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ランとアラシで神隠し  作者: 迦陵びんが
第6章 「地球帰還を賭けて」
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第65話 ボクはマスコットガール?

≪ドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル ジャジャ~ンッ!≫


「“第199回近代ハテロマ競技大会美人アスリートコンテスト、クイーンの栄冠は! 22番! ラン・ド・サンブランジュさん! プリンセス・ランの頭上に輝きました! アビリタ王国の勝利です!!”」


ドラムロールが鳴り終わると司会者が高らかにコールする。その瞬間、ミスコン出場者の間を行き来していた何本ものスポットライトが全てボクのところで止まった。一斉に拍手と歓声が沸き起こる。


歓喜と落胆、国家元首たちの思惑が渦巻いていた会場にもようやく穏やかな空気が漂い始める。

ボクは声援に対して最高の笑顔で応える。ああ良かった。これでどうにか国王陛下の体面を汚さずに済んだかも。


一緒にステージに居並んでいた女の子たちが代わる代わるボクに頬を寄せて祝福してくれる。

全員が国を代表するアスリートなのでただでさえ体格がいい女性たちばかり。その上、ヒールの高い靴を履いているものだから、しゃがむようにしてボクを抱きしめていく。

なんだかお姉さんたちに可愛がられる幼い女の子みたいだ。


それにしても、今夜の美人コンテストはボクにはとっても恥ずかしいものだった。


最初が水着審査。まだ珍しいというか最先端ファッションなもので、ここの女性たちにとっては着るだけでも勇気がいるセパレートタイプ、上下が分かれたものを着せられた。


この惑星の女性たちはどちらかといえば少し肌が濃い目の褐色系だ。だからボクの素肌は真っ白で雪みたいに見えるらしい。ボクだけただひとり白いお腹と背中を丸出しにしてステージに立たされたわけで、食い入るようにボクの胸の膨らみや脚を見つめる多くの好奇の目に晒されて真っ赤になってしまった。




次が民族衣装審査で、「勝つためですから是非に」と言われてアビリタ王国の最南部の離島のお祭り衣装を着せられた。


これって元々その諸島の海を支配する海神様に生贄として捧げられる若い娘に着せたものらしく、極めて扇情的というか露出度が激しいのだ。なにしろ巻貝をビーズのように粗く繋いだ隙間だらけの衣装。一応、乳首と足の付け根には大きめの貝殻の“下着”みたいな目隠しがあるんだけど、登場した瞬間ステージに出ている参加者を含めて全ての人の注目を浴びてしまった。


「おい、あれって下に何も着けてないのか?」

「そうですよ! 色白だから貝殻衣装の隙間からくっきり素肌が見えてるじゃないですか!」

「じゃあ、あの膨らみやくびれは・・・ゴクッ」


ヒソヒソと会場で囁く声が舞台にも聞こえてきた。ボクは必死で裾を抑えたりお尻を抑えたり胸元を隠したり、本気でジタバタしてしまった。女の子の身体って隠さなきゃいけないところが色々あるから大変なのだ。 




そして最後の審査は結婚衣装。まさかこのボクがウェディングドレスを着ることになろうとは・・・。


勝つことしか頭になかったから“女性に生まれた最高の幸せの瞬間”を表現してステージに上がったのはいいんだけど、急に自分が引き返せないところまで来てしまったような気分になってしまった。


そうなると感情が抑えられなくなってもう一歩も前に進めない。情けないことに花束をぐっと握りしめたまま、ボクはステージ上で涙を浮かべ立ち往生してしまった。


「姫はいったいどうしたというのだ?」

「まあ、バージンロードの途中で足が前に出なくなってしまいましたのね! あんなに目にいっぱい涙をためて・・・それでも必死で笑顔を浮かべようとして。わたくしが陛下に嫁いだ時の気持ちと一緒ですわ。姫の気持ちがよーく分かりますわ」


会場を見下ろすと、国王と王妃が声援してくれているのが見えた。なぜか会場からも拍手が沸き起こる。ボクは気を引き締め精一杯笑顔を輝かせるとまた歩き出した。




ボクのウォーキングには「花嫁になる幸せと、少女から大人の女性への階段を昇る不安が上手に表現できていた」と最高評価が付いた。本当は「花嫁にされてしまう不幸と、少年から女性へ危ない橋を渡らなければならなくなった恐怖」でいっぱいだったのに・・・。






「ランさん、おめでとうございます。ベルが言った通りでしたでしょ? ランさんの美しさに敵う女性アスリートなんかいませんって」


授賞式が終わり晩餐会もお開きとなったので楽屋に戻るとベルが待ち受けていた。


「なんだかちっとも嬉しくない・・・」


ボクは浮かない顔で答える。


「そんなこと言わず素直におなりなさいな。ランさんの花嫁姿とっても素敵でしたよ。大きな眼に涙を浮かべながら懸命に笑顔を見せようとする健気さ、純情可憐さ! 着せて差し上げたベルでも思わずウルッときましたもの!」

「もういいよ・・・花嫁衣裳の似合う男ってどうよ? そうして言われるたびに段々自分が許せなくなってくる。ええい、こんなもの! こうしてやるっ!」


ボクのために用意された楽屋だったのでここにはベルしかいない。ボクは着させられていた衣装を躊躇うことなく引き破った。


≪ビリビリビリッ≫


部屋の中に布の裂ける大きな音が響く。


「あらあら。ヒステリーを起こすなんて! ランさんいよいよ女みたい」

「うっ」

「ウェディングドレスを引き裂くのはご自由ですけど、ほらすっかり裸になってしまいましたからね。アンダーバストのコルセットから覗く可愛い胸がキラキラ汗に光りながら上下して、とっても女らしい姿ですこと」

「も・・・もう、いいよ。わかったから・・・おとなしくするから」

「よろしい。この後も大事なマスコットガールのお仕事があるのです。ベルが綺麗にお着替えして差し上げますからね。ほら気持ちを楽にして」


と言うと、両手でボクの肩を抱きかかえ大きな鏡の前の椅子に座らせる。


「・・・わかったって」

「うふふ、困った子。ランさんはご自分の今の姿とちゃんと向き合った方がいいと思いますよ。鏡をご覧なさいな。もし私がランさんみたいな容姿だったら、嬉しくって嬉しくって一日中鏡を眺めて過ごしましてよ」


鏡の中には不貞腐れた顔をした女の子が映っている。こんな惨めな顔をしているのに、他人から見れば綺麗に見えるのかなあ・・・。


「・・・好きでこうなったわけじゃないもん」

「ま、そういうところがランさんの魅力でもあるんですけどね。ほら、自分が絶世の美少女であることを認めちゃいなさい! ツンッと」

「いやん!」


いきなり乳首をはじかれたので思わず声が出てしまった。


「あら? ランさん、前に比べてずっと感度よくなっているんじゃありません? こういう場合の悲鳴の出し方も可愛くって完璧でしたよ」


そうなのだ。自分でも何かの拍子に乳首に触れたりすると、何とも言いようのない哀しいような嬉しいような切ない気分になってしまうのだ。


「・・・そんなこと褒められてもちっともうれしくない」

「頑ななランさんを見ているとなんだか、意地悪してもっともっと反応を楽しみたくなっちゃいますね」


じょ、冗談じゃない。両腕でしっかり胸をガードして涙目でベルを睨みつけた。






「“アビリタ王国選手団の入場です! 旗手は無差別格闘技世界チャンピオンのゴーズン・ハーベル! 鍛え抜かれた巨人の手には勇壮な国旗もまるで小旗のように見えます!”」


翌日の夕刻、瞬き始めた満点の星空の下で開会式がはじまった。


「“総勢500人を超える大デレゲーション! 今大会アウェーとなるアビリタ王国は過去最大の陣容でヤーレに挑んできました!”」

「“いやあ凄い意気込みです。平和を希求する大会とはいえ、両大陸間のお互いが侵略しあった戦争の歴史は今でも傷痕を残していますからね。スポーツであっても相手を叩きのめしたいという民族感情に根ざした欲求、4年に1度の大会だからこそいやが上にも燃え上がるんですよ!”」


実況アナウンスも興奮気味だ。


「“ご覧ください。列の中央付近にパアッと艶やかな花が咲いたようです!”」

「“おお! プリンセス・ランですか。いや、美しい”」


ボクはアビリタ王国選手団の一員として、とびっきりの笑顔を作り入場行進しながらスタンドに手を振る。身内の選手や役員までボクを撮ろうとレンズを向けてくる。


「“国家元首たちの前夜祭で余興として女性アスリートによるミスコンが行われたそうですが、クイーンの栄冠はプリンセス・ランに輝いたそうです!”」

「“ほほう・・・というと水着審査とかも?”」

「“ええ。情報によると水着のほかに、民族衣装と花嫁衣裳だったそうです。特にプリンセス・ランの民族衣装は相当露出したものだったようで、恥ずかしげに隠そう隠そうとする姿に堪らなくそそられてしまったと国家元首のおひとりが感想を述べておられました!”」

「“見たいですなあ。その時の映像はないのですか?”」

「“完全非公開ということで記録はいっさい残されていないんですよ”」

「“それはもったいない!”」


そこの実況うるさい! なんか勝手なことを言っている! あんな恥ずかしい姿を放送でばらまかれたりしたら、舌噛み切って死んじゃうから! あれ? この感情表現って・・・やばっ! 頭の中まで女の子化が進行してきているのかも。






「“ご覧ください! セレモニーの間も明るく笑顔を振りまく今大会一の美人アスリート、プリンセス・ラン! おっと失礼、まだ来賓挨拶の途中でした”」

「“そりゃあどうしても彼女に目がいってしまいますよ。なんといってもあの魅力的なルックスですから”」


セナーニ宰相から「マスコットガールはとにかく笑顔だ。笑顔を振りまくように」って言われていた。女性化プロジェクトにより鍛えられたおかげで自然に笑顔を作れるようになってはいたけれど、どんどん進行している女性化への思いが渦巻いて気持ちは最悪だった。






「“さあ、いよいよ本日のメインイベント『女神の炎』の点火です! 大会期間すべての競技会場を照らすことになる元火が天空より採取されます!”」

「“いやあこちらも緊張してきました。4年に1度の神聖なセレモニーですからね”」

「“そうです。惑星ハテロマの科学技術を注ぎ込んで開発された近代ハテロマ競技大会のための軌道衛星連結自動点火装置の作動は4年に1度、今日この時この瞬間しかありません! さあカウントダウンが始まりました! 30、29、28”」


≪27!≫

≪26!≫

≪25!≫


選手も観客も巨大アリーナにいる全員が一斉に夜空を見上げ、声を合わせてカウントダウンをはじめる。


上空300kmでは、3つの衛星がこの惑星系の3つある太陽のそれぞれの曙光を常に捉え続けながら高速で軌道上を飛行している。


「“3つの太陽それぞれの日の出の瞬間を3機の採光衛星が捉えて鏡面反射、それを集光衛星でひとつにまとめるのは4年に1度だけ! 集められた3つの太陽光を1筋のビームにしてこのアリーナに設置された点火システムで受け止めます! さあ宇宙を股にかけた一大スペクタクル! 点火まで、あと10秒!”」


≪9!≫

≪8!≫

≪7!≫


光の帯が3方から夜空の中心をめがけて伸び始める。見る見る交点が1ヵ所に重なっていく。


≪3!≫

≪2!!≫

≪1!!!≫


カウントゼロから一瞬の間。夜空の中心、光の交点が急に輝いたと思った瞬間、アリーナ中央の点火装置に強烈なビームが突き刺さった。


≪ズババババーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!≫


空気を焦がす臭いが漂い、少し遅れて爆発音が轟く。点火装置からは高さ10mを超える大きな火柱が立ち上った。


≪うおおおおおおおおおーつ!!≫


「“大成功です! 今大会も女神の祝福を受けて滞りなく競技を開始することになりました!”」

「“ああ、なんて華麗なんだ。プリンセス・ランの恍惚とした表情をご覧なさいよ!”」


ボクは凄まじく感動していた。こんな・・・こんな素晴らしい光景を目撃できるなんて! ついにここまでやって来ることができたのだ、これで勝ちさえすれば地球に帰れるのだ。苦労してきた2年半への思いとも重なって自然と目頭が熱くなってくる。


「“彼女の表情を見ているだけでこちらも感動してしまいますよ”」

「“おや? なんて言っているんでしょう。口の動きを読むと・・・”」

「“め・・・が・・・み・・・さ・・・ま・・・ぼ・・・く・・・に・・・お・・・ち・・・か・・・ら・・・を、『女神様ボクにお力を』ですかね”」

「“おおっ! 大会のシンボル、女神の炎に祈りを捧げる美少女アスリート! 素晴らしい光景です! 今大会を象徴するシーンとして長く記憶されることでしょう!”」

「“ボク、か。美少女が男言葉でしゃべるのも、またいいものですねえ!”」






「ランさん、今日は座る暇もなくご活躍でしたからお疲れでしたでしょう。お風呂の後、しっかりマッサージして差し上げますわ」


その夜、開会式が終わりその後のプレス会見とフォトセッションも終えて、与えられた選手村の部屋に戻っていた。


「うん、ありがとう。あんなに長いこと顔を作っていると笑い皺ができちゃうよ」


と言いながらボクは下顎をガクガク前後左右に動かす。


「うふふ。そんなお顔を撮影してマスコミに流したら大変なことになりますわね!」

「別にいいんじゃないの? ボクはヌード写真でなければ構わないけど」


ベルは式典用のユニフォームを脱がせるとバスローブを羽織らせさせながら、鏡の中に映るボクを睨んだ。


「またそんな投げやりなことを。ファンの皆さんがランさんに抱いているイメージというものがあるんですから、それを壊すような真似は絶対にダメですよ?」

「そうかなあ。高く売れると思うけどな。いよいよお金に困ったら自分で撮ろうっと。ふわ~ぁ」


大あくびをしながら涙目でアカンベエをしてみせた。


「こら! ほんと困ッタチャンなんだから」


と、そこに訪ないを告げるノックの音がした。


「あら、何かしら。こんな時間に」


ベルが寝室を出て行った。

扉の向こうからくぐもった声が聞こえてくる。しばらくやり取りしている様子が聞こえてきたと思ったら悲鳴のような叫び声がしていきなり扉が開いた。


「だめです! 姫様はもうお寝すみになっているんですから!」

「いたいた。姫がいたよ!」

「どれどれ?」

「ほんとだ! おっ、これからお風呂みたいね」


背の高いガッシリした体格の女性選手が3人、鏡の中でこちらを覗き込んでいるのが見えた。


「今晩は。皆さん、何かわたくしにご用ですか?」


ボクは振り返りながら落ち着いた声で問いかけた。悲鳴でもあげると思っていたのか、予想外の対応でちょっと鼻白み3人で顔を見合わせている。


でも気持ちを奮い立たせるように首を振り、ドスの利いた低めの声で言い出した。


「姫さんよぉ。ちょっとツラ貸してくんないか?」

「こんな狭い部屋で召使いなんかといてもつまらないだろ?」

「し、失礼な! 侍女です! 召使いではありません!」

「そんなこったどっちでもいいんだよ。アンタはおとなしく黙ってな」


ボクよりひと回り大きいベルが、自分の倍以上胴回りがありそうなデカい女に太い指を突きつけられて今にも泣き出しそうな顔をしている。それじゃあ仕方ないか、まあボクも大分筋力が落ちてきているので男性アスリートとは互角かもしれないが、まだ女性には負ける気がしない。


「入浴して部屋で寛ごうと思っていたところですが、ご用があるのでしたら着替えてご一緒しますけれど?」

「な、なりません! 姫様!」

「構いませんよ、ベル」


と言いながら片目をつぶってみせる。


「お、おう。姫はなかなか物わかりいいんじゃん」

「なあに、別にとって食おうってわけじゃないんだ。侍女さんだっけ? アンタも心配しなさんな」

「ここは女性選手用の棟だろ? 男っ気がなくってつまらないじゃん。これから選手村の真ん中にあるレクリエーションセンターに繰り出そうというわけさ」


要するに選手専用のゲーセンみたいなものか。なんだか憂さ晴らしできそうじゃないか。今夜はムシャクシャしているんだ。スッキリできるのなら楽しいかも。


でも、なんでボクを誘いに来たんだろう?


「レクリエーションセンターですか、面白そうですね。でも、どうしてわたくしをお誘いに?」

「おおよ。そりゃあ、姫が一緒なら間違いなく注目の的、男だって寄ってくるだろ?」

「うふっ。アナタ正直な方ですね。わたくしは男の方にはまったく興味がありませんが、ひとりでレクリエーションセンターに行っても楽しくありませんものね」

「じゃあ?」

「ええ。いいですとも。ご一緒しましょう」

「やった!」

「話が分かる姫だぜ!」


3人は飛び上がって喜んだ。

部屋に乱入してきたのはいずれもアビリタ王国の女子格闘技の選手で、95kg級のビゾー、105kg級のガナマ、無差別級のローチという名前だった。何しろこのデカさ、重量なのだ、下の階は相当うるさかったと思う。






3人の狙い通り、ボクたちが建物の中に入っていくとちょっとした騒ぎになった。

なんかよく分からないけど、誰もがボクと写真を撮りたがるのだ。男も寄ってきたが、選手だけではなく大会役員や競技委員に会場スタッフもだから、老若男女フルカバー、フルレンジでボクは注目を浴びているみたいなのだ。


まあ、宰相からはアビリタ王国のマスコットガールとして愛想を振りまけって言われているので、今日この場だけでもしっかりお役目を果たしていると思う。


ゲームコーナーで一番ハマったのはハンマーゲーム。巨大な身長計みたいなやつだ。振りかぶったハンマーを全力で振り下ろして台座の金属板を叩くと錘が支柱を駆け上がり、どこまで昇ったか高さを競うゲームだ。一番上の頂点にはゴングがあってそれを鳴らすには相当のパワーが必要になる。


地球で遊んだのとほとんど同じ構造だったので、思わず懐かしくなりビゾーたちに力比べをしないかと持ちかけてみた。


「えええええ? 姫さん、これで勝負したいって?」

「力比べだぜ?」

「そんな細っそい体して大丈夫かよ?」


勝負を持ちかけられたのが凄く意外という表情で、3人は頭のてっぺんから爪先までボクのを身体を何往復も見回している。


「ええ、絶対に負けませんもの。では・・・もしわたくしが勝ったら?」

「格闘技やっている私らに姫さんが勝てるわきゃないよ。でもまあ、もしも、もしもという仮定だったら・・・よし! もし私らが負けたら姫さんを大会期間中アネゴとして敬うぜ」


ボクより弱いけど、屈強そうに見える女性格闘家を従えて会場を歩くのも悪かないか。ベルの嫌がる顔が思い浮かんできた。よおし! 俄然やる気になってしまった。


「結構ですわ。では、わたくしも。もし皆さんに負けたら、皆さんの試合でセコンドのお手伝いをします」


一瞬の間があったけれど、3人はまた飛び上がって歓喜を爆発させた。


「よっしゃ!」

「のった!」

「すげえよ! 姫さんがリングサイドでセコンドすることになったとしたら会場は大騒ぎだぜ!」




もちろんボクの圧勝だった。


3人とも悔しがるというよりは何が起きたのか現実認識できていないような唖然とした表情で、しばらく口も利けなかった。


そんな様子を見ていたギャラリーの中から声がかかった。


「大したものだ。どうです俺と勝負しませんか?」


振り返ると男がにんまり口の端を曲げて笑いながらこちらを見つめていた。

なんだか嫌な雰囲気だ。ユニフォームが違うからうちの選手団ではないようだった。


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