お風呂でお星さま
「ふう……」
「ほわあ……」
俺たちは風呂に入りながら、小さく声を漏らした。
家を造る際、風呂に一番こだわったので、結構広い造りとなっている。それも外風呂。
家の中にも一応風呂はあるのだが、外で入ったほうが気持ちいい。もちろん、体を洗うのは中で洗うのだが。
俺はぼーっと空を眺めながら、小さく息を吐く。
「綺麗ですね……このまま時間が止まればいいのに……」
「そうだな……」
空には、たくさんの星が見える。ああ、なんてロマンチックな。
星、か。引き籠ってた俺には当然見る機会も少なくなってきていたのだが、まさか異世界で再び見ることになるとは思ってもいなかった。
俺は前世で習った知識を、シオンに教えてやることにした。
「7月7日には、織姫と彦星っていう正座が出るんだぜ。織姫がベガで、彦星がアルタイルだ」
「おりひめ? ひこぼし? ……なるほど、そうなんですね」
「さてはお前全然分かってねえだろ」
知ったふりをするシオンに突っ込むと、俺はぼーっと別の星を眺め始めた。
よく見るといろんな星があるなあ。こんなに見えるのも珍しいんじゃないだろうか。
「気持ちいいですね……。京夜さんはこの後寝るんですか?」
「いや、俺にはまだ布団を敷く義務がある……と思ったが、アイツら寝てるし俺とシオンの分だけでいいか。後は洗濯物たたんで終わりだな」
「まだやることあるんですね……。私手伝いますよ」
「いや、いいよ。シオンだってもう眠いだろ?」
実際、シオンはもう眠そうにしている。目擦ってるし。
よし。もう一踏ん張り、俺が頑張るとするか。そして明日はクエストにでも行って、金を稼ぐ。
こんな感じで続いていけばいいのだが。平凡に。
「私だって……まだ眠くないですよ……。来年もう13ですし……」
「おい、お前もう出ろ。明らかに眠そうじゃねえか。ここで寝るなよ? いいな?」
「……くかー……」
「……おい」
そう言った直後、シオンの寝息が聞こえてきた。
このまま寝かせとくのもアレなので、取りあえず俺は起こすことにする。
「おい、起きろ。流石にこのまま寝られても困るんだよ。のぼせるし」
「ん……仕方ない……分かり……ました……」
そう言ってシオンは風呂から出ると、ペタペタと脱衣所の方へ歩いて行った。
一応タオルは身に着けているのだが、不覚にもちょっとドキッとしてしまう。ごめんなさい。
俺はその姿を見届けると、再び星を眺め始めた。




