一話 コスプレイヤーアリス
短編の予定だったのですが、思いの外長くなったので分割します(^_^;)
早速ですが少女は不思議な場所に迷い込んでいました。
彼女の名前は有住 絵梨佳。 エリカなのにアリスと呼ばれる舞妓見習いさんです。 長めの黒髪はとてもキューティクル。 大きめのリボンもキュートですよ。
「ここ……どこやろ?」
舞妓見習いさんのアリスですが、今日はちょっと特殊なイベントがあったので、仕事で着る様な着物でも普段着る様な洋服でもなく改造巫女服の様なモノを着ています。
一体何のイベントだったのでしょうか? 気になりますね(>_<)。
そんな彼女はイベント会場で、ウサギのコスプレをしたメガネのおじさんが懐中時計を落としたのを見て追い掛けていたのですが、そうしたらこのざまです。 余計な事に気を回したばかりにこの所業。 泣けてきます(T_T)。
今の周囲は鬱蒼と茂った森の中です。
ですが彼女の前には踏み固められた道があり、青い空も見えています。
つまり鬱蒼と茂ってはいますが人の手が入っているという事ですね。 イベント会場から何処をどう歩けばこの様な森に到着するのか、全く理解は出来ませんが、人の手がある程度でも入っているというならちょっとは安心出来ます。
アリスは颯爽と歩き始めました。
ちなみに足元は細身のブーツ。 スニーカーより多少の歩きにくさはありますが、足の保護という目線から見ると良かったかも知れません。 でももし下ろしたてだったら靴擦れに泣いた事でしょう。 使い古しで良かったよ。 やったね(^_^)!
おや? 歩いていると何処からか話し声が聞こえてきましたよ?
アリスは自身が迷子であるという自覚があるので躊躇いなくそちらへ向かいます。 正々堂々相貌堂々雄気堂々威風堂々。
そこにいたのはいかにもな方々です。
『山賊 が 4体 現れました』
そんなウィンドウが見えた気もしますが、きっと気のせいでしょう。 『4人』じゃなく『4体』と、人間扱いしていないのもきっと気のせいでしょう、ええ。
現にアリスは全く躊躇いもせず彼等に近づいていきます。
むしろその様子に相手方の方が戸惑っているようです(;゜ロ゜)。
「すんまへん。 わたしぃ、道ぃ迷ぉてぇな。 ここぉ、どこどすかぁ?」
4人のお髭ボサボサの中年男性達はその言葉で呆気に取られた様です。
それはそうでしょう。 この道は一本道で迷いようもなく、かつ彼女の話しかけた自分達は身だしなみなんて地平の彼方、毛皮で作った衣装を纏い、曲刀を腰に佩いた如何にもな追い剥ぎスタイルなのです。
普通は迷いませんし、もし迷ってもこんな人たちに会ったら180度回れ右して逃げるでしょう。
ですが彼等もこの道のプロなのです。 呆気に取られたままではいられません。 ゲヘヘ、と下卑た笑みを浮かべアリスに迫ります(*^▽^*)。
「へへへ、お嬢ちゃんよお、こんな所で迷子たあ、また難儀なことじゃあねえか」
「心配するこっちゃあねえぜ? オレたちが天国へ連れてってやっからよ」
「その後にはどっかに売っぱらっちまうけどな」
「ああ、そのキレイなおべべも全部ひん剥いてな」
「「「「げははははははははははははははははははははっ!」」」」
色々と都合の良い未来を想像しているのでしょう。 4体……もとい4人は満面の笑みを浮かべて大笑いをしています(*^O^*)。
「……ここ、どないなはるか訊いただけやのにぃ……」
アリスはちょっとだけ困った様に口を『への字』にします。 可愛いですね。
「ま、こっちに来いや」
先頭にいた山賊其ノ壱が彼女に向かって手を伸ばします。
ああ、可憐な少女はノクターンやミッドナイトなお話の住人になってしまうのか。 男性諸君がそう期待した時でした(;´Д`)。
その場に倒されたのは山賊其ノ壱だったのです(・д・)。
「踊り子はんにはお手を触れんといてぇおくれやす、ってぇ言うやろ?」
彼女は大人が子どもを……、いいえ、人がサイコロを転がす様に、いとも簡単に山賊を転がしてしまったのです。 その姿は合気道の達人を思わせます。
転がされた山賊其ノ壱は呆気に取られた様にお空を見上げていますね(゜Д゜)。 こう、ボケーッっと。
「……――テメエ!? よくも!」
転がしただけですよ?
「イチの仇だ!」
死んでません。 というかそれ名前なんですか?
「げへへへへ」
……お、おう(-_-;)
そんな訳で…………。
「「「「すいやせんでした! 姐さん!!」」」」
『山賊 が 仲間 に なりました!』
変なウィンドウが見えた気がしますが気のせいでしょう。 ええ、気のせいです。 気のせいに決まっています。
「姐さん、って……。 あんさんらぁのお仲間になった覚えはおへんのやけど……」
彼女は困惑気味です。 彼女的には襲い掛かってきた痴漢を転がしただけなのですから、それで姐さん呼ばわりされても困ってしまいます(・・;)
ちなみに彼等、懐からきらきらを光る宝石類を差し出していますよ。
「まあ、よろしおす」
「「「「あざーっす!!」」」」
「ほな、元のお話に戻りぃますけど、ここぉ、どこどすか?」
彼女に問われ、4人は顔を見合わせます。
「森の中です、姐さん!」
バカだ。 バカがおる(・д・)
「道の上です、姐さん!」
うわっ! こっちも(-_-;)
「その問いに答えるにはまずココという座標軸を確定させる事から始める必要があるかと愚考致します、姐さん!」
本当に愚考ですよ、それ(=_=)
「すいやせん、姐さん。 こいつら道理ってモンを解ってなくて……」
というか投げられる前と性格が変わってませんか? げへへへへは何処に行ったんですか? げへへへへは。 もしかすると打ち所が悪かったのかも知れません(-_-)。
「……やっぱりええわ」
彼女はそう呟くと4人をポイポイと森へ放り投げ、彼等の歩いてきた方向へ歩き始めました。
『仲間 と 別れました!』
出てきたウィンドウは無視します(-.-)。
☆ ☆ ☆
暫く歩くと少し開けた場所にテーブルと椅子が並べられており、そこにウサギコスをしたメガネのおじさんが息も絶え絶えな様子で紅茶を啜っていました。 ここに来るまでで疲れたんですか?
このウサギコス、身体部分は着ぐるみっぽいですが顔というか頭部はうさ耳付きパーカーといった感じになっています。 正直言って似合っていません。 むしろキモい?
「おっさん。 これ、落ちはりましたぁよ」
アリスはそんな相手でも物怖じしません。
拾った懐中時計を手渡します。
レトロなデザインですが、キチンと磨かれているお陰か陽の光を浴びてきらきらしていますね。
「おお、これはご丁寧に有り難う御座います」
ウサギおじさん、口調は意外に丁寧ですね(^_^;) 本当に意外です。
ただ口調は丁寧なんですが、実は息が荒いです。 やっぱり疲れてますね。 体力不足なんでしょう。
着ぐるみの上からでも判るおなかがそれを物語っています。
「しかし、お嬢さん。 貴女の様な人がこちらの世界に来てはいけませんよ? なるべく早くお帰りになった方がよろしいです」
「それがどすなぁ、どう帰ったもんやろかぁ?」
「これは申し訳ない。 私の落とし物のせいで迷って来られたのですか。
そうであればこの国の女王にお会いになるのが良いでしょう」
察しが良すぎる上に誘導があからさまです。 そんなのでいいと思ってるんですか?
「女王はん、どすかぁ?」
「はい。 心臓の女王という、この道を真っ直ぐに行った都市 ――黒瑪瑙の都に君臨するお方です」
「おっさん、今ぁちょっと変なルビ、ついてはりまへんでした?
何でぇ黒瑪瑙やのにサザンクロスやの?」
しかしそう言われてもウサギおじさんは冷静沈着。 動かざる事山の如しを体現したその姿はビクともしません。
「はて? 黒瑪瑙の都と言ったかと思いますが」
「…………まあ、よろしおす」
言った言わないというのは証拠が残りにくいものです。 どう論じたところで記憶だけの言い合いで、けりなど付くモノではありません。 数行上に証拠は残っていますが彼女たちに見える訳もないのです。
ええ、見えませんよ。
そもそも話の発端はルビがどうこうと言ってる事ですけど。
「この道、まっすぐでよろしおすな?」
「はい、その通りです。 ご覧の通り一本道ですので迷う事はないかと思いますが、道中はお気をつけになって下さい」
つまり気をつけなくてはいけない道中なんですね? 解ります。
「何にどう、お気をつけたらぁよろしおすやろか?」
ちゃんと訊くんですね? よしよし(^_^)
「山賊とか盗賊とか追い剥ぎ、強盗、破落戸、殺人犯、売人、詐欺師に悪徳商人、越○谷に悪代官、逆賊、姦賊、海賊に暗殺者に○○人とか○○○人とかでしょうか」
ここ、森の中ですけど海賊がいるんでしょうか? 陸に上がったら山賊にクラスチェンジとかしないんですかね?
「悪ぅいお人のオンパレードどすなぁ」
「ええ。 ここはそう言う場所なのです。
お恥ずかしながら私も首切り職人でして、何人もの首を叩き落とした者です。 実は先程から、貴女の首を切りたくて仕方がないのですよ」
そう言って変態ウサギおじさんが何処からともなく取り出したのは、2m程の両手剣。 先端には切っ先に当たる部分がなく、あくまで切断に特化した『斬首剣』。 きらりと刃が輝きます。
最初は兎も角、先程から息を荒くしていたのは、疲労ではなく興奮だった様ですね(-_-;) うっわ~、引くわ~(・д・)
『ウサギおじさん が 現れました!』
「~堪忍しておくれやすぅ」
アリス、その口調に怯えや恐怖はありません。 そのニュアンスは「いい加減にしなはれ!」というツッコミ的な一面が見え隠れしています。
「……お嬢さん、貴女ただ者ではありませんね?」
「ただ者で結構やわぁ、もう~」
そう言うと彼女はその瞬間、風になりました。
踏み出す彼女のブーツが斬首剣の腹を蹴り飛ばし、それを持つ手首がぐりんとねじ曲がります。 直ぐに手を離していたら痛い思いをしなくても良かったのに……。 離しちゃいけないと思っちゃったんでしょうね。
結局武器を落とした上に両手首がぷらんぷらんのウサギおじさんは、土手っ腹に強烈な一撃を食らって意識を失いました。
『ウサギおじさん を 倒しました!』
何者なんでしょうね、アリス(?_?)
「もう~、ややこしいわぁ」
それは京言葉だと『面倒くさい』という意味らしいですね。
彼女はウサギおじさんを尻目に歩き始めました。
向かう先はサザンクロス……じゃなくブラックオニキスです。
これは童話として投稿していいモノなのか……。
我ながら難儀なモノを書いたなあ……(-ω-)
と思いつつも投稿(*´艸`)




