第41話 余波の中で
翌朝、
集落は動いていた。
止まってはいない。
だが、
進んでもいなかった。
濡れた地面を踏み、
人々はそれぞれの場所に立つ。
修理ではない。
確認でもない。
ただ、
「見る」。
壊れた水路。
沈んだ床。
濁った流れ。
誰も、
口を開かない。
老人は、生きている。
だが、
もう歩けない。
商業連合は、
粛々と動いた。
「補償は、
本日中に」
「医療手配も、
規定どおり」
制度側も、
追加資料を持ってくる。
「想定外ではありません」
「基準は、
改定可能です」
言葉は、
正しい。
だが、
誰の心にも、
届いていない。
若者は、
倉庫の前に立ち尽くす。
——全部、
後回しにした。
——全部、
正しかった。
だからこそ、
何も掴めない。
集会所に、
人が集まる。
今度は、
全員だ。
「誰が、
悪かったんだ」
誰かが、
ようやく言った。
すぐに、
別の声が返る。
「誰も、
悪くない」
「仕組みの問題だ」
「運が悪かった」
言葉が、
散らばる。
若者は、
喉を鳴らして言った。
「……
俺たち、
考えなくなってた」
その一言で、
空気が変sれる。
誰も、
否定しない。
否定できない。
商業連合の男が、
慎重に言う。
「それでも、
仕組みは必要です」
「感情で、
戻るべきではない」
制度側も頷く。
「再発防止には、
基準強化が最善です」
若者は、
唇を噛む。
「……
それで、
誰が立つ?」
沈黙。
アルトは、
集会所の端にいた。
誰も、
彼を見ない。
だが、
彼は見ている。
——ここからだ。
責任を探すか。
意味を探すか。
どちらも、
簡単ではない。
夜、
若者が一人、
焚き火の前に座る。
「先生……」
アルトは、
顔を上げない。
「答えは、
ない」
若者は、
分かっている。
それでも、
言葉を絞り出す。
「……
でも、
このままじゃ」
アルトは、
ようやく言った。
「このままでは、
いられない」
「だが、
戻ることも、
できない」
火が、
小さく弾ける。
「だから、
分かれる」
若者は、
顔を上げる。
「また……」
「今度は、
思想だ」
アルトは、
静かに続けた。
「正しさを、
守る者」
「正しさを、
疑う者」
「正しさを、
使う者」
若者は、
息を呑む。
——争いになる。
アルトは、
首を振る。
「争いではない」
「選択だ」
夜は、
深い。
アルトは、
帳面を閉じた。
——世界は、
もう一度、
考え始める。
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