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テノリドリーム

「中トロ」の握りと付き合ってた頃の話

作者: 丸ノ内レン

これは僕が中学生だったときの話だ。

ある日、今まであまり喋ったことのないクラスの女子数人が僕に話しかけてきた。

「イシカワくんってさぁ、最近好きな女の子とかいるの?」

「うーん、いや今は特にいないけど」

実は僕には当時好きな女の子がいた。

しかし、その場ではそのことをとても話せなかった。

「もしも、もしもだけど「中トロ」がイシカワ君のこと好きだったらどう?」

「うーん、あまり喋ったことないからなぁ」

その次の日の昼休み。

僕は、昨日話しかけられた女子たちに「図工室」に来るように言われた。

するとそこには女子数人、そしてその真ん中に中トロの握りがいた。

中トロからは何も言わず、周りの女子から中トロと付き合うかどうか聞かれた。

僕は、当時「好きだった女の子」のことが少し頭によぎったが、その場で付き合うことを了承した。

僕に初めての彼女ができた。

今、思い返して「彼氏彼女」らしいことをしたといえば、毎日、学校の帰りに「中トロ」を自転車の荷台に乗せて彼女の家まで送ったこと、そしてデートにも何回か行ったことだ。

初めてのデートは映画館だった。

普段、制服姿の中トロしか見たことなかったので、なんだか少しドキドキしたのを覚えている。

映画の内容も、フードコートで何を食べたのかも覚えていないが、ずっと緊張していて、会話も少なかったことはよく覚えている。

付き合いだして何ヶ月か経つと、「クラスでどんなに情報に疎いやつでも僕たちが付き合ってることは知っている」というようになった。

そうなると、からかい好きのクラスメイトから相合傘の中に自分と中トロの名前を書かれたり、

付き合う前にはよく遊んでいた友達も彼女に気を使ってあまり遊んでくれなくなったりした。

中トロのことは嫌いではなかったけれど、その頃から僕は「中トロと別れようかな」という気持ちが強くなっていた。

そんな日々が続いたある日のこと、登校してきた中トロの見た目が少し変わっていた。

少し炙って、中トロの炙りになっていたのだ。

別れたいという気持ちが強かった時期だったからか、僕は彼女の見た目が変ったことに関して悪くは思ってはいなかったのに、そのことを理由にして「別れたい」と彼女に告げた。

「イシカワくんが別れたいなら、私はそれでいいよ」

彼女は、少し目に涙を浮かべながら、そう言った 。

別れたことに後悔や未練はないが、寿司屋で「中トロ」という木札を見るたびに、僕は彼女のことを思い出してしまう。

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