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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜有能すぎて追放されたが、もう誰も導かないことにした〜  作者: 影山クロウ


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第50話 直せる最後の場所

そこは、

地図から外れていた。


正式な管理区域ではない。

商業連合の契約にも含まれない。

制度の基準も、曖昧だ。


——だから、

誰も来ない。


川沿いの小さな作業道。

昔は、

荷を運ぶのに使われていた。


今は、

通らなくても困らない。


若者は、

その道に立っていた。


「……

 ここ、

 崩れかけてる」


誰かが、

辺りを見回す。


「放っといても、

 誰も文句言わないな」

「補償も、

 出ない」


若者は、

頷く。


「だから、

 直せる」


五人は、

道具を下ろす。


正式な許可は、

取っていない。


取れない。


制度に聞けば、

「優先度が低い」と言われる。

商業連合に頼めば、

「採算が合わない」と言われる。


だから、

自分たちでやる。


杭を打ち、

土を固め、

水の流れを変える。


効率は、

悪い。


安全も、

保証されない。


だが、

誰かが立っている。


途中、

通りがかった男が言う。


「……

 そんなとこ、

 直しても意味ないだろ」


若者は、

手を止めずに答える。


「意味は、

 後で分かる」


男は、

肩をすくめて去った。


夕方、

制度派の巡回員が来た。


「ここは、

 管理外です」

「事故が起きたら、

 責任は取れません」


若者は、

頷いた。


「分かってます」


それ以上、

言い訳はしない。


夜、

作業は終わった。


立派ではない。

完璧でもない。


だが、

今は、

 通れる。


五人は、

その場に座り込む。


疲れ切っている。

手は痛い。

服は汚れている。


それでも、

誰かが笑った。


「……

 なんで、

 やったんだろうな」


若者は、

少し考えてから答える。


「直せたからだ」


それだけだ。


アルトは、

少し離れた場所から、

その様子を見ていた。


近づかない。

褒めない。


ただ、

帳面に書く。


《管理外区域:補修》


一行、

小さく付け足す。


《判断者:現場》


夜風が、

作業道を吹き抜ける。


誰も、

拍手しない。


誰も、

報告しない。


だが、

この場所は、

壊れなかった。


世界は、

変わらない。


制度も、

商業連合も、

振り向かない。


それでも、

ここには、

直せる最後の場所が、

確かに残っている。


若者は、

暗闇の中で思う。


——これが、

 続ける理由だ。


アルトは、

静かに背を向ける。


——次は、

 この火を、

 見つける者が

 現れる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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