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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜有能すぎて追放されたが、もう誰も導かないことにした〜  作者: 影山クロウ


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第42話 正しさを守る者たち

最初に動いたのは、

制度側だった。


彼らは、感情的ではない。

むしろ、冷静すぎるほどだ。


「再発防止策を、

 正式にまとめます」


集会所に持ち込まれたのは、

分厚い資料だった。


《安全基準改定案》

《判断権限整理》

《緊急時対応フロー》


紙は、整っている。

矛盾も少ない。


制度側の責任者が言う。


「今回の件は、

 基準が足りなかった」

「だから、

 基準を増やします」


誰かが、

小さく息を吐く。


「……それで、

 防げますか」


責任者は、即答した。


「確率は、

 下がります」


それ以上でも、

それ以下でもない。


若者は、

資料をめくりながら、

違和感を覚える。


判断する場面が、

減っている。


いや、

消えている。


「この項目……

 現場判断、

 不要になってます」


責任者は頷く。


「不要です」

「危険ですから」


その言葉に、

反論は出ない。


危険なのは、事実だ。


制度側の一人が、

静かに言う。


「もう、

 誰かが立つ必要はありません」

「仕組みが、

 立ちます」


それは、

安心できる言葉だった。


だが、

若者の胸は、

少しだけ重くなる。


——仕組みが、

 立つ。


——人は、

 座る。


会合が終わり、

制度側の者たちは、

資料を抱えて去っていく。


彼らの背中には、

迷いがない。


アルトは、

それを遠くから見ていた。


「正しさを、

 守る者たちだ」


若者が、

隣に立つ。


「先生……

 あれは、

 間違いですか」


アルトは、

首を振る。


「違わない」

「守るべきものを、

 守ろうとしている」


「でも……」

「守るために、

 切るものもある」


若者は、

言葉を失う。


制度側は、

余白を切った。


迷いを切り、

責任を切り、

人の判断を切った。


それは、

弱さではない。


恐怖への、

合理的な答えだ。


だが、

その正しさは、

動かない。


アルトは、

帳面を開く。


《分派一:

 正しさを守る者》


一行だけ、書く。


《強いが、

 変われない》


若者は、

遠ざかる制度側を見つめる。


「……

 俺は、

 あそこには行けません」


アルトは、

何も言わなかった。


選択は、

すでに始まっている。


夜、

焚き火は、

静かに燃えている。


正しさを守る火は、

強く、安定している。


だが、

温度は、

 一定のままだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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