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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜有能すぎて追放されたが、もう誰も導かないことにした〜  作者: 影山クロウ


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第35話 誰の失敗か

事故は、予告なく起きた。


だが、

突然ではなかった。


北側の倉庫で、

床が抜けた。


老朽化。

雨。

積載重量。


原因はいくつもある。

どれも、想定内だ。


下にいた作業員は、

落下して脚を折った。

命に別状はない。


だが、

倉庫は使えなくなった。


混乱は、静かだった。


誰も叫ばない。

誰も逃げない。


商業連合の男が、

即座に言った。


「基準内です」

「積載量も、

 モデルどおりでした」


制度側の担当官が、

資料を確認する。


「定期点検は、

 規定通り行われています」

「補修指示は、

 基準未達で見送り」


余白側の若者が、

拳を握る。


「……

 嫌な音がしてた」

「前なら、

 直してた」


誰かが、

恐る恐る聞く。


「じゃあ……

 誰の判断だ?」


沈黙。


商業連合は言う。


「我々は、

 推奨を示しただけです」

「最終判断は、

 現場にあります」


制度側が返す。


「基準は守られています」

「違反はありません」


若者は、

声を絞り出す。


「でも、

 俺は……

 モデルを見た」


三つの言葉が、

宙に浮く。


——基準

——モデル

——現場


どれも、

嘘ではない。


アルトは、

少し離れた場所に立っていた。


誰も、

彼を呼ばない。


呼べば、

答えが出てしまう。


負傷者の家族が、

静かに言った。


「責めたいわけじゃありません」

「でも……」

「次は、

 どうすればいいんですか」


誰も、答えられなかった。


事故は、

防げたかもしれない。


だが、

誰の判断で防ぐのかが、

決まっていなかった。


それが、

致命的だった。


その夜、

倉庫の前に、

人が集まる。


「制度に戻すべきだ」

「商業連合を外せ」

「いや、

 余白を取り戻せ」


声は荒れない。

だが、

交わらない。


アルトは、

帳面を開いた。


《倉庫崩落》

《負傷者一名》

《原因:複合》


ペンが止まる。


最後の行が、書けない。


《責任:——》


書けないのは、

分からないからではない。


存在しないからだ。


アルトは、

帳面を閉じた。


焚き火の前で、

若者が言った。


「先生……

 俺たち、

 間違えましたか」


アルトは、首を振る。


「間違いではない」

「だが……」

「引き受けられなかった」


それだけだった。


倉庫は、

明日も使えない。


判断は、

今日も進む。


だが、

一つだけ、

確実に変わった。


——この失敗は、

 直せない。


直せないのは、

壊れたからではない。


誰も、

そこに立っていないからだ。


夜風が冷たい。


世界は、

正しいまま、

一歩、

歪んだ。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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