いちにちがはじまった! コマンド?
結論から言おう。
一睡も出来なかった。
もう一度言う。
一睡も出来なかった。
いや、あのですね? 俺も一応睡眠を試みようとしたんですよ。
ただ、それはもはや不可能に近い。女の子に囲まれているからというのももちろんあるのだが、それ以上に二人の寝言が怖すぎるのだ。
「京夜さんの心は何色ですか?」だの、「もう頭取り替えていい?」だの、「私の心はハッピーエンド♫」だの。
寝てねーんじゃないかと俺は二人の頬をつねってみたものの、起きる気配はなかった。
結果、俺は一睡もできていない。
「京夜さん京夜さん! ご飯食べに行きましょうよ! この旅館には奥にでっかい食堂があるそうですよ!」
「おっ! いーね! 賛成! ほら、きょーやも行くぞ!」
俺は朝のまどろみへと落ちていこうとしたが、ズルズルと部屋から引きずり出された。
頼む、もう少し休ませてくれって。
しかしそんな俺の願いもむなしく、無理やり立ち上がされる。
痛む頭を押さえながら、しぶしぶ俺は二人へとついて行った。
「おお……結構広いな……」
そこは、いかにも和室といった感じの部屋が広がっていた。
周りは他の宿泊客たちで賑わっている。
8畳ほどの広さしかなかった俺の引き籠り部屋とは、大違いだ。
俺はゆっくりと席に着き、眠りに着こうとすると、アークに叩き起こされる。
「いってえ! 何すんだよ! 休ませてくれって…………」
「食事をする部屋では睡眠厳禁だよきょーや! てなわけで、なんか面白いことしよう!」
「いやだ」
俺は即答すると、机に突っ伏した。しかしまたもアークにたたき起こされる。
しかも叩かれた場所が頭で結構痛かったので、俺は半ギレ化した。
「面白いことってなんだよ!? なんか芸でもしろってか!? それこそ無理があるだろ!?」
「うーん。それもそうだね。あ、じゃあ一つゲームをしよう! きょーや、負けても泣かないでね?」
アークはビシッと俺を指し、宣戦布告してきた。
お茶を飲んでいたライアも、興味深そうに様子を見ている。
「ゲームの内容はこうだ! 今からやるのはしりとりだけど、少しルールが違うんだ。まず、一つ目は動物の名前しか言ってはいけない! 二つ目は十秒以内に答えなくてはならない! 負けた方は今日一日勝った方の下僕! どう? 簡単でしょ? これなら早く決着も着くぞ!」
アークは自信満々といった表情で頷いている。
しかし、しりとりか。ルールがやたら複雑だが、動物の名前なら多少の覚えがある気がする。
自信はあまりないが、取りあえず半分ヤケクソで始めてみることにした。
「では私から! キツツキ!」
ゲームはアークから始まった。俺の後ろでは、ライアが十秒をカウントしているのが聞こえる。
なぜキツツキから始まったのかは分からないが、俺は適当に考える。
「キツネ」
俺が棒読みで答えると、アークが早くも戸惑い始めた。
「ネ…………? ね、猫!」
「コアラ」
その後も俺たちの戦いは続いた。
途中で俺が普通知らない様な動物の名前を上げたりしたのでなにそれ? となったりもしたが。
しかし、ついに。
「キ…………? キ、キ、キリン!」
アークが必死で動物の名前を探しているのが分かったが、そこで試合は終了した。
…………せめて時間切れで負けるとかにしろよ。ややこしいルール作った意味あるのか?
俺は最初のルールを思い出すと、不敵な笑みを浮かべた。
「お前、負けたら下僕になるって言ったよな? 今日一日、よろしくたのむぜ」
俺は食事のメニューを取りながら言い放った。時間にして5分ちょっとくらいだっただろうか。
アークは悔しそうに暴れていた。
…………もう完全に子どもじゃねーか。
一睡もできなかった事、みなさん一度はあるんじゃないでしょうか。(笑)
僕は学校の修学旅行の時とか、眠れなかったです。
なんでしょうね、アレ。微妙に緊張しますよね。
引き続きよろしくお願いします!