クッキングマスター京夜
「……そんなワケで。行く場所もないですし、しばらくこの世界に留まることにします」
「……」
何を自慢そうに言っているのだろう。言ってる内容と表情が合ってない。
「てか天界には戻らなくていいのかよ。俺を連れてくんじゃなかったのか? まあ行かないけど」
「いやもう無理矢理連れていきたくもないですし。帰ったら帰ったでなんか色々怒られそうですし」
何を怒られるんだよ。何となく予想はできるけど。
……あ、そうだ。
「お前ら、これどうすんの?」
「……さあ。修理屋呼ぶしかないんじゃないんですか」
「マジかよ……」
家、崩壊。
■
「京夜さーん! 早くご飯―――――!! お腹すきました―――――!!」」
「ッ……じゃあ手伝えよ……」
一層騒がしさが増した家の中、俺はせっせと夕食を作っていた。
家の中にはライア、アーク、コハク、アルゼルト、シオン、……レイン。
いや、うん。
なんか知らないけど、行くあてがないそうでレインさんはこの家に住み着いています。
もう、ね。もう……いいや。
「おいレイン! 夕食の準備手伝え!」
「了解です!」
パタパタとレインは俺の横に立ち、夕食の準備を始める。
何とか修理が完了したこの家には、いつの間にかいろんな人達が住み着いています。はい。
まあ騒がしいけど、女の子多いしよしとしよう。実際あんまりよくないけど。
「えっと……目玉焼きと……後は……」
俺は冷蔵庫から食材を取り出しながら、夕食のメニューを考え始めた。
……そう、いつの間にか飯係が俺になってます。
いや、俺も最初は料理なんかできるワケねーだろとキレた。2年間ヒキニートをやっていた17歳の男に、なにをやらせようとしているのか。
しかし全力で拒否したものの、「作らないと京夜さんの悪い噂を広めます」と脅され、無言で麻酔弾を撃ち込もうとしてきたり。コ✕ン君の腕時計型麻✕銃じゃねえんだから。
そんなワケで、俺は朝昼晩みんなのご飯を作るべく働いています。
とは言えまあ料理の腕もやってる内に上達してきたし、いい経験にもなる。最近は俺の料理も好評だし。
みんなが食べてくれて喜んでくれたら嬉しいし、やって良かったなとも思う。
……ただそんなクッキングママみたいな事思ってもさ。朝昼晩全部の飯を俺に作らせるっていうのはどうよ? それどころか家事全般やらされている。
クエストと共に家事もこなしているので、それはそれはもう大変なワケで。いつか過労で死んじまうんじゃねーかってほどの忙しさだ。
「……ってお前! なにサラダにプリン混ぜようとしてんだ! バカか!?」
「い、いや! 美味しいですって!」
「アホ! 美味いと感じたらそれは味覚がイカレてる!」
俺はレインがいつの間にかサラダに入れようとしていたプリンを取り上げると、すぐさま冷蔵庫へしまった。
コイツがいると余計に遅くなる気がする。
「京夜お兄ちゃん! 目玉焼きにポン酢かけときましたよ!」
「おお、ありがと……ってポン酢ぅ!?」
やっとのことで出来上がった目玉焼きに、シオンがポン酢を大量にかけていた。
ああああああああもう……。
「……やっぱ嫌だ、もう……」
ニートに戻りたいと思う今日この頃。




