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ランとアラシで神隠し  作者: 迦陵びんが
第3章 「王立女学院2年生」
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第29話 女の子たちと合宿!下半身は?

「コイツが従兄弟のダニアン。PGAツアーで一応選手やってる」


ここは王立女学院のゲオル練習場。うちの学校は別に男子禁制という訳ではない。許可さえ取れば男性でも校内に立ち入ることはできる。単に女の園だから入りにくいというだけのことなのだ。

ちなみに、PGAとはプロフェッショナル・ゲオラーズ・アソシエーション、つまりプロゲオル協会のことだ。


「おいおいシャペル。一応はないだろう。それに兄貴分にコイツってのも」

「気にしない気にしない。ランには気安い感じの方がいいんだから。ランは深窓の姫様なもんで人見知りなんだよ。ダニアンと話すのだってとっても怖がって・・・」

「キャプテンもうそのくらいで・・・」


顔を見て何番目かに踊った男だったなと分かったけど、キャプテンが紹介してくれなければ名前を思い出さなかったかも。ボクは男だから、男と踊っても相手に興味を持たないのだ。

ゲオルのプロということだが、ボクの誕生会に呼ばれた以上はそれなりの家柄の子息なのだろう。一緒に踊った男とシャペル先輩の前で話すのは恥ずかしかったけど、ボクは公爵家姫君らしくきちんと挨拶することにした。


「ダニアン様、先日はパーティーにお越しくださりありがとうございました。そして本日はわたくしの為にお時間を割いていただきましてかたじけのうございます」

「あ、いや。姫とご一緒できて光栄です」

「ほら、固い話はなしなし。ラン、早速見てもらったら?」

「はい。これが、そうなんですけど・・・」

「ちょっとお借りしますよ」


と言うとダニアンはボクのソードラケットの起動スイッチを入れた。『ブオンッ』と低い振動音がしてシャフト内の回転軸が鈍く発光し始めた。安定してきたシャフトのグリップを握ると、次々ヘッドの形を変化させていく。真剣な眼差しと無駄のない所作は、さすがにプロだと思わせる。ちょっとカッコいいかも。


「なるほど・・・デフォルトのままだからチューニングが必要ですね。では姫、言うとおりの距離設定で打ってみてください。最初は最大飛距離を」

ボクは左打席に入ると地平線の先まで飛ばすことをイメージした。『シュンッ』と音がするとシャフトが長く細く伸びて、ヘッドが大きく紡錘形に膨らんだ。


「こりゃ凄い!姫の集中力はプロ並みだな。イメージした波動とこのHD-3500Sの固有波動を、振幅が最大になるよう共振できたら、こりゃ相当なパフォーマンスを発揮しますよ!」

「やっぱ、ランは凄いわ!」


ボクは構えると、力まずに球を打ちぬいた。

『シュパーンッ!』

矢のように飛び出した球は200m先のネットに突き刺さって大きくバウンドした。結構いい当たりなのだが、グリップを握った手に伝わる感触が心地よくない。


「なんか・・・薄いというか・・・当たりが変なんです・・・」

「なるほどね。タリスマン社のソードラケットは性格がピーキーでプロ仲間でも手こずるんですよ。なにせちょっと位相がずれただけで極端にパフォーマンスが落ちるんですから」

「そうなんですか・・・」

「だから、姫の波動とコイツのとを合わせ易くする細かなチューニングが必要なんですよ」


と言いながらダニアンはHD-3500Sをボクから受け取った。グリップエンドのスイッチをOFFにしてキャップを外すと、内臓されていた円柱状の複雑なダイヤルキーが現れた。ダニアンはリング状の刻み目に沿って幾つかダイヤルを動かすと、再び元通りに収納して起動し直した。


「さあ、これで最大飛距離を打ってみてください」

「はい。最大飛距離のときのイメージは・・・」


ボクはさっきと同じ地平線の先に飛ばすイメージで構えた。再び紡錘形に変身したソードラケットが高速回転音とともに白く輝き出す。発光がまばゆいプラチナホワイトに変わった瞬間、ボクはフルショットした。


『スパーンッ!』

『シュルシュルシュルッ』と空気を引き裂く音が続き、ロケットの様に猛烈な勢いでネットに突き刺さった。球が落ちてこない。貫いてしまったのだ。


「ほほっ!こいつはスゲー!」

「ありゃりゃ!顧問のソーマ先生に怒られちまうよ。ん?どうした、ラン」

「・・・か、快感・・・」

「おいおい!姫様恍惚としちゃっているよ」

「姫。いまのが最大振幅の共振なんですよ。いや、お見事」


ボクはあれだけ威力のある球なのに、打った手応えが殆どなかったことに気が付いた。

その後、シチュエーション毎のショットイメージで細かくチューニングをしてもらった。こうして公爵から誕生プレゼントに貰ったタリスマンHD-3500Sはボクの愛機になったのだ。





「それじゃあ出場選手の発表をするわね。チームキャプテンはシャペル、3年からはシャーロと・・・」

顧問のソーマ先生が、王都学園選手権ゲオル大会の選手を発表していく。


この大会は王都アビリターレにある学校の対抗戦で、男子校も女子校も共学も関係なく15歳以上の生徒・学生が参加する。競技は1チーム6人のチーム戦で、トーナメント方式で行われる。ボクも選手のひとりに選ばれた。


「では選手に選ばれた人たちは、来週から大会終了までミニキャンプに参加してください。詳しいことはキャプテンから聞くように。以上」


ミーティングが終了した後、ボクはシャペルキャプテンに質問した。


「キャプテン、ミニキャンプってどういうものなんですか?」

「ああ、ランは秋に転校してきたから去年の様子は知らなかったな。要するに合宿さ。キャンパス内の合宿所で共同生活して、チームワークを高めようということなんだ」

「共同生活・・・お風呂とか寝室も一緒なんですか?」

「そりゃそうだろ。あ、そうかランは深窓の姫様だからな。いつも誰かにやってもらっているんだろうけど、皆と一緒に自炊したり洗濯したり掃除をするのはいい経験だ。学校生活のいい思い出になるよ。ま、楽しめ」


そういうことを心配したんじゃないのだが・・・ボクが心配なのはベルのサポートなしで、事情を全く知らない女の子たちと共同生活をしなくちゃならないことなのだ。学校にいる間だけ注意しているのと、何週間もまる一日男だとバレないよう注意し続けなければいけないのとでは大違いではないか。女装させられるようになって随分女の子生活にも慣れたとはいえ、女の子同士で一緒に寝たり、お風呂に入った経験は一度もないのだ。





宮殿に帰ると直ぐにベルに相談した。

「それは困りましたねえ。学院長に相談してランさんだけ個室にしてもらいましょうか」

「それはまずいんじゃない?折角チームで合宿するのにボクだけが特別扱いなんて」

「そうですよねえ。最後まで勝ち進んだとして最長3週間か・・・取りあえず生理はごまかせますね。ランさんは花嫁修業でしっかり家事全般仕込まれているから、掃除も洗濯も料理も完璧、それは問題ないとして」

「それ、男への褒め言葉じゃない。ぜんぜん嬉しくない」

「問題なのはお風呂と寝るときですか、うーむ」

「無視かい・・・」





「キリュウ君、ベルさんから事情は聞いたわ」

ヴェーラ博士から映像通信が入った。


「さすがに合宿となると、キミの下半身を隠蔽しないとまずいわね」

「でもボク、先生の仕掛け長時間使えませんよ」

「キミ、肌が弱いからね。直ぐにかぶれて赤くなっちゃうんだもの」

「そうなんです。どうしたらいいでしょうか?」

「でねえ、丁度お誂え向きというか、開発したばかりのものがあるのよ。試してみる?」

「開発したばかり・・・大丈夫なんですか、それ?」

「大丈夫よ。動物実験では効果てきめん、副作用はなかったから」

「動物実験・・・人間では?」

「キミが最初、かな。でもさ、他に選択肢はないんだし」

「・・・なんか騙そうとしているみたいな」

「そんなことないって!やってみようよ、ねえ」

「・・・なんか面白がっているみたいな」





結局、来週のミニキャンプまでに問題を解決しなければならないという差し迫った状況があるので、やむ無く提案を受け入れることになってしまった。早速、翌日ヴェーラ博士の診察室を訪ねた。


「さあ、できたわ。どうかしらキリュウ君?」

ボクは診察台から起き上がると、鏡で自分の姿を確認した。股間の柔らかな膨らみには形を整えた陰毛と一筋の割れ目が見えるばかりで、男性の象徴は跡形も無く消えていた。


「見た目は仕掛けを使ったときと変わらないようですが?」

「ふふふ、違いはこの状態でずっといられることなのよ」

「・・・絶対痒くならないですか?」

「キリュウ君のアレルギー抗体に合わせて培養した人工皮膚でこの器具は作られているの。清潔に保つサックを装着してペニスを格納したのでかぶれることはないはず。このサックの浄化機能は1ヶ月もつわ」

「勃起することもなくなったので、こうして折りたたまれていても痛くなったり苦しくなることはないと思うんですが、オシッコはどうするんですか?」

「ああ、心配はそっちの方ね。百聞は一見に如かず。いいから試しにトイレでしてらっしゃい」


ボクはトイレに入り便器にしゃがんだ。スカートをはかされるようになってから、女性用トイレに入ることも、便器に腰かけるためにスカートをたくし上げて下着を下すことも、違和感なくできるようになったけど、オシッコだけは男のシンボルがあるので座って排泄するのがいかにも不自然な感じだったのだが・・・。


「えっと・・・あっそうか。女の子は手では摘ままないんだ・・・このまましちゃっていいのかな・・・なんか落ち着かないけど・・・ウッ」


『シャーッ』と結構大きな音がし始めたのでびっくりした。股間を覗いてみると人工的に作った割れ目の真ん中辺の隙間から勢いよく噴出していた。


「・・・なんか女の子みたい・・・ホースから出す男と違って固定式のシャワーみたいだ・・・だから『ジョボジョボジョボ』じゃなくて『シャーッ』なんだ・・・」


ボクは妙なところに感心してしまった。


「うわっ曲がった!・・・あっと外に飛んじゃう!・・・どうやってコントロールするんだ?・・・ふう・・・どうにか終わったけど・・・今度はどうやって水きりするんだ?」


ボクは試しに腰を振ってみた。


「・・・なんか残尿感・・・これじゃあ切れないや・・・」


仕方なく大便の時みたいにトイレットペーパーを千切ると、割れ目の中の噴出していた辺りにあてがって水けを吸い取った。触ってみるとペニスを収めたサックの先端がL字型に曲がり、人工皮膚でできた小さなシャワーヘッドみたいなものが付いているのが分かった。管を尿道に挿入されたから、きっとそれがシャワーヘッドまで繋がっているのだろう。


「どうだった?ご感想は?」

「・・・なんか女の子みたい」

「そうでしょ?」

「・・・でも、どうやって方向を定めるんですか?」

「あはは、それは慣れかな」

「・・・女の子は皆、こういうの練習するんですか?」

「そこの所も含めて、ほんとよく出来ているんだから。これならば押し広げて見られない限り、バレることはないわよ」


女同士って風呂場とかで押し広げて見せ合う習慣はないのだろうか?そんな疑問が頭に浮かんだけど、嬉々として自慢しているヴェーラ博士の様子を見ると、どうやら女性社会ではそういう心配はないらしい。





「いやあ、ランさんが実は男性だなんて全く思えませんわ」

ベルがボクを入浴させながら言った。


「トイレでしてみたんだけど、なんか本当に女の子になっちゃった様な気がした」

「うふふ、女の子になっちゃったご感想は?」

「うーん・・・複雑。確かにひやひやしなくてよくなったことは嬉しいんだけど、男としてのプライドというか、小便する時のコントロールしてるぞ感が全く感じられなくなってしまったんだよね」

「お小水をコントロール?そんな下らないことが大切なんですか、男って?」

「下らなくなんかないよ。書こうと思えば字だって書けるんだぞ!」

ベルはあきれた顔をして、見かけとは違って「心の中はやっぱり男なんだわ」と改めて思ったみたいだ。


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