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追放された制度設計官は、国が壊れるまで戻らない 〜正しい改革が、なぜ人を殺したのか〜  作者: 影山クロウ


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第20話 正しい国の現在地

王国は、相変わらず強かった。


改革は洗練され、制度はさらに磨かれ、

物流は滞らず、税収も安定している。

周辺国から見れば、成功例だ。


「合理的で、隙がない」


評は変わらない。


だが、数字の隙間に、

誰も公表しない変化があった。


医療の成功率は、横ばい。

災害復旧は、遅くなってはいないが、早くもなっていない。

軍の継戦率は、高いままだ。


――ただ、人が減っていた。


若者が、外へ出ていく。

制度の整った国ほど、

「決められた道」が見えすぎる。


王都の兵舎で、英雄セインは剣を置いた。

腕は衰えていない。

だが、疲労が抜けにくくなっている。


「次は、俺じゃなくてもいい」


そう言っても、

代わりはいなかった。


判断は、制度が下す。

だから、人は“判断を引き受ける側”に育たない。


宰相ヴァルドは、報告書を閉じ、

窓の外を見た。


街は平和だ。

それが、何よりの成果だ。


「……続いている」


その言葉には、誇りも、後悔も混じっていた。


彼は、もうアルトの名を口にしない。

それは、逃げではない。


比較をやめたのだ。


北方。


アルトは、壊れかけた風車の前にいた。

羽が一本、歪んでいる。


「直せますか」

若者が聞く。

「直せる。

 だが、直し方は二つある」


「どちらが正しいですか」

「分からない」


若者は、少し考えた。


「……じゃあ、

 自分で決めます」


アルトは、何も言わなかった。

それが、答えだった。


その夜、帳面を開く。


《風車破損》

《判断:若者に委ねる》

《結果:未定》


結果は、まだ書かない。

失敗するかもしれない。

だが、それでいい。


遠くの空に、灯りが瞬いた。

王都の方向だ。


あそこは、正しい国だ。

今も、これからも。


ここは、正しくない場所だ。

だから、直せる。


アルトは、焚き火を見つめながら思う。


——世界は、二つに割れない。


正しさも、余白も、

混ざり合いながら、進む。


問題は、

どこで引き受けるかだ。


彼は、帳面の余白に、静かに書いた。


《世界は、

 選び続ける》


火が、ゆっくりと燃えている。


次に来る問いは、

もう少し、近い。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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