魔法を使えない魔法神
「さて。レイン、お前は何をしに来た?」
「あれ、何しに来たんでしたっけ」
「……。……『サンダー・レイン』」
言って、俺はレインに電気魔法を撃ちこんだ。
それと同時にレインは「ひゃあ!」と可愛らしい悲鳴を上げて、ブルブルと肩を震わせる。
家壊したのを許してもらっただけでもありがたいと思え。いやあ、俺ってなんて優しい男なんだろう。
「何しに来たって……。そりゃあ神様からキョウヤさんを天界に戻せとか言われたから来たんですけど……なんかめんどくさそうですしもういいです」
「おい、お前は家を壊しに来ただけなのか? もしそうなら、俺のムカムカファイナルサンダーブラストが炸裂するけど? この技は俺が日頃、不屈の精神で抑えていたストレスを最大限まで爆発させ、特に女性に厳しいグレート・オブ・ファイアーを撃ち込む技だ。悪いが手加減はしないぜ。なぜなら俺は日頃の圧力に耐えながらもけなげに生きる佐々木・京夜だからなあ! ちなみにこの技は」
「うわああああああああああああ!! 分かりました! 分かったからもうやめてください!」
ノリノリになって技の説明をする俺に、レインが泣きながら止めにかかって来た。
しぶしぶ俺は説明をやめ、レインへと向き直る。
てかこの娘予想してたよりずっと可愛いわ。なんだ、あのクソ天使達とは全然違うじゃん。
「……実は私、天使失格になっちゃったんです。頑張って働いてたと思うんですけど……」
「おい、そりゃどういうことだ。詳しく聞かせろ」
ちょっとだけしょんぼりするレインが可愛かったので、俺はついついその話に食って掛かった。
「な、なあ京夜。大丈夫なのか? こんなにレイン様と喋っているが……」
「大丈夫じゃね? だってコイツ魔法使えないらしいし、危険じゃないもん」
「……まあ、それはそうだが」
コイツは魔法が使えない。なので、危険じゃない。
魔法が使えない魔法神。なんてアホ臭いんだろう。
しかし、俺が返事を待つも返ってこないので、俺は別の話題に変えることにした。
「じゃあそれは置いておいて。過去にお前は世界の半分を亡ぼしたという説があるが、それは本当か?」
「うっ……。ほ、本当です」
「そうか」
そう言って俺は「プチ・サンダー」をレインの首筋辺りに放った。
今度は「ひゃっ……!」というこれまた可愛い悲鳴を上げて、レインはビクビクと震える。
いや、「本当です」じゃねえよ!?
「お前、なに世界半分も滅ぼしちゃってんの!? ねえ! 何があったの!? 頭おかしいのか!?」
「ひゃああ! その、その! 新しい魔法を作ってるときに、最強魔法の創造がいきなり成功しちゃって、世界が半分なくなっちゃったんですよ!! うう……」
「何!? どんだけ威力高い魔法撃ち込んでんだ!!」
「ごめんなさあい……」
レインは素直に謝ると、酷く落ち込んでしまった。
まあ俺はその時この世界にいなかったワケだが。てか、どんだけ威力高いんだよ。
「つーかその魔法って今でも使えんのか?」
「使えるんですけど、消費魔力ポイントも高いし自殺行為なので普通やりません。この魔法で私は死んだんです」
「バーカ! バーカ!」
俺は正直な感想をレインに言うと、大きくため息を吐いた。
もー……ほんっとバカ! もうバカすぎて笑えてくるわ……。
自分の使った魔法で死ぬとかさあ。バカとしか言いようがない。
「てかじゃあなんでそんな魔力ポイント消費高い魔法使えたんだよ。魔力ポイントは使い果してたんじゃなかったのか?」
「……この魔法は、ある禁断の薬を飲んで魔力ポイントを最大にして使った魔法です。その後、私はその薬が大好きになっちゃって。今でも自分で作っては飲んでるですよ!」
「……はあ」
なんでもアリだな、もう。
麻薬中毒者に近いじゃねえか。もういっそのことマリファナでも渡してやればいいのかも。
俺の気持ちとは裏腹に、レインが清々しく。
「そんなワケで、私は魔法が使えません!」
「「「「…………」」」」
「ちょっと――――――――!! 何か喋ってくださいよおおおお―――――――――――――!!」
俺たち全員、沈黙する他なかった。




