第43話 正しさを疑う者たち
彼らは、
何も作らなかった。
新しい基準も、
新しい仕組みも。
ただ、
集まった。
焚き火の前。
以前より、人数は少ない。
「……
俺たち、
どうすればいい」
若者が、
率直に言う。
誰も、
すぐに答えない。
それが、
この集まりの特徴だった。
「制度に戻れば、
楽だ」
「でも……
もう戻れない」
誰かが言う。
「商業連合に任せれば、
責任は軽くなる」
「でも……
立ってない気がする」
言葉は、
いつも途中で止まる。
確信がないからだ。
アルトは、
一歩引いた場所にいる。
導かない。
結論を出さない。
ただ、
見ている。
若者が、
苦しそうに言う。
「正しいかどうか、
分からない判断を、
俺たちがし続ける意味って……
あるんですか」
アルトは、
少しだけ考えてから答えた。
「意味は、
後からしか分からない」
若者は、
俯く。
「……
それ、
辛いですね」
「辛い」
アルトは、
否定しなかった。
「疑うというのは、
常に未完成でいる
ということだ」
誰かが、
かすかに笑う。
「完成しないって、
格好悪いな」
「格好悪い」
アルトは、
その言葉も受け止める。
「だが、
直せる」
その一言で、
場の空気が、
少しだけ変わる。
彼らは、
仕組みを作らない。
判断を委ねない。
毎回、
自分の名前で、
考え続ける。
それは、
とても遅い。
とても、
疲れる。
だが、
立つ場所が、
消えない。
若者が、
静かに言う。
「……
俺は、
ここに残ります」
誰かが、
頷く。
「俺もだ」
「俺も」
全員ではない。
だが、
ゼロでもない。
アルトは、
帳面を開く。
《分派二:
正しさを疑う者》
そして、
一行だけ書く。
《弱いが、
壊れにくい》
夜風が、
火を揺らす。
この火は、
強くない。
だが、
消えにくい。
制度の火は、
遠くで明るく燃えている。
商業連合の灯りも、
整然と並んでいる。
この焚き火は、
目立たない。
だが、
人が立つ場所は、
まだ残っている。
アルトは、
火を見つめながら思う。
——正しさを疑い続ける者は、
世界を救わない。
——だが、
直す場所を、
残す。
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