六
日が高いうちに帰りの電車に乗った。
光の角度のおかげか、雪景色は行きの時ほどまぶしくなかった。
乗り換えた電車が走り始めたときには日が夕暮れの色を帯びていて、あっという間に沈んでしまった。
水上は今日、古泉に告白すると決めていた。決めていたが、時が近付くにつれて迷いも出てきた。出かけた先で断られたら帰りが気まずくなるので最寄り駅に着いてから伝えようと思っている。
暗い車窓の外は雪がだいぶ減っている。
水上はこの後のことが気に掛かって口数が少なく、古泉もほとんどしゃべらない。静かだなと思って横を見たら古泉は眠っていた。
やがて、眠っている古泉が水上の肩に寄りかかってきた。このままでいるのは何となくずるい気もしたが、起こさなかった。
肩にかかる重みを感じながら正面の暗い窓に映る姿を見て、あらためて彼女のことが好きだと思った。それを伝えようと、決めた。
なるべく長くこうしていたいと思ったので、降りる駅の直前で古泉を起こした。
「んー。着いたー?」
「あと一分以内には着くよ」
「ごめんね、私だけ寝ちゃって」
「いや、いいよ。俺も少し寝てたし」
「ありがとう」
「……どういたしまして」
できるだけ素っ気なくこたえた。
電車から降りて長い連絡通路を反対側の出口まで歩いた。
「少し、遠回りしてもいいか? 大事な話があるんだ」
「うん」
間を置かずに古泉はこたえた。
駅前から伸びる参道を、古泉が水上から半歩下がるかたちで歩いた。雪は、道の端に残っているだけだった。神社の手前の横断歩道で信号待ちをしているとき、左手に大きな楠が見えた。
鳥居の前の広場に来た。二つの大きな常夜灯に明かりが灯っている。
常夜灯のそばで水上は立ち止まった。古泉も足を止めた。
水上が古泉の方を向いて口を開こうとしたとき、
「先に、私の話を聞いてほしい」
と古泉が言った。彼女の横顔を、道を走る車のライトが照らした。
道の反対側にある停留所にバスが止まった。




