見つかった! どうする京夜!
「……シオン。なぜお前がここに居るんだ?」
「え? うーん……お散歩しに来た!」
「……そっか……」
シオンはどこか誇らしげに言いながら、俺たちの方を見た。
お散歩か……一応この子もモンスターなんだし、遠ざけておいた方がいいのかもしれない。
「シオン、逃げろ。今アルゼ村のハンター達が魔物モンスター狩りをやってるから」
「え? そうなの?」
「ああ、普通にハンター達がうじゃうじゃいる」
この子を襲わせるワケにはいかない。なぜって? そりゃあレディーだからさ。
それに、人の姿をしたモンスターを殺すのはいい気がしない。俺なら絶対殺さないね。
俺はモンスターとの平和条約を望んでいる男だ。大体、人を襲わないモンスターを殺す方がおかしいと思う。
俺がそんな事を考えていると、コハクが一言。
「マズイな。ハンター達が周りに集まって来ている」
「……え? お前ハンターの位置も分かるの?」
「ああ、一応はな。……っ! マズイ! 隠れるぞ!」
コハクは俺たちを近くの繁みへと連れていくと、息を殺し始めた。
ええ? 俺ハンターの位置なんか感じ取れないんだけど。別の能力スキルなのかな。
しかしコハクの表情を見る限り嘘ではないと思うので、俺もそれに合わせて息を止める。何分こうしていればいいんだか。
しばらくそうしていると、向こうの方からハンター達が話しているのが聞こえてきた。
「オイオイ、居ないじゃねえか。こっちから反応があったんじゃねえのか?」
「うーん……そのハズなんだけど。もうちょっと探してみる?」
……ん?
ちょっと待て。なんでコイツらこっちから反応があったって分かるんだ。
『……あ』
小さく声を上げながら、嫌な予感が俺の脳裏をよぎる。
信じたくはないが、多分コイツらは上級者のハンターだろう。「敵察知ができる魔法使い」の情報もあったし、何より声からして明らかに上級者っぽいのだ。
特に男の声。桃太郎の鬼のボス役並みに声が怖い。
桃から出て来ていきなりこの声が聞こえてきたら、どんな赤ちゃんでも泣いちゃうよ。
『どうします? このまま逃げますか?』
『いや、バレんだろ。ヤバいどうしよう』
『きょ、京夜さん……』
俺たちが小声で話していると、困ったような表情でシオンが手を上げてきた。
『どうした?』
『あの……トイレ行きたいです』
『はああ!? 何でよりにもよって今……! 取りあえず我慢しろ!』
いやマジでそれどころじゃねえ。そうこうしてる間にもハンター達の声が大きくなってきてるもん。
くそっ、こうなりゃライアの言う通り、一か八か逃げるか。
俺が決心しながら、片足を前に出すと。
『きょ、京夜……くしゃみが出そうなんだが……』
『は?』
『いや、くしゃみが……』
『ふざけんな。死んでも抑えろ』
俺はコハクの口を両手で覆いながら、ゆっくりとその場を後にしようとした。
しかし。
『うわっ!? 蛇……!?』
突如地面に現れた謎の蛇によって、俺はついついコハクの口から手を放してしまった。
……ヤバい。これはヤバい。
『きょーや! コハクが……』
『へくちっ!!』
『『『『あっ!』』』』
気付いた時には、もう遅かった。
可愛らしいくしゃみを出しながら、コハクはスッキリとした表情で俺に笑いかける。
が、俺にとってはそれはデスタイム開始の宣告にしか見えなかった。
「見つけたぞ最後の一匹―――――――――!!!」
「「「「「わああああああああああああああああああああああああっ!!」」」」」
ホント、ニートに帰りたい。




