなかったよ。
俺は迫りくる痛みを相手に、そんな悠長なことを考えていた。
何か考えてないと、多分気を失ってしまう。だったら、少しはコイツらの話に付き合ってやるしかねえ。
俺は若干の怒りを感じながら、2人を睨む。
「そんな眼で見るんではない。私たちを誰だと思ってる? ……ともかく、魔界軍――――要するに、地獄に住み着く悪魔どものことだ。そのゴミどもを倒すには、どうしても魔力が必要になってくる。――――なにせ魔力は魔法を使うのにも、能力を発揮するのにも必要になってくる、重要なものだからな」
ゴミどもは、お前らだろうが。こんな事しやがって。
しかし、そろそろ俺も限界になっていた。もう、考えることすらできない。
くっ……そっ、もうダメだ。
「……ほう、やはりすごい魔力の量だな。吸っても吸っても終わりが見えん。―――――さて、吸収威力を上げるとするか」
「がっ!? ……は、が……」
とんでもない痛みが、俺が意識を失う前に覚えた最後の感覚となった。
分かりにくい部分あると思うので、付け足します。
魔力ポイント→異世界で一般的に使われる魔力の言い方。
魔力→天界での言い方。
です。不明な点ありましたら、どうぞ気軽にお知らせください。




