第49話 残った者たち
焚き火は、
もう大きくない。
薪を足す者も、
少なくなった。
残ったのは、
五人。
多くはない。
だが、
偶然でもない。
若者は、
焚き火を見つめながら言った。
「……
俺、
怖いです」
誰も、
笑わない。
「正直、
逃げたい」
「守られる方が、
楽だって、
分かってる」
一人が、
小さく頷く。
「俺もだ」
「家族がいる」
「怪我したら、
終わりだ」
沈黙が、
しばらく続く。
それでも、
誰も立ち去らない。
若者は、
続ける。
「それでも……
ここにいる理由を、
考えた」
焚き火が、
ぱちりと鳴る。
「守られる世界は、
正しい」
「でも、
直せない」
誰かが、
顔を上げる。
「壊れてから、
処理する」
「それは、
間に合ってない」
別の者が、
低く言う。
「……
俺、
壊れる前の音を、
聞いてた」
その言葉に、
全員が黙る。
——きしむ音。
——違和感。
——嫌な予感。
守られる世界では、
それらは、
無視される。
若者は、
拳を握る。
「俺たちは、
正しくないかもしれない」
「でも……
気づいてしまう」
「気づいたら、
立つしかない」
その言葉に、
誰かが、
深く息を吐いた。
「それ、
報われないぞ」
「知ってる」
若者は、
即答した。
「報われない」
「褒められない」
「守られない」
それでも、
立つ理由。
アルトは、
少し離れた場所に立っていた。
話には、
入らない。
だが、
若者が、
ちらりと見る。
「先生……
俺たち、
馬鹿ですか」
アルトは、
静かに首を振った。
「馬鹿ではない」
「不器用だ」
若者は、
苦笑する。
「それ、
救いですか」
「いいや」
アルトは、
正直に言う。
「だが、
世界は、
不器用な場所からしか
直らない」
焚き火が、
少しだけ強く燃える。
誰かが言う。
「……
俺、
ここに残る」
「俺もだ」
「俺も」
五人。
増えない。
だが、
減らない。
アルトは、
帳面を開く。
《残存者:五名》
そして、
一行を書き足す。
《理由:
直すため》
夜は、
静かだ。
この火は、
世界を照らさない。
だが、
消えたら、
直す場所がなくなる。
アルトは、
焚き火を見つめる。
——英雄はいない。
——だが、
立っている人間は、
まだいる。
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