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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜有能すぎて追放されたが、もう誰も導かないことにした〜  作者: 影山クロウ


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第52話 囲う者、逃がす者

焚き火の前で、

五人は黙っていた。


火は、

いつもより小さい。


見つかってしまったからだ。


誰かが、

先に口を開いた。


「……

 制度の話、

 悪くないと思う」


その言葉に、

誰も驚かない。


「監督下に入れば、

 事故の責任は

 俺たちじゃなくなる」

「続けられるなら、

 意味はある」


それは、

囲うという選択だ。


火を、

安全な炉に移す。


若者は、

すぐには否定しなかった。


別の者が、

言葉を重ねる。


「商業連合も……

 話は合理的だ」

「判断をモデル化できれば、

 もっと多くの場所を

 直せる」


それは、

増やすという選択だ。


火を、

複製する。


若者は、

焚き火を見つめる。


「……

 それ、

 俺たちじゃなくなる」


静かな声だった。


「囲われたら、

 立たなくてよくなる」

「増やしたら、

 気づかなくてよくなる」


場が、

静まる。


誰かが、

不安そうに言う。


「じゃあ、

 どうするんだ」

「隠すか?」

「逃げるか?」


若者は、

首を振る。


「隠したら、

 意味がない」

「逃げたら、

 ここが壊れる」


アルトは、

少し離れた場所で、

聞いている。


口は、

出さない。


若者は、

深く息を吸った。


「……

 逃がす」


全員が、

顔を上げる。


「火を、

 囲わない」

「渡さない」

「でも……

 消させない」


一人が、

眉をひそめる。


「どうやって」

「場所を、

 変える」


若者は、

ゆっくり言う。


「管理できない場所に」

「モデル化できない形で」

「俺たちが、

 立てる範囲で」


沈黙。


それは、

最も不安定な選択だ。


制度にも、

商業連合にも、

属さない。


守られない。

増えない。


ただ、

残る。


「……

 それ、

 続かないぞ」


誰かが、

正直に言う。


「知ってる」


若者は、

即答した。


「でも、

 直せる」


アルトが、

初めて口を開いた。


「囲う火は、

 皆を温める」

「逃がす火は、

 道を照らす」


若者は、

頷く。


「道を、

 残したい」


五人のうち、

二人が、

視線を逸らした。


「……

 俺は、

 囲う方に行く」


責める声は、

出ない。


次に、

もう一人。


「俺もだ」

「家族がいる」


三人が、

残った。


若者と、

二人。


火は、

さらに小さくなる。


だが、

消えていない。


別れは、

静かだった。


誰も、

正しさを主張しない。


それぞれが、

自分の名前で選んだ。


夜明け前、

三人は荷をまとめる。


「ここは、

 置いていこう」


若者は、

焚き火を見つめる。


「次の場所で、

 また、

 火を起こす」


アルトは、

背を向けながら言う。


「火は、

 持ち運べない」

「だが、

 起こせる」


三人は、

暗い道を歩き出す。


囲われる火と、

逃がされる火。


どちらも、

消えない。


だが、

同じ世界を

 照らすことはない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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