第6話糖質疲労にはカロリー消費(前編)
「ちょっと、ぽっちゃり勇者!これで三回目よ!今日はどんな魔物が食べたいの?って聞いてるでしょ!」
「そうだった、魔物……そうだなぁ」
なんか頭がボーッとする。それに、胸あたりがムカムカするぜ。落ち着かねぇ……
トントントン
無意識に貧乏ゆすりしてしまう。
「さっきからソレもうるさいのよ。なに?イラついてるの?」
「イラついてねぇーよ。ちょっと考えさせろっつーの」
「考えるも何も、サンドイッチ見つめたままボーッとしてるだけでしょ?様子が変よ?」
「俺にもわかんねぇんだよ。頭が重いっつーか、ボーッっとするし何に対してもイライラしちまって……そ、そうか!糖質疲労だ!」
「糖質疲労?」
「あぁ。プリンのカロリーが化け物並だったからなぁ。人間の体っつーのは糖質やカロリーを摂りすぎっと、集中力の低下、眠気、イライラに繋がる。それが糖質疲労だ」
「つまり戦えるキレ者おデブから寝太郎デブになっちゃうってわけね」
「言い方ァ。大体あってるけど」
「で、それはどうやったら直るの?」
「血糖値が下がりゃ直る。インスリンを注射すんのが一番手っ取り早いが、そんなもんはねぇ。カロリーを消費する。一択だな」
「なら、発散にピッタリな魔物がいるわ。私もまだ調理したことがない、伝説級の超絶お硬い魔物がね」
◇◇◇
重い体を引きずり、コロネに案内されたのは石造りの巨大な門の前。
「なんだこりゃ?」
「このデモンフィールドのボスの住処よ。冒険者たちは皆コイツを倒すために冒険してる」
「倒したらどうなる?」
「ソイツの体に埋まってる魔法石が手に入るわ。一つで家が建つほどの激レア魔法石よ。それからソイツの体の上で肉を焼くと肉のランクが上がるっていう……って聞いてるの?!」
「ぁ、あぁ……」
「本当に大丈夫なの?アホみたいに空見上げてたわよ」
「仕方ねぇだろ。頭にモヤみたいなのがかかっちまうんだから」
「おや?おやおやぁ〜誰かと思えば、ふんふんふん、悪食女、コロネじゃないかァ」
背後からの声に振り返る。そこには渦を巻いた緑髪が前方に突出している個性的な男が立っていた。
「カルビ、一体何の用?」
「元パーティメンバーだってのに冷てぇ態度だなぁ」
カルビは細い枝のような手で渦巻く緑髪を整える。
「誰だこの渦まぎガリは?」
「コイツは私の元パーティメンバー。雑魚勇者のアルビカルビ」
「炙りカルビ」
「アルビカルビだ!なんだこのデブは……ぷっ!まさかコロネ、コイツとパーティ組んでるのか?!冗談はよしてくれよ!」
「ナイナイ!アレって結構犯罪級だよね!肥満取締部隊の更正対象ぢゃんっ」
カルビの仲間、渦まぎお団子の女が下品に笑う。
おかしな頭した奴らだな……
「邪魔しないで。これからキングゴーレムぶっ飛ばしに行くんだから」
「君とこのデブで?!無理無理ィ〜なんたってハラミと僕の兄妹でも歯が立たなかったんだからね!」
焼肉兄妹……
「雑魚っぷりを威張られてもね。馬鹿に構ってる暇ないわ。いくわよ、ぽっちゃり勇者」
「焼肉……カルビ、ロース、ササミ、ハツ、ミノ、タン……」
ぐぅ〜っと大きな腹の虫。またもやぼんやりと空を見上げる。
「ちょっと!しっかりしなさい!」
コロネに頬を叩かれる。
「ぷぷー!腹ぺこデブ勇者はキングゴーレムの体の上で焼かれてボンレスハムになりました〜って新聞記事にでもする気かぁ〜?」
「マヂ馬鹿すぎ〜デブすぎ〜脳まで脂肪キャハハ!」
「アンタ達ねぇ……」
「コロネ行こうぜ。黙らせてやるよ。俺の拳でな」
ムチムチの手を握りしめる。この焼肉バカ兄妹には構うだけ無駄だ。
「それもそうね」
「デブも気の毒になぁ。親父譲りのクソマズ飯しかでてこねぇわ戦闘力もねぇわで散々。パーティから追い出して正解だったなぁ〜」
頭にかかっていたモヤが一気に晴れる。怒りのカロリー消費。
ズン
俺は踵を返しカルビの眼前に立ちはだかる。
「な、なんだよ?やんのかよデブ!」
「俺のことはいくら罵ろうと構わねぇ。けどな、コロネの飯を馬鹿にする奴は許さねぇ。次同じことを言ってみろ。お前がミンチになるまで殴ってやる」
「ひ……」
カルビは腰を抜かし後ずさる。ハラミも俺の迫力に萎縮したようだ。
弱いやつほどよく吠える。
トン、とコロネに肩を叩かれた。
「バカね。言わせておけばいいのよ」
「俺が気に食わなかったんだよ。美味しいもの馬鹿にするやつは」
「ハイハイ。アンタの食い意地は筋金入りだったわね。じゃあ見せつけてやりましょ。アンタがただのデブ勇者じゃないってとこ」
「あぁ。さっさと発散しねぇとイライラで爆発しそうだ」
「でもありがと。ぽっちゃり勇者」
「何がだよ?」
「分かんなくていいわ」
石造りの扉を開ける。
デモンフィールドの最強グルメ、キングゴーレムが俺達を待ち受けていた。




