第10話カロリー制限クソ喰らえ
「何故肥満が罪になるか。それはこの世界を牛耳っている王のせいに他ならないわ」
「ほぅ」
ちゅるるる
麺を啜りながらコロネの異世界解説を聞く。
「王の信条は"美しい世界を造る"こと。特に肥満体型の者には厳しく、取締部隊まで作っているわ。他は貧困層の改善やインフラ整備だから一概に悪い王ではないのよ」
「つまり自分が美しいって思えねぇモノは消す。なんつー自己中な王だ」
「そうね。肥満取締部隊に捕まれば強制運動と絶食を強いられ、命を落とす者も多いわ」
「あのまま街でブラブラしてたら……」
「誰かに通報されてお縄だったわね。ま、基準スリーサイズっていうのがあるから、一般ピーポーからしたら"怪しい"止まりね」
やけにデブアンチ多いと思ってたが、トップの思想洗脳が原因か……
「魔物食も美しくねぇからか?」
ゴクゴク、ラーメンのスープを飲み干す。
「いいえ。カロリーが馬鹿みたいに高いからよ。危険だし一見美味しくなさそうだから元々アンチは居たわ。でも魔物は家畜の100倍のカロリーがあるってことで王様が禁止したのよ」
「可哀想な奴らだ。カロリーが高いものは総じて美味いと決まってんのに……」
「えぇ。その法律ができたせいで私の父親は……」
「ン?」
「なんでもないわ。さ、食べたならさっさと行きましょう」
「あぁ。ごちそうさまでした!」
◇◇◇
俺とコロネは魔石を売り払うため近場の国へ立ち寄ってから次のフィールドを目指すことにした。
「俺街とか入って大丈夫?」
「これ被って大人しくしてなさい。カルビの馬鹿みたいに通報する人は一握りよ。肥満取締部隊とは関わるな。が、世間の常識だから」
大きな外套を頭から被る。シルエットだけならガタイのいい旅人ってところだ。
「さ、着いたわ。ここには珍しい輸入品を求め、料理人が集まる食の国。ボーノよ!」
「おぉ……!」
立ち並ぶ洋風、中華風、アメリカン風、様々なレストラン。出店では調理器具や食材が売られ、賑わっている。
「すっげーいい匂い〜。なんだよ〜肥満取り締まってる癖にこういう国はいいのかよ〜こんなとこいたらデブまっしぐらだぜ〜」
「ちょっと、私以外の料理に鼻の下伸ばさないでよね。それに店の料理見てからそういうことは言いなさい」
「店の料理!どこか寄ってみようぜ!」
「寄らない。ギルドでフィールド制覇報告と魔石売りに行くわよ」
「何怒ってんだよ〜?」
「別に」
コロネはご機嫌ナナメらしい。
その後すぐ、ギルドにて魔石が金貨100枚になったと大喜びしていた。
「さ、次のフィールドへ」
「飯!何処から行く?!」
俺はギルドに置いてあったパンフレットと広げハァハァと涎を垂らす。
「ちょっと!私の料理じゃ物足りないっていうの?」
「俺は世界中の飯を食いまくりたい。それにコロネ。他の料理を食ったら、勉強になってコロネの料理がもっと美味くなると思わねぇか?」
「涎垂らしてキめられてもね。はぁ、いいわ。魔石の取り分は殆どアンタのものだし、好きに使いなさい」
「やりィ!」
俺はパンフレットの中から「ロイヤルルビィ」というフレンチ系のレストランをセレクトした。
◇◇◇
「お待たせしました。ビーフ・ブルギニョンでございます」
シャンデリアが連なる洋風なレストラン。白いテーブルに置かれたのはソースが添えられた大きな皿。そして拳ほども無い肉。
「…………なんっ、ちっ……はぁ?!」
「だから言ったじゃない。店の料理見てから言いなさいって」
料理人に申し訳ないので声を抑えながら衝撃を伝える。
「だからって小さすぎんだろォ。現代世界のフレンチですらもうちょいでけーぞ……」
ナイフとフォークが添えられているが一体どう刻もうと言うのか。こんなもの一口で終わりである。
「ま、まぁ高級レストラン的な感じだよな。きっとこれ一口で満足できるんだ。いただきます」
舌の上にちょこんと乗る肉となけなしの玉ねぎ。
「っ!」
こ、これは……
「うーん……美味しい、のか、これ?全然味しねぇんだけど」
「そりゃそうよ。店で出される料理のカロリーは200までって定められてるんだから」
「200?!」
ゴクンと肉を飲み込む。あぁもう無くなった。
54kcal
「ショボ!こ、こんなの10個くらい頼んでやっと普通の食事だろ……」
「個数制限あるわよ」
「世知辛ぇ〜。コロネの言う通りだな。さっさと次のフィールド行こうぜ」
「分かってくれたならいいわ。私以上の料理人なんて、そうそう居ないんだから」
◇◇◇
「お会計、金貨10枚です」
「…………」
俺はある決意を固めた。
「おぃ。他の店も同じような量と値段か?」
「えぇそうよ。今のところはイマイチだったけど、美味しいお店もいくつか――」
「ククク……決めたぜ俺はァ。この世界の常識を、俺が丸ごとひっくり返してやる!!食=幸せだ!!!」




