02 坂本家
※実際の歴史とは異なる点が多く、あくまでフィクションですのでご注意を!!
それでも読んでやろうという方ぜひ読んでやってください。
「ハァハァ・・。逃げ切れたかなぁ。」
「・・たぶん。はぁはぁ。」
結も頼も肩を上下に動かして呼吸をしている。
「怖かった。刀、振り回して追っかけてくるんだもん。
死ぬかと思った。」
今度は後ろからパッカパッカと馬の足音が聞こえた。
女の人が乗っている。
そして、結と頼の横で止まってこっちをふりむいた。
そして乱暴に
「わたしについといで!!」という言葉を残し走り去った。
結と頼は訳もわからず走って彼女の後についてった。
人間の足が馬の足に追いつくはずがない。
特にマラソンが大の苦手な結にとってはつらい。
女の人が乗った馬は商店街を越え、
一件の屋敷の中にある馬小屋の前に止まった。
そして、馬からハラリと降りた。
その姿はほれぼれするほどさまになっている。
背も高い。だいたい172センチくらいあるのではないだろうか。
そして、彼女は切れ長の目で、骨董品を眺めるプロの目つきで、
結と頼の頭の先から足のつま先まで丹念にみた。
彼女は結んでいた口を開いた。
「あたしの名前は坂本乙女。あなたたち、何でそんな奇妙な格好してるの?
名前は?国は?・・・・・・・・・・・。」
次から次へと質問が滝のように流れ出る。
「ち・ちょっとまってください。私の名前は時内 結です。こっちは弟の頼。
なぜこんな格好をしてるかっていうと・・・・・・。」
いったん言葉を切る。
乙女の目が結を捕らえた。
(言ってしまおうか、どうしようか・・・・。)
結の瞳が左右に揺れる。
しばらく沈黙が続く。
乙女が答えを待っているのがわかる。
(あぁ~~~この際いっちゃうぞ。どうなっても知~らない!!)
「実は・・・。」
「実は?」
「あの」
「あの?」
「その」
「いいかげんにはっきり言ってちょーだい!!」
いらいらしてる。
「あ・はい!実は私たち未来から来たんです!!」
沈黙・・・。
「は??ミライ・・・????」
乙女の頭の上に?マークが浮かぶ。
「ずーっとずーっと先の時代のことです。」
ドキドキ
乙女は真っ直ぐ結の目を見つめた。
ドキドキ
結はその目をしっかりと見返す。
ドキドキ
フッと乙女が微笑んだ。
「へぇー。信じられないけど、その着物見ちゃうと信じないわけにはいかないわね。
さっき来たの?」
「そうなんです。これからのこと姉と話してたら乙女さんが来た次第です。」
「じゃあ。帰る家がないってこと?」
「はぁ。そういうことになります。」
「帰れるまで住みなよ!うちに。」
「えっ!いいんですか?」
結の目が宝石のように輝いた。
「いいよ。困ったときにはお互い様よ!!」
笑顔で答えた。
このとき、結と頼には『天使の微笑』に見えたそうな・・。
「・・・・・ところでこの先の世はどんな感じなの?」
「時代を変えたくないので、そんなに詳しくは言えませんが・・・。
とにかく平和です。
戦なんて無関係。
外国語が街では行き交っていますし。
そうですね~。とにかく便利なんです!!
たとえば、この行燈。」
頼は近くにあった行燈を指さす。
「普通、油がなくなったら、ささなきゃいけないですよね?」
「うん。」
「それに、風が吹けば揺れて消えちゃうこともあるし、なにより火事になりやすい。
しか~~し、未来の行燈はスイッチというものを押すだけで明かりがついたり、
消えたりするんです!!すぐに油がなくなって消えちゃうってこともないし・・。
いいでしょ??」
「なるほどねぇ~。『すいっち』だっけ?そんなものまであるの?すごいわね。」
さっきらだまっていた結が口を開いた。
「あのー乙女さん。もしかして弟いますか?」
「うん。いるけど・・・・。」
「そして、その人の名前は『坂本 竜馬』ですか?」
「そうだけど・・・・。でも、どうしてわかったの?」
乙女は肖像画の竜馬に似た細い目を見開いて答えた。
「竜馬さんって、こっちの世界では有名なんですよ。」
すると今度は目を輝かせていった。
「それ本当かしら??」
「もちろんです。」
「やっぱりそうでしょう?歴史に名を残すとは!!!
さすが私が見込んで、鍛えて、育てた弟!」
一人の世界に入って、感動している・・・。
「よし!ちょっとまってって!!」
屋敷の中に入っていった。
その後ろ姿を眺める結と頼。
自然に結の顔から笑顔がこぼれる。
「ねぇ、頼。乙女さんっていい人だね~。」
「うん。そう思う。それにしても、まさかあの坂本竜馬の家に来てしまうとはね。」
中から乙女が出てきた。
「あのね。結ちゃん、頼ちゃん。父がうちに住んでいいって。
先の世のことは話すとややこしくなるから話さないで、
適当に火事で親を失い身寄りがないって言っておいたけど。それでいい?」
「「ありがとうございます!!」」
結と頼は深く頭を下げる。
「あなたたち。わからないことがあったら、私を姉だと思っていろいろ聞いてね!!」
「はい!!じゃあ乙女さんが私の姉なら『乙女ねーさん』って呼んでいいですか?」
「もちろん。言いに決まっているじゃないっ!!」
結の肩を思いっきり叩いた。
(ぃいっぃいl痛い。)
顔を歪ませつつもありったけの0円スマイルを乙女に送った。
「そういえばねーさん。馬術と剣術ができると聞いていますが、是非教えてください。」
頼も目をきらきらさせながら言う。
「もちろん。いいよ。午後。私、空いてるから。」
「やった~~~~!」
結がうれしそうに飛び跳ねた。
「ありがとうございます。」
頼も答える。
こうして、彼らは坂本家の居候となったのでした・・・。
私の乙女のイメージは気の強い面倒見のよいねーちゃんってかんじなんですが・・・。
表現できたかな?って思います。