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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜有能すぎて追放されたが、もう誰も導かないことにした〜  作者: 影山クロウ


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第77話 残らないもの

セルマの机の上には、二つの資料が並んでいた。


ひとつは、改訂版理論の運用報告。

もうひとつは、事故未発生区域の最新統計。


前者は、整っている。

適用件数。

承認時間。

想定内事象。


後者は、空白が増えている。


事故が起きていない場所は、

記録されない。


報告がない。

申請もない。

議題にもならない。


「……残らない」


セルマは、小さく呟く。


助手が言う。


「評価指標に、

 “未発生率”を組み込みますか」


セルマは、首を横に振った。


「指標にした瞬間、

 競争になる」


「競争?」


「数字を守るために、

 報告が歪む」


助手は、黙る。


制度は、

測れるものしか守れない。


だが、

火は測れない。


その日の夕方、

セルマは現場に足を運ぶ。


壊れていない斜面。

静かな水路。


人々は、何も言わない。


「最近、事故は?」


「ないよ」


「誰か、直した?」


「知らん」


同じ答え。


セルマは、しゃがみ込み、

土に触れる。


ほんのわずかな補修跡。


乱雑。

だが、的確。


「……残らない」


記録にも、

理論にも、

報告にも。


だが、

壊れていない。


遠くで、

子どもが石を押している。


大人に言われたわけでもない。

誰かの真似でもない。


ただ、

止まった。


セルマは、立ち上がる。


理解したい。

保存したい。

広げたい。


その欲求が、

少しだけ静まる。


残らないことが、

残している。


理論の会議では、

別の話題が出ていた。


「非定型即応判断法は、

 成果を出している」


事故は増えていない。

責任は明確。

承認は迅速。


完璧だ。


セルマは、異議を唱えない。


完璧な理論と、

壊れなかった場所。


どちらが、

世界を支えているのか。


証明はできない。


夜、

セルマはノートを閉じる。


何も書かない。


残さないことを、

初めて選んだ。


遠くで、

雨が降る。


どこかで、

誰かが立ち止まる。


それは、

報告書に載らない。


だが、

確かに、

残っている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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