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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜有能すぎて追放されたが、もう誰も導かないことにした〜  作者: 影山クロウ


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第92話 止めた場所

事故の翌朝、現場は静まり返っていた。


雨は止み、斜面は濡れたまま沈黙している。


崩れたのは、中央ではなかった。


カイが止めた場所でもない。

進めた中央斜面でもない。


接合部。

基準に該当しなかった区域。


カイは、その地点に立つ。


土は、重い。

昨日とは違う。


「ここ、基準外でした」


若手が静かに言う。


カイは、うなずく。


基準を思い出す。


含水率。

角度。

振動。


該当なし。


「地層が違ったんです」


別班の責任者が言う。


「雨が横から入った」


カイは、目を閉じる。


——止めた場所は、正しかった。

——進めた場所も、正しかった。


だが、

崩れた。


セルマが現場に現れる。


呼ばれていない。

だが、来ていた。


「……重いですね」


カイは、土を握る。


「昨日は軽かった」


セルマは、斜面全体を見る。


「あなたは、どこを見ていましたか」


「中央です」


「なぜ中央を?」


「責任区域だから」


セルマは、崩れた接合部を見る。


「ここは、誰の責任でしたか」


カイは、言葉を失う。


責任は、班ごとに分かれている。


接合部は、曖昧だった。


「基準外でした」


カイは、繰り返す。


「基準外」


セルマは、静かに言う。


「基準は、あなたを守る」

「でも、火は守られない」


カイは、強く言い返せない。


止めた。

判断した。

成功してきた。


だが、

昨日は違った。


若手が、ぽつりと呟く。


「自分、あそこ触りました」


別の排水溝を指す。


「小さいけど、水が溜まってて」


カイは、振り向く。


「報告は?」


「……してません」

「基準外だったので」


そこは、崩れていない。


小さな手当てが、

水を逃がしていた。


カイは、膝をつく。


——見ていない。


中央ばかりを見ていた。


基準に当てはまる部分を、

重点的に。


接合部は、

“該当なし”として、外した。


「俺は……」


言葉が出ない。


止めた。

だが、

止めた場所しか見ていなかった。


立つとは、

全体を引き受けること。


責任区域ではなく、

地形全体。


基準ではなく、

目の前。


カイは、初めて理解する。


止まるのは、選択だ。

立つのは、引き受けだ。


昨日、

自分は、

基準を引き受けただけだった。


土は、重い。


その重さが、

胸にも落ちる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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