第46話 善意の衝突
最初に手を差し伸べたのは、
制度派だった。
「危険な判断が見られます」
丁寧な文面の通達が、
疑う派の集落に届いた。
《基準未満の判断が継続されています》
《事故防止のため、指導を行います》
敵意はない。
脅しでもない。
心配だった。
制度派の担当者は、
現地を訪れ、静かに言う。
「あなた方は、
勇敢です」
「ですが、
危険です」
若者は、
言葉を選びながら答える。
「危ないと、
思ったから直しました」
「結果は、
見ての通りです」
制度派は、
首を振る。
「結果論です」
「再現性がありません」
善意は、
論理を伴っていた。
一方、
商業連合も動いていた。
彼らは、
制度派に提案する。
「もっと、
効率的なやり方があります」
「人を危険に晒さず、
成果だけを得る方法です」
制度派は、
その数字に惹かれた。
「検討の余地は、
あります」
疑う派の集落では、
別の動きが起きていた。
「制度派が、
俺たちを
縛ろうとしている」
誰かが、
不安を口にする。
「商業連合は、
人を見てない」
善意は、
疑念に変わる。
ある日、
制度派が
「安全指導」として
作業に介入した。
判断は、
基準に従って修正される。
若者は、
歯を噛みしめる。
「……
立つ場所が、
消えていく」
商業連合は、
その様子を見て、
静かに提案する。
「こちらに来ませんか」
「あなた方の技術は、
活かせます」
善意の言葉だ。
だが、
選択を迫る言葉でもある。
夜、
焚き火の前で、
疑う派は集まる。
「助けてくれてる」
「でも、
息が詰まる」
若者は、
低く言う。
「……
守られると、
立てなくなる」
その頃、
制度派でも、
迷いが生まれていた。
「俺たち、
助けてるよな?」
「……
でも、
嫌われてる」
商業連合の代表は、
その様子を遠くから見ている。
衝突は、
まだ起きていない。
だが、
善意が、
互いを削っている。
アルトは、
三つの場所を巡り、
どこにも、
長く留まらない。
「先生、
どうすれば」
誰かが聞く。
アルトは、
同じ答えを返す。
「選べ」
「自分の名前で」
善意は、
人を救う。
だが、
向き合わなければ、
人を壊す。
夜風が、
三つの火を揺らす。
炎は、
触れ合わない。
だが、
熱だけが、
伝わり始めていた。
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