第12話大蛇飯!マカロン登場!
マナフィールド二日目。ぽっちゃり勇者こと、田部大河。俺は今、黒の胴体に赤い斑点を持つ巨大蛇に締められています。
「いだだだだ!俺のチャーミングな腹がちぎれるぅ!」
「アンタ捕まるの好きね?!またボンレスハムみたいになってるわよ!」
「うるせー!か、関節だけでいい!切り落としてくれ!」
「蛇に関節なんてある訳ないでしょーが!」
細長い舌を出し、大蛇が笑う。大きく開かれた口には鋭い牙が二本。
「うおおおっく、食っても美味くねぇからなぁ!」
「魔物からしたらアンタは美味そう……って、言ってる場合じゃ……あっ!」
ガブッ
く、食われ――
たかと思った直後、大蛇の歯が砕けた。
「おっ」
「グギャァッ」
痛々しい叫び声と共に顔を上げる大蛇。胴体での締めつけが緩む。
「っしゃぁ!コロネ!コイツ食えるよな?!イケるよなぁ!」
地面に着地し、殴る準備。
「解体してみないとわかんな……ぽ、ぽっちゃり勇者!」
「どうした?!」
「……ポイズンコブラ、顎外れちゃってるわ」
「え」
大蛇は大口を開けたまま、ジタバタ体をくねらせて叫んでいる。
「だーっはっは!俺を丸呑みなんざしようとした罰だな!喰らえや!メッツパンチィ!」
大蛇の顔面目掛けて振り抜く。大蛇はぶっ飛んだ。
「あーぁ。牙折って顎外した上に頭ひしゃげるほど殴るって、容赦無さすぎでしょ」
「食っていいのは、食われる覚悟がある奴だけだ……」
キマったぜ!今日も美味しく飯をいただけそうだな!
吹き飛んだ大蛇を追いかけ、コロネは解体を始める。胴体を割いたところでコロネは険しい顔を見せた。
「どうした?」
「強い毒が肉の芯まで染み込んでるの。毒だけ摘出するのは難しいかもしれないわ。アンタ、噛まれたのによく無事だったわね」
「俺の脂肪は何物をも通さねぇ」
「柔いのに硬い。解体して構造を見てみたいところね」
「マッドサイエンティストめ。ソイツは食えないってことか?コロネ程の魔物料理人の腕をもってしても……」
「馬鹿言わないで。って言いたいところだけど厳しいわね。やるだけやってみるわ」
コロネは注射器を刺したり茹でたり、御札を貼ってなんか唱えたり。細かい所は分からないが毒を抜くためにあらゆる手を使ったみたいだ。
「ふぅ……とりあえず毒素は抜けたわ。でも味がね。デミグラスソースで強めの味付けにしてみたけど、イマイチね」
「さっすがコロネ!いただきまーす!」
「全く呑気なものねぇ……魔物の毒素を無効化する魔女の爪まで使ったのに」
「魔女の爪?」
「ご飯中は話聞かないだろうから欠片も説明しないわ」
「そうだな!とりあえず飯!もぐっ…………ん、んん……」
「どう?」
「うーん、肉は柔らかいけど味がなぁ。苦味と生臭さが強すぎる。デミグラスソースのお陰で食えなくはねェけど、あんまりだなぁ」
「やっぱりね。コイツは改良の余地がありそうだわ。代わりの料理作ってあげるから他の魔物を」
「駄目だ!俺の飯だぞこれは。誰にもやらん」
「いや取らないわよ。不味いでしょ?」
「美味くはねぇ。だが俺は約束した。コロネが作った魔物料理は全部食わせろって。作ってもらった以上全部俺のだ。俺が食う」
「そ、う……好きに、しなさい」
コロネは背を向けると再び大蛇を解体。
コロネは料理人の鏡だなぁ。こっからどんな風に美味くなるか楽しみだぜ……
ふわり
ン?くんっくんくんっ!何だこの香ばしい匂いは?!
コブラ肉を口にねじ込み立ち上がる。匂いの行方を追うと木々の間から一人の女が顔を出した。
スラッとした長身のボンキュッボン。長い黒髪に、真っ赤なリップ。
うぉ、すげー綺麗なねーちゃんだな……
「って、その手に持ってるのはなんだ?!」
女の手には香りの正体。皿の上にはカレーのような見た目をした料理が乗っていた。
「いやその前に、何者だ?!でしょ。どんだけ食い意地張ってんのよ」
「あら、お目が高いですわね。こちらは様々な肉と豆を煮込んで作るデリシャスな料理ですわ」
「フェジョアーダ、ブラジル料理か!一度だけ食ったがご飯との相性が抜群なんだ!食いたい!!」
「いやだから如何にも怪しいでしょ!なんで森の中を料理持って歩いてんのよ!」
「食いたい。その欲望を邪魔するなんてノットエレガント。さぁ、召し上がれ。私、ローズ・マカロンの絶品料理を――」
「マカロンもいいな。そのうち食いたい」
「いやそれなんか……アレな意味に聞こえるわよ……」
「いただきまーす!」
「んもぅ、ぽっちゃり勇者の馬鹿」
マカロンが作ったフェジョアーダ。果たしてそのお味は――




