お仕置きです♪
色々あり、「仮」変態ハンターという称号を付けられた俺は。
眠い目を擦りながら、引き続きイデア聖街を目指して歩き続けていた。
ちなみに今の時刻は、午前8時。
「なあ、いい加減信じてくれって。俺は、変態じゃない。いいな?」
「……。まあ、一応信じないこともないですけど……」
いやもう、本当に昨日は大変だった。
あの後必死に俺はアークの口を塞いだんだが……やはり声は聞こえてしまっていたらしく、他の宿泊客達がゾロゾロと集まって来てしまった。
そりゃあもう当然、何とかして俺は誤解を解いた。これ以上良からぬ噂が流れたら、本当にこれからの俺の異世界人生が崩れかねなかったからだ。
まあ信じてくれただけ良かったと思う。話聞いてくれない系の人間が一番面倒くせえもん。
それでも、一応他の人達から警戒はされてしまっているワケだが。
「いや、本当にあれは私のせいだ。すまない」
「……でも、また丁度いいタイミングで入れ替わっちゃったよね。係員の人気付かなかったのかな?」
「……」
アークの言葉に、俺は歩きながら沈黙した。
……そうなのだ。なんでもあの宿の風呂は入れ替わり制だったらしく、午後7時になると男湯と女湯が入れ替わるんだとか。
なぜそんなことをするのかは知らないが、コハクは午後7時前に風呂に入ったらしい。
それに係員さんは気付かなかったらしく、男湯の旗を女湯の旗に変えてしまった。多分、こういう事になるだろう。
はあ、宿の人の説明ちゃんと聞いておくんだった。あまりの疲れで、聞き流してたもんなあ、俺。
まあ……ぶっちゃけ後悔はしてないけど。
「で、今日はどうするんですか? アルゼルトさん達探しに行くんですか?」
「……それなんだよなあ。正直言って、俺はめんどくさい。それに、ここで探しに行ったらダメだと思うんだ。だってこの冒険の目的は、自分1人の力でどれだけ成長できるか……だろ?」
「え? そんなこと言ってたっけ?」
「すんません、言ってませんでした」
俺は今勝手に決めた目的に素直に謝ると、再び歩き始めた。
いやでも、間違っていないだろう。忍耐力と英気を養うとかは行く前に行ったハズだし。
―――ただ。
……今更なんだが、実を言うと。家事の方が……マシだったと思う。
いや、うん。ホントに。元気な様子を装っているつもりだが、これでも俺はかなり疲れているのだ。
毎日毎日歩き続けなきゃいけないし、俺の仲間の問題児たちは色々何かやらかすし。
……。
「なあ、ピピ。コイツら、問題児だよなあ?」
「イエス! イエス!」
「お、お前……! ついに英語まで……!」
え、すごい! 英語を話すなんて……!
コイツは一体何者なんだろう。インコとはいえ、ここまで的確な返事をして言葉も学ぶ鳥は見たことがない。
ひょっとしてコイツは、何か凄い力を持ってるんだろうか。
「……京夜? 誰が問題児なんだ?」
「言ってくれるじゃないですか。私たちを甘く見ない方がいいですよ?」
「きょーや、お仕置き! ……よし」
「『よし』じゃねえ! 分かった、分かったから痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいいいいいいい!!」
あああああああああああ!! 皮膚がっ! つねられてああああああああああああ!!
痛い。コイツら俺より力があるんじゃないだろうか。
「ピ、ピピ、助け……」
「……ピ!」
「お、おい待てお前。ちょ、冗談だろ? ……ああああああああああああっ!!」
ピピは「頑張って!」とでも言うように、俺から距離を取っていった。
……前言撤回。
コイツは、ただのインコだ。




