風呂での遭遇
冒険開始から、2日が経った頃。
俺はふああ、と小さく欠伸をしながら、イデア聖街への道を歩き続けていた。
「……なあ、ホントにアイツらは何処に行ったんだ? そろそろ見つけないとヤバいんじゃないのか?」
「そんなこと言われても、見つからないですし。どうしようもないですよ」
「まあ、そりゃあそうなんだけどさ」
そう、未だにアルゼルト、シオン、レインの3人が見つかっていない。
何とかピピは見つかったワケだが、冒険開始早々メンバーが欠けてしまった。わずか半日で3人いなくなることになるとはなあ。
まあ、アイツらなら何とかやってくれていれてるとは思うけど。
「でも、イデア聖街へ向かうという目的は同じなんだ。だったらいつかは会えるんじゃ……」
「ああ、そうだな。ただ誰かさんのせいでアイツらは地図を持ってないんだけどな」
「うっ……。何もそこまで言わなくてもいいじゃないか……」
語尾をごにょごにょと口ごもらせながら、コハクは拗ねたように目を逸らしてしまった。
どうやら結構気にしているらしい。それをさらに苛めたくなる俺は、ドSなのか変態なのか何なのか。
まあこれは全員の責任でもあるワケだし、一刻も早くアイツらを見つけなければ。
「てかもう5時じゃん……。宿捜さねえと」
「え!? もうそんな時間!?」
「そうだよ。ホレ、見てみろ」
俺はアークに腕時計を見せると、どこかに宿がないかキョロキョロと探し始めた。
今日もモンスターと戦ったり逃げ回ったり歩いたりで、かなり疲れた。一刻も早く休んで、明日に備えたい。
だが、悲しいことに。
「……次の街まで、あと1時間かかるな」
「「「…………」」」
頑張れ、俺。頑張れ、皆。
■
それなりに広い、宿の部屋の中にて。
俺はゴロゴロと床に転がりながら、風呂に入るのを逡巡していた。
何とか宿は見つけられた。しかしもう疲労がピークに達しているため、動きたくない。
足の痛み、腕の痛み、体の怠さ、バカに付き合う精神的な疲れ。もう散々だ。
「京夜さん、先に入って来たらどうです? 私たち疲れました」
「先入って来て、きょーや!」
「……えっ。ちょ、お前ら待て、おい」
無理矢理ライアとアークに追い出され、俺はペタンと廊下に座り込んだ。
疲れて動きたくなかったが……まあこの際仕方がない。先に入るとするか。
……多分、俺に拒否権はないのだろう。
俺は脱衣所の扉を開け、豪快に服を脱ぐ。一刻も早く風呂にダイブをかましたい。いや、流石にそれはやらないけど。
まあ風呂に入れば多少疲れも癒えるだろう。
そんな楽観的な事を考えながら、俺が風呂の扉を開けると――――――
「な、ななな、な……!?」
「……!?」
コハクがいた。
……緊急事態発生です。




