第78話 実力試験で学校に行ってみると
今日ボクは、実力試験を受けるために、1年ぶりに麗慶学園高校に登校することになった。体感時間的には2年半ぶりだ。懐かしいような気恥かしいような・・・転校してまた前の学校に戻ることになるとしたら、こんな気分なのだろうか。
まだ、ボクの制服は仕立て直しに出しているので学校に着て行くことはできない。
ちなみに、うちの学校の詰め襟はミッドナイトブルーの生地に銀ボタンのいっぱい付いたヨーロッパの国の昔の軍服がベースになっている。小学校から大学までの一貫教育なのだが、制服があるのはもちろん高校まで。区別がつくように小学校は6つボタン、中学校は7つボタン、高校は8つボタンとなっている。
ボクが高校から編入しようと思ったのには、病弱な弟のハヤテの傍についていてやりたいっていうこともあったけど、8つボタンもちょっとかっこいいと思ったのだ。
夏休みだから私服でいいと思ったのだが、家族全員の強いプッシュと懇願と、姉貴の「学校に試験受けに行くのなら制服で登校するのが当たり前でしょ」という決めつけで、仕方なく姉貴がこの3月卒業するまで着ていた高校女子の制服を着させられた。
姉貴の身長は159cm、ボクは168cmだから当然サイズは少し小さめだ。だからスカートの丈がミニになってしまった。
「・・・なんだか、ツンツルテンのような気がする」
ボクは鏡に映った自分の姿を見てつぶやいた。
「そうねぇ、でもアラシはウェストが細いし、肩や腕が華奢だから丈が短い方が見栄えがするわ!」
「・・・なんか、アラシちゃんの方が私より似合ってる。そうかあ、ミニにするとこの制服もこんなに格好いいんだなぁ」
「アラシ、あなたが王立女学院で“ミニスカート・プリンセス”って呼ばれていた意味が分かってきたわ!」
「あんた、元男のくせにどうしてそんなに足の形がいいの? 膝小僧の可愛いらしさったらないわ!」
「お・と・こ! 元は余計」
こんなことを言うと姉貴が怒るから言わないけれど、白い半袖は胸のところがキツくてパツンパツンな感じなのだ。薄手の夏服だけに男目線で見るとちょっとエロい、かも。
母さんが、甲斐甲斐しくブラッシングしてくれる。ボクの前髪をシンプルな白いカチューシャで押さえつけて後ろ髪を整えると、銀色のサテンのリボンをセーラー服の襟に通して締めてくれた。
「さあ、完成。あら~なんて可愛いのかしらぁ! お母さんグッと来ちゃった。それにしてもお上品だこと!」
「アラシちゃん、あんた、確かにお姫様やっていただけのことはあるわね・・・」
鏡を見ると、淑やかな女子高生ができあがっていた。
一度も着たこともないセーラー服を簡単に着こなせてしまう自分が面映ゆい。
天気もいいことだし学校まで歩いて行こうかと思ったけど、玄関で今も張っているマスコミに追い回されるのと、まだ足もとが覚つかない上にどうも日差しに弱くなってしまったので、母さんに車で送ってもらうことにした。
例によって玄関を出ると、
「出たぞ! カメラまわせ」
ボクはお化けなんかじゃないって。
「“こちらA君の自宅前。A君がたったいま玄関から出てき来ました。な、なんと・・・セーラー服姿です。いや、これはまた一段と・・・美少女にセーラー服、似合ってますねえ”」
とリポーターがうるさい。
振り切って学校に向かった。追走してくるバイクから、カメラマンが身を乗り出して窓越しにボクを撮影しようとする。
こういうのをパパラッチって言うのかなあ。女になって神隠しから帰って来た男子高校生って、そんなに面白いネタなんだろうか。
≪グワワワワワッ ジャジャーッ キキキーーーーーーーーーッ≫
スタントマンもどきのカーアクションで追手を振り切って高校の門に滑り込むと、直ぐに門が閉じられた。母さんもなかなかやるじゃん。
さすがに校門から先にはマスコミも入ってくることができないので、ボクたちの帰りを待ちうけようと場所取りが始まった。
遅れてやってきた中継車や取材車も衛星リンク用のパラボラやアンテナを屋根の上に伸ばしだし、カメラマン用の脚立を設置したりと結構準備に忙しそうだ。
あれは何に使うもんだろう・・・後ろを振り返りながらそんなことを思っていると、
「アラシ、試験時間に遅れちゃうわよ」
「あ・・・」
「あんた、やっぱり男の子なのねぇ。自動車とか機械もんに興味津々だもの」
母さんに注意されてしまった。
「じゃあ、試験が終わった頃に迎えに来るわね。決してひとりでお家に帰ろうなんて思っちゃダメよ」
「うん、分かった」
駐車場で母さんと分かれて、教員室に向かう。
ベンチや校舎のたたずまいが少し違っている気がする。そうか、背が高くなったから記憶と違って見えるんだ・・・。
夏休みの学校って、日差しは強くて暑いけれど、学生が誰もいないから静かでなんだか公園の中を歩いているような感じだ。上空を見上げれば真っ青な夏空に太陽が輝いている・・・あ、太陽がひとつしかない・・・ボクは、改めて地球に返ってきたことを実感した。
「失礼します」
職員室の前で声を掛けながら引き戸を開けると、驚いたことに先生方がいっぱいいた。
夏休みだというのにボクの試験の為に出てきてくれたのだと感激した。だけど・・・どうもそればかりじゃないみたいだ。
だって1~2年生の担当じゃない先生方や教育実習生もいる様子で、明らかに興味津々という目でボクを見ていた。っていうか、釘付けで目が放せなくなってしまったように皆固まってしまっている。
「あの・・・ボク、キリュウです。実力試験を受けに来たんですけど・・・」
はっと我に返ったのは教頭が一番早かった。
「あ、失礼しつれい。そうか、キリュウ君もセーラー服で通うことで納得したんだ。とても似合っていますよ。いやあよかった、よかった」
職員室中から安堵のため息が漏れる。
「違います! ボクの制服はいま直してもらっているところなので、今日は試験を受けるために卒業した姉のお古を着させられただけです」
「あ、そうなの?」
と、とても残念そう。職員室中から落胆のため息が漏れた。
「まあ、残念至極ではありますが、今日はキリュウ君が2年生として復帰できるかどうかの実力試験が第一の目的でありますから、まずはそちらの件を進めましょう」
「はい。よろしくお願いします」
「出題は、先生方にお願いしてこの1年間行われた試験問題の中から当然キリュウ君が学んでいるべきことを選んでいただきました。全180問持ち時間は180分、面談室で受験してください」
「1問1分か・・・厳しいなあ。分かりました。全力で取り組んでみます」
「よろしい。では、頑張ってください」
試験用紙の入った袋を抱えた担任の岡崎と面談室に向かおうとすると、教頭が咳払いを一つして言い出した。
「コホッ。それはそうとして、どんなもんでしょう。実力試験が終わった後、少し時間をもらえませんか?」
「その後の予定はありませんけど・・・なんでしょう?」
「キリュウ君の写真を撮らせてもらえないでしょうか?」
「ボクの写真ですか? な、なんでですか?」
「いや、キリュウ君というよりは、そのセーラー服姿を来年の受験案内に是非載せたいと思いましてね。少子化で厳しい折、うちの制服に憧れる受験者が増えてくれればわが校としても大いに助かるんですよ」
「女子に頼めばいいじゃないですか!」
「いや、今は夏休み中だし原稿の締切り間際で・・・ひとつ頼みますよ」
「いいんですか? 男が女装した写真なんかを学校の受験パンフレットに載せても」
ボクはポイント高めのつっこみ入れた。
「校則より少しスカートの丈が短めだけど、ここまで着こなした生徒はいませんよ。キリュウさん、あなたが着ると清楚でとても品がいいわね」
女子からクソババアと陰口を叩かれている家庭科で生活指導の三上が言った。それを聞いて部屋中うんうんと頷いてしまっている。
「いや、三上先生のご託宣が出たのであればスカートの丈は問題ないでしょう! 早速、校則の方を改めないといけませんな」
「え? 校則を変えちゃうんですか?」
「そういうことです、キリュウ君。少子化対策、少子化対策、協力してくれんですかな?」
2年生になれるかどうかの試験前でもあるし、来年のパンフに載せておいて落とす訳にもいかないだろうと計算して、ボクは協力することにした。
試験が終わって教室から出てくると、早速中庭に引っ張り出された。
すでにカメラマンがスタンバイしていて、うちの学校のビューポイントであるケヤキの前でポーズをとるように言われる。
ファインダーを覗いているのは、パンフレット編集を請け負った広告代理店の契約カメラマンなのか、いかにも業界人っぽい奴だ。
「それじゃ行こうか。いいね、いいね~え。そのスマイルとってもいいよ」
とか言い出した。3時間に及んだ試験疲れもあるし、次第に不愉快になってきたので眉間にしわ寄せて
「ボクは、モデルじゃない」
と言って睨みつけてやった。
「OK、OK。了解だ。モデルの気持ちを乗せるのも俺たちの仕事だからね。今日は気むずかしい気分なのかな? ボクっ子ちゃん。じゃあ~俺とゲームしようよ。これから1分間笑わなかったら君の勝ち。そのときはいさぎよく降参だ。もし笑ったら俺の勝ち。その時は言うとおりにポーズしてもらうからね。よ~いスタート!」
と言って再びパシャパシャとシャッターを切りだした。
≪ボワワワ~~~ン≫
と思ったら、いきなり大きなフラッシュバルブがたかれた。ボクのまわりまで煙もうもう、なんにも見えなくなってしまった。写真撮影なのに目の前にあるものすら見えない煙。緊張が一気にゆるんでしまった。
「あははは、これじゃ撮影になんないじゃん」
「笑ったね?」
「あ! ヤラレタ・・・」
その後、約束だからボクは奴の言いなりになるしかなかった。
「それじゃ、顔を少し傾けて『いいですよね? セ・ン・パ・イ?』って感じで甘えんぼさんの視線上目遣い行ってみようか」
とか
「『先輩ったらひど~い』って嬉し恥ずかし、唇を舌先でなめてから少しとがらせてみよっか」
とか
「いいね、いいね~え! 君、モデルの才能あるよ! ところで君、ゴルフ部なんだって? じゃあさあ、クラブを構えたところをポーズして見せてくれるかい? この格好でって? うん、その格好だからいいんだよ。よしよし! そう、その美しい胸の膨らみを両腕で挟み込んで~え!」
とか
ボクとしては一世一代、ベストスマイル、ベストポーズのフォトジェニックショットを撮影されてしまった。ああ恥ずかしい。先生方が感に堪えないといった表情で撮影現場を見学していたのは当然かも。
「あれが男子だなんてとても信じられませんな」
「いやあ、そんじょそこらの女子なんか敵いっこありませんよ」
「しかし、彼は噂どおり宇宙人の手で女体に改造されてしまっているんでしょうか?」
「そこのところは病院も患者の個人情報として固く口を閉ざしますからな」
「うっ・・・・」
ボクは、急な腹痛に襲われるとお腹を抱えてしゃがみこんでしまった。
「おい? どうした? 今のポーズがキツかったのかい?」
「お、お腹が・・・痛い・・・ううっ」
異変に気づいた先生たちが直ぐに駆けよって来た。
「大丈夫か、キリュウ?」
「キリュウ君! お腹が痛いの?」
「は、はい・・・ううっ」
「とにかく保健室まで行きましょう。先生お願いできますか?」
保健室の水沢先生の指示で、担任の岡崎がさあっと膝と背中に手を差し入れてボクを抱え上げようとした。
「だ、だめ・・・」
ボクは力ない声だけど必死に叫ぶ。
「なんだ? キリュウ、何がダメなんだ?」
「いやだ・・・お姫様抱っこは・・・それだけは・・・やめて」
「なにをわがまま言っているの! 今は一刻も早くベッドに横になる方が優先よ! 岡崎先生、急ぎましょう!」
「はい、水沢先生。いやあ、それにしても華奢なんだなあ、キリュウは」
と軽々と持ち上げられてしまった。
女の子だったら嬉し恥ずかしドキドキもので笑顔を浮かべるんだろうけど、男にお姫様抱っこされる生身の男の気持ちは最悪だ。惑星ハテロマからやっと地球に帰ったというのに、またしても男だと知っていながら女扱いされてしまったのだ。ボクは、ここでもまた男としてのプライドをズタズタにされてしまった。恥ずかしいのと痛いのとで涙が滲んでくる。
「ここでいいですか?」
「はい。そこで結構です」
担任の岡崎は、壊れ物を扱うみたいにそっとボクをベッドに下す。
「じゃあ、岡崎先生はお戻りになってください」
「え? ここにいちゃあいけませんか? 担任として付き添っていようと思ったのですが」
「だめです。キリュウ君は、女の子の身体なんですよ?」
「・・・そう・・・ですよね、やっぱり」
岡崎が保健室を出て行くのを確認して、水沢はボクのベッドの周囲にカーテンを巡らした。
「さてと。キリュウ君、君の身体を締め付けているものを緩めるわね」
と言いいながら手早く襟元を留めているリボンを解く。身頃の横ファスナーを下すと
「はい、手をあげてねぇ」
と言いながらセーラー服の上半分を脱がした。続いてウエストのホックを外すと足元からスカートを取り去った。
「これでずい分楽になったんじゃないかしら。あら? これ・・・血じゃないの!」
びっくりしてボクは自分の下半身を見る。ショーツが赤く滲んで、太腿に血の流れた跡が一筋ついていた。ボクは、あまりのショックに痛さも忘れてガタガタふるえ出してしまった。
「キリュウ君・・・もしかして君の身体、本当に女の子になっちゃっているの?」
「・・・」
「こうなったの、今日が初めて?」
「・・・は、はい」
「そう。これは間違いなく生理ね。大丈夫、心配ないわ。初潮って女の子だったら誰でも経験していることなの。だからそんなに震えないで」
と言いながら震えるボクを両手で優しくホールドしてくれる。
「今日はじめてキリュウ君を見た時、もの凄く綺麗な女の子になったもんだとは思ったけれど、見かけだけじゃなかったんだぁ」
「これでお家までは大丈夫よ。帰ったらお母さんかお姉さんに相談に乗ってもらうといいわ」
ボクに学校の常備品のショーツとナプキンを出して、付け方の説明を終えると水沢が言った。
ボクは、水沢の視線を避けるように後ろを向くと、汚れたショーツを脱いで血の跡を濡れティッシュで拭いはじめた。水沢がくれた錠剤が効いてきたのか、お腹の痛みは大分楽になった。
「・・・嫌だったら言わなくってもいいんだけど」
「・・・な、なんですか?」
「君の身体ってどこまで女体化させられているんだろ?」
「・・・」
「キリュウ君はここで高校生活を送るわけでしょ? 君の身体のことを先生も分かっていた方が力になってあげられると思うの」
「・・・」
「どんなに君が気持ちは男の子なんだと言っても、肉体的に女の子である以上はつらい思いをすることだってあると思うの。そんな時、キリュウ君には学校の中で逃げて来ることができる場所が必要になるわ」
ボクは、替えのショーツに両脚を通すと振り返った。水沢は、真剣に心配している目をしていた。
「・・・先生、ありがとう。ボクの身体の中には、人工的に培養された卵巣と子宮が埋め込まれているんです。あっちの科学者の話では、卵巣は完全なものではなく排卵する機能はないそうです。それとボクの男性器ですけど・・・」
ボクは、まだ20代と思われる美人養護教諭を前に、どう説明したものか言い澱んだ。
「言いにくい? 先生はねえ、男子の面倒も見る立場なの。だからおチンチンとかも消毒したり化膿止めを塗ったりしているわ。そういうことには慣れているの」
「じゃあ・・・言います。ボク・・・睾丸を切除されてしまっているんです」
「まあ、そんなことに・・・」
水沢の視線がボクの股間に突き刺さる。
「女性ホルモンを投与して次第にオッパイとかお尻が膨らんできた頃、このままだと内臓疾患になる危険性が高いからと取られちゃったんです」
「・・・確かにその危険性があるわね。それで?」
「だから・・・ボクに残されたのはチンチンだけなんです!!」
自分にとって一番パーソナルな部分の告白を思い切って言ったので、思わず大きな声になってしまった・・・。
「そう。ということは下半身はまだ男の子っていうことね、なるほど。ひとつ質問してもいいかな?」
「はい・・・なんですか?」
「うん。さっきキリュウ君の脚を経血が流れていたわね? あれはどういう仕掛けになっているのかしら?」
け、経血・・・そうか、ボクの子宮は順調に新陳代謝しているんだ。
「・・・ボクにもよく分からないんですが、新陳代謝の際の排出ルートは消化器官にバイパスすることで確保した、とあちらの科学者が言っていました」
「消化器官・・・そういうことか。しかし見事なものだわ。男性ホルモンを抑制して、女性ホルモンを自家生産できるようにしたのね。疾患発症の危険因子をできる限り小さくしたのかぁ。そうすると、キリュウ君は無排卵月経ということか」
水沢は、惑星ハテロマの、というよりはヴェーラ博士の処置にしきりと感心している風だ。特に、追加の質問もない様子だったので、ボクはどうにかスカートを自分で身に付けながら締めくくることにした。
「これが全てです・・・」
「ありがとう。つらいことを話させてしまったわね。でも、これで先生はキリュウ君の味方。学校生活で困ったことがあったら何でも相談していいんだからね?」
もの凄く温かいまな差しをしながら水沢は言った。あれ? 涙がポロッだって・・・自分でも思いがけない反応にびっくりする。
「グシュッ・・・先生・・・ボク、いつかは・・・女の子にならなきゃいけないんですか?」
水沢はボクを引き寄せると、何も言わずにやさしく頭を撫でた。
たっぷり1分近く経ってから、両手でボクの顔を包んで真正面から覗き込むと諭すように言い出した。
「それは、君次第ね。話を聞けば聞くほどキリュウ君の身体に取られた処置は、見事というほかないわね。いま君の身体はとってもいい均衡状態にあって、放っておいてもホルモンバランスを崩して病気になる心配はないみたいなの。でも、それは身体の健康の話。キリュウ君の心が病気になってしまっては元も子もないわ。もしそうなら治すことを考えないとね。キリュウ君の人生なんだもの、誰も指示したり強制したりなんかできないわ。決めるのは君よ」
「ボク次第?」
「ええ。先生はキリュウ君の味方。とやかく言う人がいたら先生が相手になってあげます」
その時、パタパタと廊下を走ってくるスリッパの足音が近づいてきた。
≪ガラガラガラガラ≫
保健室の扉が引き開けられと、息せき切った母さんが立っていた。
「あ、あ、アラシ、が、た、た、倒れ、たって?」
「母さん。ここだよ。ボクは大丈夫だから」
「キリュウ君のお母さんでしたか。腹痛を訴えられまして、保健室で休んでもらっていたんですよ。キリュウ君からだと言いにくいでしょうから、私からご説明します」
それから水沢は、ボクの身に起こったことを話し出した。
≪グワワワワワッ ジャジャーッ キキキーーーーーーーーーッ ギャギャギャギャッ≫
学校からの帰り道、ボクは迎えに来た母さんの車に乗せられて再びパパラッチとカーバトルを繰り広げていた。
「フフフン♪ フ~ン♪ ア~ラシちゃ~ん♪ 帰ったらお赤飯炊かなくっちゃね~え♪」
母さんは鼻歌交じりの上機嫌で、素早いカウンターステアを当ててコーナーを走り抜けると、目いっぱいアクセルを踏み込んだ。
ボクは急激なGで助手席シートに押し付けられながら、股間のナプキンに自分の意思とはまったく関係なく湿ったものが浸透していく感触に呆然としていた。いよいよ抜き差しならないところまで女体化が進んでしまったのだ・・・その現実を嫌というほど思い知らされていた。