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冒険開始のお知らせ

「ああ! ピョンピョン虫が! ピョンピョン虫があああああああああ!」

「そっち行きましたよ! 取ってください!」

 庭で虫取りをする騒がしい声を聞きながら、俺はジャブジャブと皿を洗っていた。

 さすがに嫌気がさしてくる。なぜ俺はこのクソ眠い中皿を洗わなくてはならないのか。

 俺はなんとかしてこの問題を解決しようとしていた。いや、他の奴らにやってもらえばいいじゃんって思うでしょ? 無理なんですよ。

 何をどうお願いしてもやってくれない。そろそろ俺もキレる。

 ニートに戻るのが懇望の俺にとって、働くなんてことはしたくないのだ。いや、いつかは必ず働かなくちゃいけないんだけど。いやでもまだ働かなくていい年齢だぞ、俺は。

 俺はストレスを不屈の精神で沈めようとするもそろそろ限界なので、ある一つの提案を伝えることにした。

 実はこの提案は、昨日考えていたものである。


「おいお前ら。ちょっと集まれ」

 俺はパンパンと手を叩き皆を呼んだ。……うわっ、どんだけピョンピョン虫捕まえてんだよ。

 ピピで動物には多少慣れたが、虫は無理。受け付けない。

 ちなみにピョンピョン虫とは足の長い、ナナフシみたいな虫だ。飛ぶけど。

 ああ、キモイ。そして怖い。

 俺が早くしろと呼びかけると、アークがいきなりピョンピョン虫を差し出して来て、

「きょーや見て見て! ピョンピョン虫!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 突如顔に飛びかかって来たピョンピョン虫を必死に振り払うと、俺は息を切らしながらアークを睨んだ。

 こ……この野郎……。

 しかし動じない。俺は動じない。なぜなら俺はもう大人だから。


「……お前ら。いいか。もうお分かりの方もいると思うが、俺は今とっても疲れている」

「「「「「「知ってる(ます)」」」」」」

「じゃあ手伝えよ!!!」

 俺はキレ気味でみんなに訴えた。何なんだよ、もう意味分かんねえよ!?

 ……まだだ。取り乱すな、俺。


「話が進まないから先に言うが……。この家を一端離れて、冒険でもしてみないか?」

「「「「「「嫌です」」」」」」

「ダメです」

 くそっ、コイツら6人同時に拒否してくる辺りが腹立つ。

 だが、俺はくじけない。

「俺、思ってたんだけど。クエスト行くのにも、忍耐力って必要になってくると思うんだ。それに、冒険行ったら英気も養えるハズだし」

「嫌。私はこの家に居るもん」

「ダメだ。強制参加だ」

 俺は拒否してくるアルゼルトに即答すると、真顔で皆に訴える。

「だってさあ。俺、疲れたんだ、もう。ハッキリ言ってこれ以上家事はやりたくない。……だから、ちょっとの間冒険でもしてみないか? いつまでもとは言わないから」

「京夜。まだ家が完成して1ヵ月も経ってないじゃないか。それなのに、か?」

「ああ。決定した事だ」

「たとえロリコン疑惑が増えて、より一層ゴミゴミしくなったとしてもか? いいんだな? 本当にそれで、いいんだなっ!?」

「ああ、いいよ」

「……」

 ズイと詰め寄ってくるコハクにそう言うと、予想外の返答だったのかコハクは何やらぶつぶつと呟き始めた。

「ま、まさか……。これで京夜が動じないなんて……」

 もういいや。アイツは放っておこう。

 ただまあ、冒険と言っても流石に今回は俺もちゃんと計画を考えている。こんぐらいは考えておかなければ。

「この村を抜けたら……イデア聖街? ってのがあるらしいんだが……。そこに行くぞ」

「ちょ、ちょっといいですか?」

 俺が説明する中、レインがおずおずと手を挙げてくる。

「あの、ホントに行く気ですか? 正直言って嫌です」

「ああ、行くぞ。大丈夫、そのイデア聖街とやらまではそう遠くないみたいだから」

「嫌です」

「行くっつってんだろ」

 俺は手に持った地図を見ながら、ちょっとキレ気味にレインに言った。

 イデア聖街に行くまでいくつか村を超えることになるが、まあそんな何日もかかる距離じゃない。そこに行ったらしばらくそこでクエストでもこなして、帰ってくればいいだろう。

 とにかく俺は家事の仕事を逃れたい。「英気を養う」とか言ってたけどぶっちゃけそんなのどうでもいいんだよね。


 俺が本気で行くぞ、と付け加えると、6人全員が首を振った。行くけどね。


 


 

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