いちにちがおわった! セーブしますか?
「…………なんだココ」
なんかそこは、言ってしまえばボロイ旅館みたいな所だった。
屋根の部分なんか所々剥がれてきていて、地震でも起こったらどうするのかと不安になる。
ちゃんと営業しているのだろうか。
「なあ、ホントにここに泊まるのか? 他の場所探さないか?」
「むむっ。何を言うんだきょーや! ここ以外もう泊まれる場所なんてないぞ」
えー、マジか。
確かに野宿よりはマシかもしれないが、これはこれでいろいろと心配だ。
かと言ってぼーっと立ち尽くしているわけにもいかない。俺はとりあえず玄関の扉を開けてみた。
中は人の気配がなく、明かりがついていない。
「すみませーん! 誰かいますかー!」
俺は声を張り上げて叫んでみる。
すると向かいの扉から一人の年配の女将さんっぽい人が出て来て、こちらの方へ歩いて来てくれた。
「あらまあ、ハンターの方たちですか? これはこれはどうも……って、ケガをしてらっしゃるじゃないですか! 急いで手当てを……」
急いで戻りに行く女将さんを引き止めて、俺は訊ねた。
「あの、まだ空いてる部屋ってありますか? ここに泊まりたいんですが……」
俺が訪ねると、女将さんは複雑な表情を見せた。
「空いていることには空いているのですが、部屋が一部屋しかないんですよねえ。それでもよろしいというのなら、部屋は用意できますが……」
え、マジかよ。
全然人が居ないと思ったら、既に泊まってる人たちが居たとは。
だが他に選択肢はないので、俺は「一部屋でいいのでお願いします」と答える。
「承知しました。それでは、部屋はこちらの方になります。どうぞごゆっくりしていてください。後で救急箱を持っていきますので」
俺たちが案内されたのは、先ほど女将さんが居た部屋だった。
意外と部屋の中は綺麗だったので、結構テンション上がる。
「うおお、結構きれいな部屋だな、なあ二人とm……」
そこまで言いかけて、俺は喋るのをやめた。
先ほど女将さんが用意していてくれたと思われる布団に、思いっきり二人はダイブをかましていたのだ。
「わーお、布団ふわふわ! きょーやもやってみなよ!」
「気持ちいいですよ、京夜さん!」
子どもか、コイツらは。
しかしその姿を見てると結構気持ちよさそうだったので、俺もやってみることにした。
俺は装備を脱ぎ捨て、豪快に布団に飛び込んでいく。
「うおっ、本当だ! 結構気持ちいいな!」
ふかふかの毛布が俺の疲れを癒していく。
あー、マジで今日は疲れたなあ……転生して、悪魔になって、二匹もモンスターを討伐して…………
昨日までニートだった俺にとっては、考えられないことばかりである。
「あらあら、みなさん今日は疲れていらっしゃるのですね。どうぞごゆっくり」
見ると、救急箱を持った先ほどの女将さんが、俺たちの部屋に来ていた。
先ほどダイブした光景を見られていたと思うと、結構恥ずかしい。
俺は女将さんに救急テープを貼ってもらいながら、疑問だったことを訊いてみることにした。
「あの、この街って、宿泊施設があまりないんですか? 最近この街に来たばかりで、よく分からなくて……」
さりげない嘘をつきながら、俺は訪ねる。
すると女将さんは困ったような表情を見せ、俺に説明してくれた。
「それがですねえ。最近この街にモンスターの襲撃があったんです。なんでも魔物モンスターという種族の仕業だそうで」
「え…………」
俺は話を聞いて、驚愕した。
この街にモンスターの襲撃があるだって? それって結構ヤバいやつじゃん。
もしかするとライアが言っていた「ボス」というのも関与しているのだろうか。
俺はテープを巻いてくれた女将さんにお礼を言うと、再び訊いてみる。
「それって大丈夫だったんですか? 死人が出たりとか……」
「ええ、幸い死人は出なかったようですが、多くの怪我人が出ました。街のハンターたち全員が立ち向かったようですが、やられてしまったようで……」
オイオイオイ。
マジか、マジかよ。
この街結構ヤバいやつじゃん。そのうち死人も出るぞ。
しかしそんな俺の気持ちとは裏腹に、アークが自信満々に答える。
「だいじょーぶですよ、女将さん! 私たちがそんなやつら、倒しちゃいますから!」
「あらあら、それは頼もしいことです。ハンターのお仕事の方も、頑張ってくださいね。それでは、今日は私はこれで失礼させていただきます」
俺は女将さんに再び礼を言うと、アークに訊ねた。
「なあ、決めといて言うのもなんだが、やっぱり魔物討伐ってハードル高すぎないか? もっと別のモンスターを…………」
「何言ってるのきょーや! こういったモンスターたちに立ち向かうことが成長の一歩へと繋がるんだよ! ね、ライア!」
「うん、きっと私たちならできますよ。京夜さんもいるんですから!」
「……………………」
頼りにされているのは大変喜ばしいことなんだが、もう少し計画的にも考えてほしい。
俺がそんなことを考えていると、ふと放送みたいなものがかかっていることに気が付いた。
まずスピーカーがついていたことに驚きだが、落ち着いてその放送の内容を聞き取ってみる。
『銭湯の閉鎖時間が、残り時間五分となっております! なお、時間の延長はできないため、まだ入っていないという方は大急ぎでお入りください!』
…………えっ。
マジですか。もう閉鎖しちゃうんですか。
俺たちは慌てて立ち上がり、風呂場へと向かうのだった。
読んでいただきありがとうございます!
さて、今回のお話は、ボロイ旅館に泊まるということで書いてみました。
魔物モンスターたちの襲撃に、京夜くんたちはどう対処していくんでしょうか。
まだ考え中です。 感想や評価などあったらしてくれると嬉しいです!
それでは、引き続きよろしくお願いします!