空の心地よさ
「……はあ。んで? 私がこの子たちをどうにかすればいいワケ?」
「うん! お母さんならなんとかできるかなーって」
俺たちは最後の力を振り絞って、お母さん―――――アルゼルトの元へやって来ていた。
ハッキリ言ってもうこれ以上は歩けない。足が機能しない。
「すまん、アルゼルト。悪いんだがもう足が動かない」
「全く、アナタ私に助けられるのこれで2回目よね……。感謝しなさい。私の摩の力で村まで飛ばせてあげるわ」
「は? どういうことだ……」
そこまで言って、俺は黙った。
ふわりと俺の体は宙に浮き、どんどんと上昇していく。
え? え?
「ちょっとなんですかいコレ。まさかこのまま飛んでいく気?」
「ええ、そうだけれども。それっ!」
そう言うとアルゼルトは、俺以外の3人を宙に浮かせた。
スゲエ、さすがはモンスター。人間とは全く持っている能力が違う。
「よーし、じゃあ急ごう京夜お兄ちゃん! 早く行かないと!」
バサッという音がしたかと思うと、シオンの声が上から聞こえていることに俺は気が付いた。
……ほほう、中々いい翼だな。てか俺の翼みたいに禍々しさがない。
まずシオンの翼と俺の翼じゃ、色が違うもん。俺のは暗黒のいかにも摩の翼って感じだったが、シオンにはそれがない。
まあそんなもんだよな。可愛い娘には可愛い翼が似合ってるもんな。
ちょっとだけ虚しさを覚えながら、俺は急に込み上げてきた気持ち悪さに顔をしかめた。
「うっ……これ大丈夫なんですかね。体が持たない気が……」
「……これは試練だ、耐えるしかない」
「よーし、がんばろー!」
不安思考1人、ポジティブ思考1人、バカ1人。
職業的にはバランスがいいと思っていたが、こういった面ではやはりバラバラだ。もう何言ったって直るワケじゃないんだろうけど。
うえっ……それにしても吐き気が……。
もうホント勘弁してくれ。俺はこの世界に来てから何度吐きそうになったことか。
「ア、アルゼルト……。もう出発してくれないか。この状態だと非常に……」
「……はいはい。分かったわよ。————————それじゃあ、出発!」
アルゼルトがそう言うと、俺たちの体は平行になり、一気にスピードマックスで動き始めた。
どんどん体は速度を増していき、雲がぐんぐんと通り過ぎて行く。
……あ、もうコレダメなヤツだ。
空気の流れの心地よさと同時に、俺は意識を失っていった。
明日は0時に出してみます。短いですが、ご了承ください(´・ω・)




