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夏休みの友達

夏休みっていいよな…。


夏休みの学校はお昼を過ぎるとほとんど人がいない。

クラブ終わりに自主練に励むユウトはドリブルやシュートの練習をしている。

別に友達がいないわけではないし、先輩は優しい。

ただ頑張ってる姿を見せるのはちょっとハズイと思い、みんなと一旦帰った後にこっそり戻ってきて自主練している。熱中症には気をつけろと母さんにきつく言われているので、木陰で練習してるし、スポドリもめっちゃ飲むし塩飴も食べる。


シュート練習って一人でやると大変だ。ボール拾いってありがたいな。ちょっと疲れたし休憩するかとそこらへんに座ってリュックの中から塩飴を取り出していると「かっこいいね」と声がした。顔を上げると知らない子だった。

「…へぁ?」

やば、変な声が出た。その子は笑ったりせず、それとユウトの帽子を指している。

「かっこいいね。ドラゴンのアップリケ?」

「お、そう。ドラゴン」

にこにこしてるその子に思わず返す。ユウトと同じくらい、いやちょっと年上かな?はてなマークが浮かぶユウトの顔を見て笑顔のまま自己紹介してくれた。

「ぼく、松井なおや。小4だよ」

「あ、森ユウト。小3です」

先輩だとわかり敬語で話すユウトに「いいよため口で」と返すなおや。

ぽつぽつとぎこちなくおしゃべりし始めたが気がつくと夕方になっていた。


なおやは話を聞くのがうまい。めっちゃ話してしまった。部活とかはやってなくて学校には夏季学習ってのを受けに来てるって。なんか近くの学習塾が特別に開くやつ。頭良さそうだもんな。

「明日も練習あるの?」

「うん。なおやは?明日学校いる?」

「うん、いるよ」

「じゃあ、明日も話せる?」

「いいよ」

なおやはお父さんが迎えに来てくれるから先に行ってと俺を見送ってくれた。気をつけろよ〜と手を振ってくれてる。明日な〜。俺もブンブン手を振った。


ここ数日はめっちゃ楽しい。

なおやの話は面白いし、ドリルも教えてくれる。サッカーはあんまりやったことないみたいだけどシュート練のボール拾いとか手伝ってくれるし。

今日は何しようかなと考えながら、いつも通り帰る振りをして学校に戻ってくると、校門で用務員のおじさんにあった。

「こんにちは」

「こんにちは。あれ?サッカークラブの子?練習まだやってるの?」

あ、やべ。

「あ、練習は終わってます。友達と約束があって戻ってきました」

「そう。あんまり遅くならないようにね」

「は~い」

おじさんは足が悪いのか少し引きずっている。何かはじめてこんなにしゃべったかも。ダッシュでなおやとの約束の場所に向かうと、木陰に座ってるなおやを見つけた。

「おっ、練習終わったの?」

「うん。さっき」

「今日ちょっと暑いよね。空き教室でしゃべんない?」

「いいねぇ」

家から持ってきたお菓子とミニペットボトル2本がリュックに入ってる。ちょっと見てとなおやに見せると準備いいじゃんと肩をぐりぐりしてくる。


移動した教室は物置みたいな感じだ。こんな教室ってあったんだな。

使わなくなった机とかが放り込まれてるだけの部屋なのにクーラー効いてるし。

「穴場でしょ?」

「だな。よく見つけたな」

「たまにここで寝てる」

「サボんなよ」

サボってないよとふざけるなおやをウリウリとくすぐる。静かに、ほらこっそり入って、となおやが周りをきょろきょろ見ながら俺を先に入れる。電気つけるとバレそうだから消したまんまにして、鍵もかけておこうとなおやがそっとドアを閉めた。


お菓子を食べながら持ってきたドリルをみてもらう。なおやが教えるとわかりやすいからか今日の分はあっという間に終わって、なんか明日の分まで進めてしまった。

すごいじゃんとほめてくるのがちょっとハズイけどうれしい。照れ隠しで、お菓子を広げて気に入ってるサッカー選手のシュートシーンをみようぜとスマホを付けようとした時だった。

ガタッとドアのとこで音が鳴った。びくっとめっちゃビビった俺が声を出さないようにギュッと口を押えるとなおやがシッと指で合図する。

ガタガタとドアを開けようとする音が続く。横に開くタイプのドアが音に合わせて揺れる。ガッと強く引いたり、上にガタッガタッと揺らして開けようとしている。怖くて思わずなおやのTシャツの裾を握ってしまった。その後も何度かドアを開けようとする物音が続いたが結局ドアは開かなかった。

しばらくじっとしていたが、気配が遠ざかっていくとそぉっとなおやがドアの方に移動し耳を当てる。足音を聞いているようだ。

「よし……。もう大丈夫」

「…ふぅ。...うぇ〜。びびったわぁ」

びっくりしたねとちょっと小声で話す。見つかったら怒られるかと思った…。

なんか動画見る気持ちもなくなって、ぽつぽつ小声で話すことにする。

なおやにはお兄ちゃんがいてすごく仲がいいとか、俺は中学生の姉ちゃんと幼稚園の弟がいるって話した。俺も兄ちゃん欲しかったなというとぼくも弟欲しかったなとなおやがいうから、なんだっけこれ?ないものねだりって奴だというと難しい言葉知ってるねと感心されてまたちょっとハズイ。


あぁ夏休み、もうすぐ終わるのやだな。なおやともこんな風にしょっちゅう話せなくなりそうだしな。

「明日も練習?」

「うん。明日まで練習。残りの1週間は完全に休みになるからな。残りの宿題とか全部終わらせるようにってさ。ちゃんとやんないと新学期からの練習参加させないってコーチが言ってた」

「じゃあ、頑張んないとな。もう少しで終わりそうだろ」

「まぁね」

学校始まってもたまに話せるといいけど学年違うとちょっと気まずいかな。夏休みのどっかでちょっと遊べないかな。

「なおやは残りの休みどうすんの?」

「ぼく?お父さんとこのおじいちゃんちに遊びにいくよ」

「そっかぁ〜」

ちょっとってか、かなり残念だ。がっかりする俺をみて申し訳なさそうな顔をしたなおや。「がっかりしないでよ。休み明けにまた話そう」

「おっけーい」

何、そのやる気のない返事と笑うなおやにわざとぶーたれてみる。

その後もだらだらとだべってるとふと思い出しだしたようになおやが言った。

「あ、そうだ。なんか明日大雨っぽいけど、ユウトは明日も自主練すんの?」

「う~ん。雨の日は自主練禁止なんだよな。だから雨降ったら家にいる」

「そっか。雨長引きそうだぞ。2、3日は天気悪いかもって」

まじかぁ。よりだるいな。

「学校の周辺とか裏山の方、雨降ると危ないからさ。もし練習するならどんぐり公園がいいかも。そこだったらユウトの家からも近いだろ」

そだな。そうするか。学校来てもなおやいないし。

「また休み明けな」

バイバーイと校門で別れた。



なおやが言った通りびっくりする位の大雨が3日続いた。学校の裏山が土砂崩れをおこして、結局始業式まで学校は立ち入り禁止になった。



始業日の朝、母さんから今日は学校休みだってと聞いてわぁっと嬉しくなったがなおやと会えないなとすぐがっかりした。変な動きを見せる俺に母さんが微妙な顔をしている。

なんだ?何かあったのか。っていうか何で休みなんだろ?

「なんで学校休みなの?土砂崩れがなおってないの?」

う〜ん、と微妙な顔のまま母さんが俺の頭に手をおいて話し出す。

「…そうねぇ。びっくりすると思うけど、大丈夫だからね」

「……何が?」



学校の裏でおこった土砂崩れから白骨化した子供の遺体が見つかった。十二年前に行方不明になった男の子だって。持ってた荷物から名前が分かった。

松井なおや。なおやだった。

警察がなおやと一緒に見つかった荷物を調べたら、犯人の持ち物と思われる証拠が見つかった。

犯人は用務員のおじさんだった。おじさんは嘘をついて学校で働いてたみたい。前にも子供にいたずらしようとして注意されたことがあったみたいだ。


…なおや苦しかっただろうな。くやしかっただろうな。なおやの事を考えると悲しくなってくる。

だけど、もしかして俺の事守ってくれたのかな…。俺が学校で一人でいたから…。いろいろ考えると、なおやと話して楽しかった事がいっぱい浮かんで気付くと眠ってしまってた。


始業式はなおやのこと、用務員のおじさんが捕まったこと、警察の人が学校に出入りするけど驚かないように、落ち着いて普段通り過ごすようにと話があった。

校門や職員室とかに警察の人が結構いる。

今日は始業式の後、クラスで先生からの話があって提出物をだしたら解散になった。クラブも休みだ。俺はなおやが教えてくれたあの空き教室に行ってみる事にした。


ドアの前に立つと何か緊張する。

「…よし」

ノブに手をかけて勢いよく引く。

「…あれ?開かない。鍵かかってるのかな」

何度か引いてみたが全く開かない。あきらめて帰るかなと思ったら

「かっこいいね。ドラゴンのアップリケ?」

と声が聞こえた。バッと振り向くと大人の人、先生か?じっと顔をみたまま固まってる俺を見て、その人が優しく笑った。

「驚かせてごめんね。俺が前持ってた帽子に似てたから懐かしくって」

それと俺の帽子を指差してる。

「こんな時だから知らない人見たらびっくりするよね」

驚かせてごめんね、ともう一度謝ってくる。証拠じゃないけど学校に入る許可はちゃんともらってるよと首から下げてる名札を見せてくれた。

松井ひろや。

「なおやと一緒だ…」

「え?」

「…もしかして、なおやのお兄さん?」

「…え?……なおやを知ってるの?」

びっくりと困ったが混ざった顔だ。そうだよな、なおやはずっと前に亡くなってる…。でも、

「俺、夏休みの間、なおやと遊んでたんだ」

「…え?夏休みって」

「先週まで学校で会ってだべったり、ドリル教えてもらったりしてた」

困ってるような泣きそうな顔になったひろやさん。

「……そっか。なおやがいたんだなここに……」

泣きそうな顔が優しく笑って俺をみていた。

「ここはなおやが君に教えたの?」

「そう。穴場だって、たまに寝てるって言ってた」

「ふふっ、そっかぁ。…俺があいつに教えたんだ。……開け方にコツがいる、…よっと」

ほら開いた、入って。この前来た時と変わってない。

「なおやとどんな話したの?」

えっと………。



俺の話を聞きながら笑ったり驚いていたひろやさん。やっぱりなおやとちょっと似てる。「なおやは君と仲良くできて嬉しかったと思うよ。仲良くしてくれてありがとう」

「うん」

そうだといいな、俺はすげぇ楽しかった。そろそろ行こうかとひろやさんが声をかけてくれた。ひろやさんはこの後、警察の人と話して帰るみたいだ。家は学校から結構近いんだって。今度遊びに来ると良いよって連絡先を教えてくれた。

その時スマホの写真も見せてくれた。なおやとお父さん、お母さん、それからひろやさんが映ってる。なおやは俺の帽子とよく似た帽子をかぶって笑顔で映ってた。

「ふふっ。君の帽子に似てるだろ。もとは俺の帽子だったんだけど、俺が中学にあがった時になおやにあげたんだよ」

そっかあ。なおやもこの帽子気に入ってたんだな。


職員室の所でひろやさんとわかれた。気をつけてな、またなって手を振ってくれた。一人で校門まで歩く。はじめてなおやとあった木陰が見える。短い間だったけど楽しかったな。なおやはいい奴だ。また会いたいな…。また、いつか会えたらいいな。


【終】


ここまでご覧頂きありがとう御座います。こんな感じでシリーズ外の短編はこちらであげていきます。

ジャンルはまとまりがないものになりそうですが、書きたいことが思いついたらぽつぽつ上げていきたいと思っています。

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