第5話カロリー過多にはご注意を
「デザートを狩る!そういう魔物はいないのか?」
コロネはニッと口角を上げる。
「いるわよ。鶏手羽の油っこさを掻き消す甘〜いレア魔物が」
甘味魔物を求め、森を歩く。
「人喰い植物、プリジリア。普段は地面の下にいて、上を通った冒険者や魔物を一瞬にして捕食する、危険度SSRの魔物よ」
「花?花びらが甘いとかか?」
「いいえ。甘いのは溶液よ。捕食したものをデロッデロのゾンビにしちゃうウルトラヤバい液。けれどその液に魔石を加えて煮詰めるだけであら不思議。黄色く甘い」
「待て!皆まで言うな。涎が止まらなくなる」
「食い意地張りすぎでしょ」
「しかし危険生物に違いねぇな。コロネはなんで魔物の処理方法知ってんだ?」
「私の持ってる知識と技術は全部父親から教わったものよ。父は自ら魔物を狩り、ソイツを美味しくいただく研究をしていたの」
「親父さんは?」
「もう居ないわ。三年前にね」
「そうか。ならコロネが受け継がないとな!一緒にこの世界の美味い魔物、食べ尽くそうぜ!」
「アンタは食い意地張ってるだけでしょうが」
コロネはそう言いながらも僅かに眉を下げて笑った。
◇◇◇
「止まって!ここよ……地面に僅かな亀裂があるし、ここだけ草木が生えてない」
「この下にデザートが埋まってるって訳か。まずは出てきて貰わねぇとな!」
数cmのジャンプ。前のめりに倒れ込みながらパンチを右、左。
「50kcal10連使用!メッツパンチラッシュ!」
ドドドドッ
地面にエネルギーを叩きつける。地面が割れ、プリジリアのお出ましだ。
「キシャァアアアッ」
巨大な黄色い斑点を持つ花びら。中心部は緑がかった黄色の液体が怪しく泡立つ。その中へ転げ落ちた岩は一瞬にして溶けてしまった。
触れればゾンビどころじゃねぇ!白骨化しちまうだろコレ!
「だが俺のパンチの前じゃ意味ねぇよ!1000kcal……」
シュルッ
ツタに拘束されパンチを封じられた。締めあげられ肉厚なボディが食い込む。
「ぽっちゃり勇者!ボンレスハムみたいになってるわよ!さっさと抜け出さないと溶液に放り込まれるわ!」
「うるせぇ分かってる!」
このツタ硬ぇ!パンチも使えねぇ!どうする?!
迫り来る溶液。ボンレスハムは哀しくも食われる運命か――
「うおおおっ!俺は絶対デザートを食うまで死なねぇぞぉお!」
デザート。現代世界で作ったっけ。大好きな生クリームをハンドミキサーで……
「閃いたぜ!」
腹を凹まし僅かな隙間を作る。そして思い切り体を捻って腹に力を込める。
拳に集めてたエネルギーを腹に全力集中!
「500kcal使用。BMIスプラッシュ!!」
捻った腹が戻る勢いで体を回転。ドリル並の回転がプリジリアのツタを吹き飛ばす。
「ハッハー!見たか!デブの底力!トドメだぜ!メッツパンチ!」
溶液が甘いらしいので分厚い花びらへとお見舞いした。果肉が飛び散り爆散だ。
「勝利!コロネ!早く調理してくれ。もうお腹と背中がくっつきそうだ!」
「いやどこがよ……」
コロネは呆れながらも安堵の笑みを零した。
◇◇◇
コロネはお玉で慎重に溶液を掬い鍋へと移していく。
煮込まれているが未だ緑がかった黄色。とても美味しそうには見えない。
「なんのスイーツになるんだコレ……」
「このまま飲んだら顎から溶け落ちるわ。ここへ魔石を入れて煮込めばあら不思議」
紫色の魔石が投入された途端鍋の中は黄色く染まる。
「こっ、この匂い、まさか……」
「あら、知ってるの?煮詰めて冷やす。最後に砂糖を煮詰めた液をかけ、バーナーで炙れば……完成!プ」
「プリンだーー!!」
両手で掲げる程ビックサイズのプリン。ぽよよんっと波打つ黄色いボディに涎が止まらない。
「く、く、く食っていいか?」
「え……えぇ」
「いただきまぁす!」
ぷるるんっ……パクッ
頬で噛めるくらいの柔らかさ!しかもこの甘さとカラメルの僅かな苦味が堪んねぇぜ〜!
「ぅ……う」
「ちょっな、何泣いてんのよ?!」
「お、俺は、俺は今、幸せです」
「全く大袈裟ね。数日ぶりのご飯みたい」
「口の中にひろがゅかしゅたーど。甘すぎず丁度いい甘味に、ちゅぷーんが止まらねぇぜっ」
「語彙までぷるぷるになってるわよ。美味しそうに食べるわね本当に。さ〜、じゃんじゃん作ってあげるから、お腹がぷるんぷるんになるまで食べなさい。残したら許さないわよ!」
「おうよ!食べ尽くすぜ!」
◇◇◇
プリジリア
20000kcal
「カロリー高?!」
翌日、俺の体に異変が起きた――




