クエスト出発……じゃない!?
「あ、お帰りなさい二人とも。どうでした?」
「……ああ、とってもいい勉強ができたよ」
俺たちはゼーゼーと息を切らしながら、周りの状況を伺った。
見ると、やはりもう午後の討伐が開始されるらしい。ハンター達が立ち上がって、準備運動を始めている。
「てかさ、もっといろんな能力スキル覚えたかったんだけど。まだ魔法も2種類しか俺使えないし」
「まあ、時間も時間だし。きょーやには、村に帰ったらまた教えてあげるよ」
そう言ってアークはニコリと可愛らしい笑顔を見せた。
……嫌な予感しかしない。俺は一体どんなヘルゲートを通ってしまったのだろう。いや、実際に1回通ってるんだけど。
不安で仕方ない。ガーブに教えてもらう方が無難かもしれないな。
さっきの習得は上手くいったが、これからも優ーしくアークが教えてくれるとも限らないし。
「……きょーや。言っておくけど、私は何もしないよ? 伝説の魔法使いだもん」
「おお、よく俺の考えてることが分かったな。褒めてやるよ。自称伝説魔法使い?」
「うわあああああああああああ!!」
俺に自称伝説の魔法使いを強調されたのが恥ずかしかったのか、アークは魔法杖の柄で俺の頭を殴って来た。痛いっす。殴るは反則っす。
てかやっぱり伝説の魔法使いは自称らしい。バレバレなんだよ、このバカの隠し事は。
ふう、と俺は息を吐いて立ち上がると、コハクが心配そうな顔で話しかけてきた。
「なあ、もし仮に残り1匹の魔物モンスターと遭遇したらどうするんだ? さっきのバッファローは運よく勝てたが、今度はそうもいかないんじゃないのか?」
「ふっ……大丈夫だ。何せ俺にはさっき覚えた敵察知のスキルがある。レベルが高かったおかげか、大きいモンスターの情報でも上手く特定できるみたいだしな」
俺は自慢げに言いながら、自分のハンターカードをコハクに見せつけた。
そこには、しっかりと「レベル64」と、「敵察知スキル→習得済み」の表記がされてある。
「これを上手く使えば、多少のピンチは乗り越えられるだろ。魔物モンスターだってそこまで動きが速いってわけじゃないだろ? バッファローは別として」
「……まあな。しかし、京夜はすごいな。レベル64なんて。私も見習わなければ」
コハクが感心するような表情で俺に言ってきた。いやあ、そう言われるとなんか照れるな。
しかし、レベル64であれだけの大きさのモンスターと距離を特定できたという事は……コハクももう少しで俺と同じぐらいのレベルにはなるんじゃないだろうか。
そんな俺の考えを察したのか、コハクは。
「ああ、私は本業が魔法使いじゃないのでスキルの規模は小さいんだ。でも、京夜は魔法使いの職業もやっているから、大きめのモンスターでも察知できるんだよ」
「へー……。あれ、じゃあ」
俺はチラリとアークの方を見た。
アークは気まずそうに、窓に映っている外の風景を見ている。
……。
「なんで俺より能力スキルの規模が小さいんですか? 伝説の魔法使いアークさん」
「ああああああああああああああああああああああああッ!!」
アークは泣きながら俺に掴みかかって来た。
ドS京夜、ここに降臨。




