レイン様降臨
「お前ら、いい加減落ち着けって。もうすぐ来るんだから」
昼過ぎ。
俺はテレビを見ながらのんびりと過ごしていたのだが……。
「落ち着けるワケないじゃないですか……。相手は魔法神ですよ!? 何してくるか分かりませんよ!?」
「いや大丈夫だって。俺が責任取るから」
部屋でビクビクしている3人をよそに、俺は再びテレビへと視線を向けた。
やってる内容はニュースが殆どだ。面白そうなのがない。
俺はぐでーっとソファーに寝っ転がりながら、3人に言う。
「大体、魔法神っつったっていきなり魔法かましてくるようなぶっ飛んだ奴じゃないだろ? 話せばなんとかなる」
「なんで京夜はいつもそう冷静でいられるんだ……。怖くて仕方ないのだが……」
冷静、ねえ。俺はあいにく魔法神を知らないもんでな。
まあ、まだ時間はある。それまでゆっくりしていればいい。
……レインだっけ。声からして可愛い娘だと判断したが、ブスだったらやだなあ。俺泣いちゃう。
よし、ブスだったら速攻お引き取り願おう。我ながら最低な奴だとは思うが、構わないさ。だって嫌だもん。
俺は楽しいことは全力で楽しみ、嫌な事は全力で拒否する男。人生を楽しむ男。
フッ――――――とドヤ顔になりながら、俺は紅茶を啜っていると――――――
「きゃああああああああああああああああ!!! 失敗しちゃったああああああああああああ!!」
「……えっ」
外から、とんでもなくデカい悲鳴が聞こえてきた。瞬間、俺はフリーズする。
間違いない、これはレインの声だ。でも早くね……?
俺が若干戸惑いながらも、再び紅茶を口に含むと――――――――――
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「「「「!?」」」」
今度は悲鳴が真上から聞こえてきた。
ヤバイ、嫌な予感しかしない。
しかし俺がそう思った時には―――――――――もう遅かった。
レインの悲鳴はだんだんと大きくなっていき――――――――――――
「「「「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!??」」」」
天井・家具をもぶっ壊して、レイン様は降臨してきた。
……。
いやいやいやいや、ちょっと待て。待ちやがれ。
「うう……失敗しちゃいました……。」
「おいお前! なんてことしてくれちゃってんの!? まだこの家完成してから三日しか経ってないんですけど!? どうしてくれんだよ!?」
「え!? あわわわわっ! どうしましょう!」
そう言って少女―――――――レインはあわあわと泣きそうな顔で喚き始めた。
いや、とっても可愛い。白髪長髪で、とっても可愛らしいんだが―――――――。
……流石にこの登場の仕方はねえだろ。
「そうだお前、魔法で直せよ! 魔法神なんだから修復的な魔法ぐらい使えんだろ!?」
「無理ですよお! 私魔法使えないんですよ……!!」
「は!?」
俺は咄嗟に3人の方を振り返った。そして同時に言う。
「なあ、コイツ本当に魔法使えないのか? バカなのか!?」
「うん、レイン様は魔法の創造者だけど、魔法は使えないよ。……なんかあまりにも魔法を使い過ぎて魔力ポイントが復活しない体になっちゃったっんだって。言い伝えではだけど」
「なっ……」
俺は語気を荒くしながら、崩壊した天井と家具を見た。
ふっ……ざけんなあああああああああああああああああああああああああああ!!
オイオイオイ、これどうすんだよ! どうすればいいんだよ!?
本来なら今日はゆっくりのんびり過ごすハズだったのにッ……もうヤダああああああああああああああああああ!!!
しかしそんな絶望的な心境に浸っている俺に、レインがおずおずとデカい袋を差し出してきた。
「あの……昨日の約束で500万ゼニー持って来たので……。再建に役立ててください……」
「……」
もう、いいや。なんでも。




